06/05/14 五月大歌舞伎・昼の部②江戸前な「夏祭浪花鑑」

新橋演舞場五月大歌舞伎・昼の部の最後の演目はこれ。
「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」
予習としてコクーン歌舞伎版「夏祭浪花鑑」のニューヨーク公演のNHKの録画を観ておいた。古典歌舞伎としては今回が初見。あらすじは以下の通り。
夏祭最中の大坂が舞台。団七九郎兵衛(吉右衛門)は喧嘩がもとで入牢していたが放免となるので女房お梶(芝雀)や後ろ盾となっている老侠客釣船の三婦(段四郎)が迎えにきた。団七は放蕩のあまり勘当された玉島磯之丞(吉之助)とその恋人傾城琴浦(宗之助)の面倒をみているのだが、その琴浦を横恋慕する大鳥佐賀右衛門(由次郎)がつけねらっている。佐賀右衛門の手先になっていた一寸徳兵衛(信二郎)と団七は喧嘩になるのだが、お梶に仲裁され、そのうちに徳兵衛も玉島家の家来筋とわかって和解し義兄弟の約束をかわす。徳兵衛の女房お辰(福助)が夫を迎えに備中玉島から出てきて、備中でかくまってもらう案が浮上。しかし三婦はお辰の器量が良いことで反対する。お辰は焼けた鉄弓で顔に傷をつけてでもかくまうと言い張り、その心意気に三婦はお辰に磯之丞を託す。ところが今度は琴浦を佐賀右衛門に売りつけようと団七の舅義平次(歌六)がさらっていってしまった。金の亡者の義平次にどんなに頭を下げてもかなわず、団七は手元に大金があると嘘をついて琴浦を元の三婦のうちに戻させることができた。金のないことはすぐにばれ、舅義平次と言い争いになるが、刀に手をかけてしまったことから義平次が刀をもって挑発してきたために揉みあううちに斬りつけてしまい、もう戻れぬと覚悟を決めて堀傍で泥まみれになっての立ち回りとなり、とどめをさし、堀に沈める。祭りの神輿の群れに紛れて逃れていくところで幕。

入牢中に伸びた月代や髭面の姿から髪結床で着替えて元結に化粧紙を巻いて出てきた長身の吉右衛門の団七は無条件に男っぷりがいい。こういう男伊達のような役はハマる。対する徳兵衛の信二郎もなかなかいい。喧嘩をとめ立てする芝雀も男伊達の女房としての貫禄もしっかりあって見直した。この二人には「ひと夜」でもこちらでも新しい魅力を見ることができた。
段四郎の三婦は老侠客の風情がいい。女房のおつぎ(吉之氶)との息もぴったり。そこにやってくる福助のお辰もあだっぽいいい女。こういう役は本来的に福助にふさわしい。一箇所をのぞき、本当にいいお辰だった。その一箇所とは「さぶさ~ん」と2回呼びかけるところ、声が媚びすぎ。特に最初の声かけの方はもう少し普通っぽくした方がいいと思った。あとは鉄火肌の魅力的ないい女。
歌六の義平次は本当に貧しい暮らしの中で根性まで曲がってしまった憎憎しい男の嫌らしさをこれでもかこれでもかと団七にたたきつけてくる。これではいくら婿さんでも堪忍袋の緒が切れるなと思わせないといけない役だから、これでいいのだ。

祭囃子に乗っての立ち回りと要所要所でのさまざまな見得。殺し場を美しく見せる南北劇の真骨頂。堀に一度落ちた義平次が泥をまとって這い上がってきたところを仕留めるので団七も泥にまみれ血にまみれるのだ。それらを井戸の本水をかぶって洗い流すのだが、ここで一箇所気になったこと。吉右衛門さん、ぽっこりお腹を隠すために赤い下帯をぐるぐるとかなり上まで巻いていた。ちょっと上過ぎ~。ここで男の色気ちょっと減点~。

あと、祭囃子がコクーン版では勘三郎が岸和田のだんじり囃子の皆さんをこだわって招いたということだが、天神祭でもおなじみのあの金属音の鳴り物の音が今回はない。吉右衛門はあえてお江戸の祭囃子にしたそうだが、自分が乗れるかどうかというこだわりでいったようだ。舞台は大坂でも江戸前の上方芝居ということか。その辺は自分に合わないことはしないという吉右衛門のこだわりだろう。
江戸時代も上方の狂言であってもお江戸での上演の時にはお江戸の観客の好みに合わせたわけだから、こういうテイストもありなのかなと納得。
コテコテの大坂の濃厚さにこだわったコクーン版と粋に仕上げた吉右衛門版。両方いいんじゃないかと思った次第。
写真は太い柿色の弁慶縞で団七縞と云われる着物を着た団七の花道での見得。チラシの写真より。
五月大歌舞伎・昼の部①「寿式三番叟」「ひと夜」の感想はこちら
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