素晴らしい声楽陣を揃えたゴージャスな永竹由幸企画&演出「ドン・ジョヴァンニ」
ピアノ版で大道具どころか小道具まで一切無し、当然合唱団無しの「ドン・ジョヴァンニ」上演。演奏会形式では無く、演技はド派手。ドン・ジョヴァンニとレポレッロが通路にまで飛び出しての熱烈な演技付き。東京文化会館小ホール公演だったが、「前売り完売」で当日券が出ないほどの人気だったが、その人気に「応える名演」だった、と感じる。プログラムノート記載順に
宮本益光:ドン・ジョヴァンニ
ジョン・ハオ:騎士長
大山大輔:レポレッロ
布施雅也:ドン・オッターヴィオ
山口佳子:ドンナ・エルヴィーラ
照屋博史:マゼット
が素晴らしく、「モーツァルトオペラの男声の魅力」に浸れた公演であった。
この手の「縮小版オペラ」は『企画立案』する人によって、全く異なる結果を産む。2ヶ月前に全く同一演目を「オペラくご」でも聴いているが、印象は全く違う。
企画&演出の 永竹由幸 は、「ベルカントが歌えるソリストを集める」を最優先して実現した!
「足場固め」は「ベルカントオペラ」を支えることが出来るベテランコレペティトール = 河原忠之(p)を招く
であり、狙い【全て】成功した。
永竹由幸 演出は、方向として「ドン・ジョヴァンニ」は「色気たっぷりのオペラ・ブッファ」路線
であり、女性3名がとにかく色っぽい。ここまで色っぽい「ドン・ジョヴァンニ」は滅多にお目にかかれない。私高本も目を楽しませて頂いた(爆
男声の充実ぶりは見事なモノ。アリア直後に唯一「ブラヴォー」が掛かった 布施雅也、信じられない大声量バス = ジョン・ハオ など、感動モノ。他の3名の男声も見事! アリアだけでなく、重唱も各ソリストに声量があるので、自由自在な表現が出来ていた。
笑ったり、悲しんだりして全曲を聴き終えた。第1幕「婚礼の場」が全部カットされていたが、まあいいか(爆
服部譲二指揮&主宰「オペラくご:ドン・ジョヴァンニ」に比べると、感銘度が「オペラくご」の水準には達していなかったことも(小さな声で)ここに告白する。ソリストははっきりこの日の方が上。
・・・となると、「オケ」が原因となる。つまり
服部譲二指揮東京アンサンブル の方が、河原忠之ピアノ よりも説得力がはっきり高かった
になる。私高本は「ピアノ大好きバカ」なので楽器の問題とは思えない。おそらく
河原忠之のピアノが「ヴェルディ風」で「モーツァルトのアクセントやアーティキュレーション」を省略した、が原因
である。ドンナ・アンナ と ツェルリーナ が「ヴェルディ風に歌った」のも本人の解釈なのか? 河原忠之の指示に従ったのか? はわからない。
誤解があるといけないので、明記しておく。私高本はこの公演を充分に楽しんだ。再演があれば(スケジュールが合えば)また聴きたい。ただ、「服部譲二指揮」の方がもっと心惹き付けられた、と言うことである。小ホールで歌うソリスト陣では無かった。日本モーツァルト協会と永竹由幸の企画には感謝するばかりである。