日記

日々の雑記にございます。

七夕ゆえに。

2010-07-07 20:02:59 | Weblog
 こんばんは。TOPから拍手から、海軍色に染まった七夕。東京は雨模様です。毎年恒例七夕SSをアップしにきました。今週末はちょっと余裕ができるかも。やな仕事が来週に延びたし。
 拍手のお返事は改めてします。。。

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貴方のことを願う(ミストフェリーズ&ボンバルリーナ)

「暇そうだね」
 暗闇が喋った。もっとも、姿が見えないだけで気配はずっとあったのだから、わざと驚くのはあまりに白々しくてそれもできない。 ボンバルリーナはわざわざ大きな溜め息を吐いて、暗い路地裏に目を向けた。全くもって気が晴れず、ぶらぶらと夜の街を散歩していたところに行き合ったのが厄介な黒猫だとは、本当についてないと思わずにいられないのだ。
「失礼しちゃうね、ボンバルリーナ。僕で残念だったかい?」
「よく言うわね魔術師さん。暇そうだと言う方がよっぽど失礼とわかっているでしょう」
「魔術師じゃないよ、マジシャンさ。変わったことなんてしてないんだから」
 金色の目を柔らかな月明りに光らせながら、暗がりの向こうからミストフェリーズが姿を現した。闇色でなく漆黒を纏い、月よりなお煌めく二つの目を持つ奇術師は、本当のところ不思議な力を持っているとボンバルリーナは信じている。
「ミスト」
「なんだい?」
「今日は七夕ね」
 黒猫は小さく首を傾げてそうだよと言った。小生意気なのにこういう仕草は可愛い。
「願い事でもするのかい?」
「今更信じていないわ、願い事が叶うなんて」
「そうだね。望むなら自分で掴まないと」
 でも、と言ってミストフェリーズは悪戯な笑みを浮かべた。
「無邪気に願い事をしていたあの頃に戻りたいって思わないかい?」
「いいのかもしれないけど」
 ボンバルリーナは仄かな笑みを目許に湛えて空を見上げた。見事に晴れた夜空に天の川が輝きながら流れている。小さい頃は願っていた。あれがしたい、これができるようになりたい。いつも願いは尽きなかった。
「小さい時には必要だったのよ。願いとか夢とかを思うままに語る時も」
「僕らはもう夢見るだけじゃいられないしね。願いが叶うと思えたら楽な事だって一杯あるのに、なんで僕らは楽な生き方を選べないのかな」
「楽に生きたって楽しくないねかもしれないわね。たくさん悩んで考えて躓かないと、楽しくて幸せな瞬間は手に入らないんじゃない?」
「天上に昇る道も開けないかもね」
 ミストフェリーズも夜空に目を向けて、僅かの間星々の間に視線を彷徨わせていた。
「見つけた、織り姫星と彦星だ」
「願い事はしたの?」
「勿論さ。ボンバルが元気になりますようにってね」
 黒い猫はからからと笑う。呆れ返ったボンバルリーナは、楽しそうな黒猫をしばし見やって小さく溜め息を吐いた。
「ボンバルは何を願うんだい?あ、この流れで願い事しないのはなしだからね」
「大丈夫よ、もう願い事したから」
「へえ、聞かせて」
 願い事は誰かに聞かせるようなものじゃないとボンバルリーナは思うのだが、ミストフェリーズは興味深々といった体だ。
「貴方がね」
「僕?」
「そう。貴方がもっと慎ましやかになりますようにって」
 隣で黒猫の表情が歪んだのはわかったが、ボンバルリーナはくすくすと笑うだけでずっと空を見つめていた。
「酷いよね。僕はこんなにも上品だというのにさ。まあでもいいよ、ボンバルは僕のことを祈ってくれたってことで」
「自分のことはもしかしたら自分の力で変えていけるかもしれない。だけど、自分じゃない誰かの未来はたぶん変えられないから。願うなら自分じゃない誰かのために祈りたいでしょ」
 優しいんだか何だかわかんないよとミストフェリーズがしょげる横で、ボンバルリーナは優しく微笑み続けた。

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ぶつ切り。オチは無い。そして今年も七夕は雨。


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