ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

こうではなくて、こう!

2016年11月29日 | レッスンメモ
ピアノの練習というのは、ミスタッチなくスラスラと弾けるようになるための練習をひたすら積み重ねるだけではありません。一通り弾けるようになったら、もっと豊かな、色とりどりの音色を思い通りに響かせるための表現力を身につける努力をしなければいけません。スラスラ間違いなく弾けるようになるための練習は早い話し、つまずくところをつまずかないように練習するということですから、練習の必要性ややり方もわかりやすいですし、目標も立てやすいです。ところが表現力の方は、生徒さんたち自身には、どこが悪いのか、どうすればいいのか、わかりにくいということが多いようです。表現力豊かな演奏と、そうでない演奏。この違いがまずわからなければいけません。そこで、私としてはあの手この手を使って、「ここのところをこんな風に弾くのと、こういう風に弾くのと、どっちがステキ?」とか、「こうではなくて、こう!」というふうに、実際に同じところを違った表現で弾き分けて聴かせて、表現力の大切さに少しでも早く気づいてもらうように工夫しています。

そんな中、今、大変話題になっているフィギュアスケートの織田信成さんと鈴木明子さんの動画が目に留まりました。先日のNHK杯のテレビ解説者として、お二人が解説されている一場面を切り取った短い動画なのですが、これがものすごく面白いのです。というか、これ、「表現力とは何か」、というのを目で見て瞬時に学ぶことができる素晴らしい教材だと思いますのでご紹介します。
こうではなくて、こう!
この動画を見ると、表現力侮るべからず、ということがすごくよく分かりますね。右手を伸ばしてその指先の方向に目をやる、という一見単純な動作(ポーズ)なのですが、やり方によって、こんなに違う、ということがこの短い動画を見れば一目瞭然です。これこそが「表現力」です。単なる「動作」と「演技」の違いと言ってもいいでしょう。正確な動作に表現力が加わってはじめて、素敵な演技になるということです。スケートの演技もピアノの演奏も、この点はまったく同じです。表現力によって、観る人、聴く人に訴える力が大きく変わってくるのです。

表現力について、もう一つ大事なことは、それは表現力も技術だということです。この動画を見ていると、おそらく織田さんと鈴木さんは打ち合わせなしでアドリブでこれをやってみせたんじゃないかと思うのですが、それでもバッチリ息が合っている。すごいと思いませんか。多分、小さいころから何度も何度も繰り返し徹底的に叩き込まれた基礎的な技術の一つに違いないと思います。表現力というと何となく感性とか、センスとか、何か努力以外の生まれつきの性格のようなものに左右される部分が大きいと思われる傾向がありますが、そんなことはありません。一般的に必要とされる表現力は他のテクニックと同じように、練習の積み重ねで習得できるし、そのようにして習得しなければいけないものなのです。

さあ、生徒の皆さん、先生に表現力について注意されたらこの動画を思い出してください。「こうではなくて、こう!」 自分で色々な弾き方を試して、どんな表現ができるか工夫してみましょう。そして、聴いている人が思わず息をのむような、そんな美しいフレーズをつくり出していきましょう!

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コメント (4)
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