ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

演奏を楽しむ

2014年03月12日 | レッスンメモ
クラシックの名曲には、色んなキャラクターがあって、それぞれにその曲の持つ独自の世界があると思います。そしてそれを演奏するピアニストにもそれぞれの個性があって、その曲とそのピアニストが一体となって、唯一無二の、そのとき限りの「音楽」を創造するのだと思います。そういう意味で、その「音楽」は実はピアニストが舞台のそでから出てきた瞬間から始まっていると私は思っています。ステージ中央まで歩を進めて、聴衆にあいさつして、椅子に腰かける。演奏を始めるまでのこうした一連の動作も含めて、その曲の世界にお客様を招き引き入れて行くのだと思います。当然、弾き終わった後も同じです。鍵盤から指を離した瞬間に音楽が終わるわけではありません。その後の余韻、静寂、会場を包み込む空気、そこまでしっかり含めて楽しみたいものです。先日聴いたピリスの演奏はまさにその後味が素晴らしくて、そこをもう少し楽しみたかったのですが、会場からの拍手がやや早過ぎたような気がしました。穏やかな空気や静かな雰囲気をホールが包むその瞬間。これをピリス自身も大事にしているように感じたので少し残念でした。

元気な声をあげていた愛しい赤ちゃんが眠りについた時は、みんな、そう~っとして、静かにしているでしょ? みんな、お話しなどしないで、その部屋にいる人たちは、にこやかに静かに穏やかな空気の中にいるはずです。それはとても幸せなひとときでしょう。

ずい分以前に、カツァリスの演奏会に行って、ショパンのノクターンの最後の一音が終わってその余韻にカツァリス自身が浸っている時、パチパチと拍手がいくつかなりました。まだペダルが離れていませんでした。この静寂を破る拍手の後、カツァリスは残念そうに「あとちょっとだったのに」と首をかしげながらステージを歩いて舞台のそでに消えたのでした。とても気の毒でした。

もちろん曲によっては大盛り上がりで、大音量で意気揚々と終わる曲もありますね。そんな時はもう拍手が待ちきれないという感じで、少しフライング気味に盛大に拍手が起こる。これはこれで大変気持ちの良いものです。そういう感じの曲なのに逆にいつまでも拍手が来ないと演奏家は「え、なに、ノリが悪いじゃん!」とガックリ打ちのめされたりするものです。

要はその演奏家が紡ぎ出す曲の世界に、演奏家とともに浸って、最初から最後までしっかりと音楽を味わうということだと思います。始めと終わりの空気感も含めて演奏家の音楽が理解できたと感じられる時には、幸せを感じます。もちろん、そのためにはまずは演奏家自身がしっかりとその曲の世界を作りあげていること、聴いている人をぐいぐい引きつける力がないといけません。私自身も、そして生徒たちも、そんな音楽の世界を作れるようなピアノが弾けるようになりたいです。さて、今日もガッツリ練習しますか!

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