ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

弦を震わせる

2013年09月10日 | レッスンメモ
ピアノは、いわゆる鍵盤打楽器。私たちはピアノのキーを押す、叩く、撫でる、打つ、落とすなどの様々な行為が複雑に絡み合ったようなやり方でピアノを弾きます。もちろんそれらのどれか一つに当てはまるような単純なやり方は決してしません。ただ単純に「叩く」とか「打つ」なんてあり得ないことです。

しかし、ピアノと普通の打楽器の違いは、ピアノはピアノ線という弦を鳴らす弦楽器でもあるということです。演奏者の身体の使い方から言えば打楽器。同時に楽器の音の出方から言えば弦楽器なのです。「弾く」という動作を文字通りに狭く解釈してしまうと、「打鍵」のことばかりに注意が行ってしまいます。正しいキーを間違いなく押さえて、そのときの強弱や長さの加減をコントロールする。意識の大半は鍵盤と指の動きに注がれている状態です。

ところがピアノの場合、鍵盤から音が出るわけではないのです。演奏者がいくら自分の手と鍵盤に神経を集中していても、音は別のところから、別の仕組みによって出てくるのです。このことを忘れてはいけません。

指が鍵盤を操作する、キーが下に落ちてハンマーが上がる、その先のフェルトが弦を叩く。そのハンマーの叩き具合によって弦の鳴る音が決定し、それが音響板を伝わって豊かな音が聴こえてくるわけです。叩いた弦がどれだけ震えてくれるか、音響板がどれだけ反応して響いてくれるか。むしろこちらの方にもっと意識を傾けるべきです。

ピアノで物を言いたい時、何かを表現したい時、まずその音に色がないといけないと思います。お芝居や、オペラの声色と一緒。「ああ~」と歌っただけで、衝撃的な声ってあるでしょう? 同じ音程でも全然違って聴こえてくるということはいくらでもあるのです。ピアノは物理的にキーを押しさえすれば、とりあえず音が鳴るので安心するのではないかしら? 安易に音が出る楽器の弱点。猫が歩いただけでも音が出る楽器ですから。

鍵盤と手指の関係に気をとられ過ぎるのではなくて、もっと意識をピアノ線一本一本の鳴らし方、震え方、聴こえ方の方に向けましょう。ピアノは奥の深い、幅広い表現力を持つ楽器。この楽器のいいところを最大限利用して、表現することが大切です。鍵盤の奥にあるピアノの仕組みをきちんとイメージしながら、弦を震わせて、表現したい音色が出せているかどうか、ここを意識するようにすることが大切だと思います!

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