ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

1からやること。

2013年09月06日 | レッスンメモ
私の教室の今年の発表会は、11月。これまでは毎年夏に発表会をしてきましたが、色んな都合で今回は秋に開催することとなりました。

先日、ここに教室を開いて以来の大人の生徒さんと話していた時、以前の発表会の想い出話しになりました。知人も誰もいないこの地に引っ越してきて文字通りゼロから始めた教室。生徒がなかなかこなくて苦労しました。私が、ピアノを教える人とは、誰ひとり知らないのですから当たり前です。そのうち、演奏依頼を頂き、少しだけピアノをやっている人という事を知ってもらいました。それでも、最初の頃は生徒数が少なくて発表会もできませんでした。それでもピアノを教える上で発表会はとても大事だという信念を私は持っているので、最初は、よそのピアノの先生の発表会に入れてもらったり、少人数でも何とか適当な小さな会場を見つけて、発表会をやるようにしてきました。

その頃の、ほんの少人数の、小さな会場での発表会に出演したそのベテラン生徒さん、「あのころと比べるとほんとに立派な発表会になってきましたよねえ」としみじみおっしゃいます。そう言われて初めて私も当時のことを振り返って、当時のことを思い出してみました。これまでずっと先のこと次のことばかりを考えていて、振り返るということもせず前を向いて走ってきたようです。すると本当にその通り。当時とはずい分変わってきました。

当時に比べると生徒の皆さんの腕も上がり、メンバーも増えて、やっと会場も本格的ホールで、充実した発表会ができるようになりました。ここまで来るのに10年かかりました。10年といえば長いようで実はそんなに長くありません。大学を卒業してすぐ教室を開いて教え始めたとしたら、やっと32歳ということです。私は本当はもっとずっと歳をとっていますが、少なくともこの地に引っ越してきて、教え始めたときから数えると、まだ32歳の若い先生と一緒ということです!

ときどき自分の過去を振り返って、大学を卒業してそのまま一ヶ所に住み続けて、教え続けていたらどうだっただろう、と思うことがあります。30年以上も同じ場所でやっていたら、それなりの地盤というか蓄積というか、いっぱしのお局さん的迫力を身につけて、大きな顔をしていたかもしれません!?

でも実際はこの土地に引っ越してきてゼロから作り直さなければならなかったのです。なので、この年齢で、まるで32歳の若手みたいなもの。内心、ここに引っ越してきたことで、今まで積み重ねてきたものがまるで活かされないことをとても悔やむこともありました。

でも、時がたち、こうやって皆さんが集まって下さって、何とかちゃんとした発表会ができるようになってきました。それに自分自身のことを考えると、地盤が無いだけ余計に、もっと勉強しようと思えたし、もっと音楽に真剣に向き合おうという姿勢を崩さずにこれたのだと思います。過去の実績に安住出来ない厳しい状況に身を置いたことが、自分を成長させることになったのかもしれません。

昨晩、NHKのニュースで俳優の真田広之さんの特集がありました。子役デビューから順調にキャリアを重ねて、押しも押されもせぬ俳優となった彼は、40歳の時にそのキャリアを捨てて外国に飛び出し新境地を開き、世界で活躍する役者へと成長したのです。安住の地を離れて新たな挑戦をする、そのときの覚悟、勇気。敢えてそれを実行した真田さんの、あくまで謙虚に、学び続ける、挑戦し続ける、そういう姿勢に共鳴します。

私はもちろん小さな町の小さなピアニスト兼ピアノ教師。真田さんとは大違いですが、いくつになっても1からやり直して行くことの意義は大きかったのかも知れないと思っています。と言うわけで、私はまだまだ32歳という気持ちで頑張ります。

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