山口昌男の『文化人類学への招待』に中国地方の夜神楽のことが書いてあって、いつかは見たいものだと思っていたのですが、本家本元の高千穂の神楽を見ました。
ほんものの高千穂の神楽は、11月から冬場にかけて、高千穂の20カ所ほどの集落を順番にまわって、毎週末夜通し行われるものなのだそうです。
高千穂神社でやっているのは、それを1時間にダイジェストしたまさに観光神楽なのですが、でもちゃんと農家の人が演じていて、本物の雰囲気をきちんと伝えている良心的なものだと思います。
まず天の岩戸の話をテーマにした神楽で、3人の人が順番に出てきて舞います。
最初に白い神面をつけた天手力雄神(アメノタヂカラオ)が、スサノヲがあばれたために隠れてしまってた天照大神が、天の岩戸に籠もっているのを見つけて、どのようにしたら出てきてもらえるか思案する踊り
次に、天宇受賣命(アメノウズメ)が面白おかしく踊って、神々に大受けをとった踊りなんだけど、たいして面白くありません。
そして、赤い神面をつけた天手力雄神が、唱教を唱えた後に天の岩戸をふさいでいた戸岩を怪力で取り除く戸取りの踊り。
このとき放り投げた戸岩が飛んでいった先が、長野県の戸隠なんだそうです。
それと最後に、イザナギイザナミが2人で酒を作って飲むという、国産み神話を模した踊りがあって、演者が客席まで降りていって、200人ほど入った客を喜ばせます。
とてもおもしろいのは、この踊りを構成している核は、歌舞伎で使われている「見得」なんです。
成立は神楽のほうが古いはずですから、はたして田舎歌舞伎みたいにこの神楽のほうが見得を取り入れたのか、それとも見得のルーツは神楽にあるのか、どちらなのかなあと思ってしまいます。