デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



安正孝(アン・ジョンヒョ)『ホワイト・バッジ』(光文社)、読了。

韓国映画は幾作品か見ているが、韓国の現代小説をそれもベトナム戦争を採り上げた小説を読んだのは初めてだった。こういっちゃなんだが、国際紛争に介入したことで起こしたベトナムでの行為を正当化・合理化することなく、ありのままを描いた作品ってほとんどない、もしくはあっても知られていないのじゃないのかと思う。
作品の主人公は南ベトナム側として武力で介入した韓国軍(アメリカを除く国でベトナムに派遣した兵士の数としては最大の人員を韓国は派遣した。延べ人員数で31万人の兵士が派遣された)に従軍した元兵士である。
作品で語られるエピソードは生々しく、それは著者が韓国軍の特殊部隊として現地に派遣された経験からくるところのものが多分にある。文章の一節一節にこれほどまでの臨場感を覚える作品は読んだことがなかった。
ベトナム戦争は国際紛争がベトナムの地において繰り広げられた面を持つが、作品は戦場における凄惨で悲惨な体験を書き連ねているだけではない。戦争の全体像をきちんと把握・分析し、登場人物の口からその各々の立場から語られる戦争の所見は韓国軍の置かれた立場のみならず、戦いの背後にある大国の論理や現地人の複雑な感情に至るまで多岐にわたりその内容も情感が込められつつ的確に語られている。
『ホワイト・バッジ』からは旗手啓介『告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実』、一ノ瀬泰造『地雷を踏んだらサヨウナラ』で感じたような衝撃とは別の衝撃を受けるだろう。大義名分や犠牲の尊さやヒロイズムやロマンといった、戦争につきものの夢想など、戦地で恐怖におびえ現実の生の戦闘・殺し合いを体験し負傷し精神を病んだ兵士たちには何の意味も無いことをこの作品は教えてくれる。


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