Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

「全力を注ぐ所存です。」

2017-09-17 | 文化一般
ミュンヘンの歌劇場のアジア公演に関して一段落して、様々な感想が載っている。劇場のHPにはまた別のマーケッティングの人がここまでの旅行記を書いていて、台北とソウルから東京到着までについて短く旅行記としている。

18時間の移動の果ての六時間の時差ボケがあるにもかかわらず翌朝10時に入りで、キリル・ペトレンコがやって来ると120%の集中力で稽古に入り、意気が上がっていたことが語られる。結局二回の稽古で、全ての曲が通して演奏されたが、一小節に数分掛かることもしばしばだったようだ。台北の会場の音響には慣れる必要があったが可能性を充分に活かすことも可能だったとある。

面白いのは、台北の若くラフな薄着の聴衆で、楽団についても音楽監督についてもなんら聞いたことが無いという具合だった驚きである ― これについてはヴィデオで短パンの若い女性に気が付いたが、流石にその気候如何に拠らず欧州の夜の文化ではやはりあり得ない。台湾の呼び屋さんも親切な女性ばっかりで世話に当たったようである。 

コンサートでの喝采は、両手を上げてといった感じで ― ヴィデオで見た通り二通りの聴衆の一つだろう ―、とても直截なもので、最初の緊張感は一挙に解れたとある。ペトレンコ指揮管弦楽団とレヴィットの組み合わせで、台湾では知られていなかったのがこれで一挙に知られることとなったとあり、少なくとも二回目のコンサートへの入りで、コンサートが始まる前から我々スタッフにも拍手が送られたとある。そして劇場のロゴの入った手提げが20分で売り切れてしまい、「台湾人って手提げが好きなんだなー」と思ったとある。

食事の面では臭豆腐については評価は分かれたが、意外にもソウルでのBQが人気だったようである。但し旅行前にはそこでの滞在に関しては大きな不安もあったようだ。翌日のフリーには六人がゲーテインシュティテュートのコンサートとマイスターコースを開いたようでカメラが入っているのでいずれ断片が観られるのだろう。

コンサートホールは、僅か90分の稽古でも入るや否やご満悦で、本番では二曲各々にロックコンサート並みの喝采があり、翌日の早出を忘れるほどの反響だったという ― 聴衆の撮ったヴィデオを見返すとこちらでとは異なって、なるほどいい演奏をしたのだろうが楽団への喝采と指揮者への喝采の差はミュンヘンなどよりも遥かに小さい。韓国の聴衆はオタクも間違いなく多いだろうが、やはり東京などとは違ってミュンヘンの古い座付き管弦楽団初来演ということで訪れている人も少なくないのかもしれない。また台北とは違う意味で東京とも違うということだろう。そして喜びに溢れての東京到着で、どこか古い友人に再会したような馴染みの東京、各々が自由に出かけたとある。そして二週間ほど過ごすホテルに落ち着いたようだ。

同時に、南ドイツ新聞も東京に人を送って、ペトレンコ接近を試み、タンホイザー演出の日本での反響を見る。しかし様々に提供される写真には綺麗にキリル・ペトレンコの肖像は切られていることからすれば、写真家の専属権もあるがマネージメントがしっかりと防御をしているのは間違いなさそうだ。それでも音楽誌「クラシックホイテ」のHPには以下のような音楽監督のメッセージらしきが出ている。他には見当たらないのでプレス向きに出されたというよりも、日本向けの冊子やプログラムに掲載されるのかもしれない。

Generalmusikdirektor Kirill Petrenko gibt mit dieser Tournee sein Asien-Debüt: „Ich war noch nie in Japan. Daher bin ich sehr gespannt auf unser großes Gastspiel im „Land der aufgehenden Sonne“! Auch auf Wagners Tannhäuser freue ich mich schon sehr. Kurz vor unserem Gastspiel hatte im Mai unsere Neuinszenierung von Romeo Castellucci Premiere, da ist so vieles Neues zu entdecken, für alle Beteiligten! Wir werden jedenfalls alles dafür tun, den Erwartungen gerecht zu werden, und wollen unser Bestes geben. Ich freue mich sehr auf diese Reise!“

 ― 日本は初めてで、「陽が昇る国」での客演大公演がとても待ち遠しい。そして、ヴァークナーの「タンホイザー」をとても楽しみにしています。今客演が始まる前の五月のロメオ・カステルッチ新演出初演で皆に沢山のことが明らかになりました。ご期待に沿うよう全力を注ぐ所存で、最高の成果を示したいと思います。とても楽しみにしています。 ―

先ずは、日曜日の演奏会の出来とその反響に私達の関心は集まるところである。この「インタヴューは時間の無駄」と言い切る指揮者の類稀な藝術に対する真摯な姿勢とそのマネージメント能力は、既にこのアジアツアーでも端々に表れていて、しょてっぱなから東京の聴衆に問うてくるのは間違いない。ラディオ中継が無くて本当に残念である。



参照:
Ich war noch nie in Japan. Das ist.. 2017-04-03 | 暦
Nach Tokio! Nach Rom! 2017-09-15 | 音

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2 コメント

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「全力を注ぐ所存です」 (old-dreamer)
2017-09-17 23:33:59
日本列島は今まさに台風が通過中。
この時間(9月17日午後9時、NHK Eテレが「クラシック音楽館ーN響ザ・レジェンドのテレビ版! あなたの記憶に残る名演奏」と題して、レクエストがあった名曲のさわりを放映していました。もちろん、フィッシャー・ディスカウも机上の写真を前に、2011年4月のベートヴェン交響曲第9第4楽章(ズービン・メータ) も再放映されました。
ドイツの音楽、音楽家の大きな流れを感じました。あの頃は良かったとの思いもしました。もちろん、キリル・ペトレンコもミサイルの脅威の下で頑張ってくれるでしょう。
台風の目 (pfaelzerwein)
2017-09-18 02:27:07
「ドイツの音楽、音楽家の大きな流れ」は、我々が知る二十世紀の文化の変遷と思います。ドイツの音楽かどうかは、シェーンベルクの有名な言葉がありますが、その出版や演奏の社会的な認知ということでは決して朽ちてはいません。

そうした文化の中に演奏行為もあり、今回東京で公演するのは音楽劇場文化の一端としてのそれですが、そうした活きている文化を改めてどのように日本の社会が受け取るか、興味のあるところです。

そして今回は極東アジア三国でSNSでの色々な反応を見ていると、やはり芸術の力は現実の社会でもコミュニケーション力として大きいと思い知らされます。その商業性や(上記:ドイツの)優位性とは全く別な枠組みでの意義を強く感じた次第です。

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