Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

縦の線への疑心暗鬼

2019-03-22 | 文化一般
久しぶりのカールツルーへ州立劇場について纏めておこう。街自体は一時頻繁に出かけており、いつも通過するだけでもない、しかし街の中心まで入るのは久しぶりだった。僅か片道65㎞弱でドアツードア―でも45分程度だ。だから燃料費も往復しても10ユーロ少しで、駐車料金も17時から4ユーロと割安である。そして今回はミキサーの横の安い席を購入したので10ユーロだった。コーヒー一杯とプログラムを入れても30ユーロ掛からなかった。その程度の出費と時間ならなばもっと頻繁に行けるのだが、マンハイムの市立劇場よりも高品質の上演がなされていないとするとその価値は殆ど無い。

この劇場で有名な催し物はヘンデルフェストと呼ばれる比較的歴史のある催しだが、ヘンデルに関しては所謂小楽器ブーム以前から大劇場でも取り扱われていたこともあり、こうした保守的な劇場が催してもあまり関心を呼ばない。時々、話題になるので新聞評やプログラムなどを見るが態々出かけるだけのものはなかった。そして今回その座付管弦楽団を聞いて益々足が遠のきそうである。
DAS SCHLAUE FÜCHSLEIN - Trailer

現在監督は小沢の弟子とされるダスティン・ブラウンというケムブリッジ出身の指揮者がやっているが、二期以上に亘って長くやっていてあの音楽的な水準しか残していないので注目不必要な音楽家であることも確認できた。地元に住んでいる人ならばあれやこれやというのだろうが、我々となると一瞬で判断を下していかないと限が無い。要するに実際に聞かないでも見切りをつけるだけの予測の自信はある。勿論音楽監督自体が棒を振れば拍が決まっていただろうことは容易に想像可能であるが、管弦楽団の土台として全くなっていなかった。大野の頃の方が少しまだましだったかもしれないと考えてもおかしくはないであろう。そもそもあのポストに何年もいることが多くを語っている。
2017 Europe Tour Behind the Scenes Video 9, October 28, Luxembourg City, Luxembourg

さてその音楽的な出来の悪さは承知で出かけたのはアニメーションを観たかったからで、クリーヴランドで長く評判の良かったマルティメディアプロジェクトだった。欧州では一昨年ヴィーンの楽友協会で二三回放映されただけで、今回は二回目だと思う。その時の音楽はメスト指揮のクリーヴランド管弦楽団の演奏で、ルクセムブルクではコンツェルタント形式としてアニメーション無しに演奏された。最初のガイダンスでも話しがあったが、170のセクエンスが切られていて、そのインデックスで演奏の経過に合わせて、次のセクエンスへと切り替えられる。実際に冴えない棒とリズムで演奏されるので、若干繋ぎが唐突な感じがするとことも無くは無かったが、大きな事故も無かった。興味深いのは、年長者向きディズニーなどを印象させる縦のフィルムノイズ線を入れてあるとの説明だったが、これは鵜呑みに出来なかった。恐らくその動く線が無いと、カットの繋がりやスクリーン前との同調で目立ちやすい歌手が顔を出す窓の開閉などが目立ち易くなるのだと思う。この説明には疑心暗鬼した。
The Cleveland Orchestra "The Cunning Little Vixen" :30 spot (Edited by Miceli Productions)

Vixen Opera in Vienna

Cunning Little Vixen dragonfly

制作のユーヴァル・シャローンは昨年のバイロイトでローエングリンの演出者であったが、その制作の映像の制約から余り評価されていない。今回見た印象では、予想していたよりも上の疑心暗鬼を含めて、その演出自体は想像していたほどの価値が無かった。勿論ドイツ語に直してもちっとも聞こえてこない歌手やアンサムブルに大きな責任もあるが、どちらかと言えば演奏を邪魔しない程度のアニメーションであって、その映像表現には限界があった。二拍子系三拍子系の川の流れの動かし方や、前後左右上下への視点の動かし方などは悪くは無いのだが、あまりにも印象だけの表現でまともな構成的な意思は皆無だった。劇場の前にあるトロージャンの木馬の造形ではないが、それ以上の効果は無かった。少なくとも一度見れば十分で、今後とも想像力を働かしてあの映像が目の前に浮かんでくるかどうかは疑問だ。クリーヴランドの管弦楽団が最も聴衆の平均年齢が下がったと言っても、これらを見た子供たちが定期会員になっただけではなかったのか。兎に角、個人的には胸がすっきりしてよかった。

ネットで2020年5月ハンガリーでのベルリナーフィルハーモニカーの公演情報が流れてきた。調べてみるとフィッシャーがヴァークナーをやっている会場らしい。5月6日にマーラーの四番とリュッケルトリーダーをクールマンが歌う。更に調べると5月14日にブリュッセルで、その間の11日と13日がアムステルダムのマーラーフェストとなっている。通常はツアー前に本拠地で三日間の公演がある筈だ。この順番で行くと5月始めか?するとブタペストから直接ベルリンに戻ってくるとは思い難い。次に飛ぶところは、プラハかワルシャワだろうか?兎に角東欧ツアーとなっているのかもしれない。個人的に気になるのは、アムステルダム、ブルッセルと来て、もう一か所行かないかどうかである。更に足を進めるようだと、夏のツアーでは四番が外されるかもしれない。その場合は六番が難しい方のプログラムになるのもおかしい。2020/2021年オープニングが難しい曲となるのだろうか。

もう一つ気が付いたことがある。バーデンバーデンの「フィデリオ」はペトレンコの事務所というよりもミュンヘンのキャスティングと相似になっている。つまり、カムペとカウフマンが出ていないだけで、事実上はミュンヘンと話が付いているとなる。そこで興味が湧くのは、カムペ、カウフマンの「トリスタン」も話しが付いているとなれば、2021年はミュンヘンでなくバーデンバーデンでということも大いにあり得る。ミュンヘンのトリスタン演出は比較的新しいのも問題だった。バーデンバーデンでは2016年新演出だったが、これもラトルの快い了承が得られているとなると十分にあり得る。



参照:
新たな簡単な課題を試す 2017-10-21 | アウトドーア・環境
州立歌劇場でアニメ鑑賞 2019-01-29 | 文化一般
雲の上の世界の頂点 2019-03-21 | 文化一般

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