Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

市場でなく、自然に合わせろ

2005-09-09 | ワイン
ラインガウのワインの試飲会に行った。例年の事なのだが昨年選んだ2003年のワインに失望していたので、今回は初めての出会いのように批判的な目で以ってその2004年産ワインを吟味した。

結果は、信頼を100%快復したとはとても言えないが、もう暫く観察してみる事にした。久方振りに醸造蔵も見学して、三人の醸造所親方の一人に包み隠さず疑問点をぶつけて、幾らか印象を固定する事が出来た。

2004年度のワイン自体は、2003年度の暑い夏と違い、酸味と苦味が出ているがこの特徴を素直に出さずに、ヴィンテージによる偏差を押さえる方向にあるのは何処の高級醸造所も取っているトレンドな志向である。

このような安定した質の供給こそが、市場での製品の扱いやすさを保証して、製品価値を上げるのだが、最高級に素晴らしいワインにも出会えなくなる。その平均化したその品質は、毎年同じように買い足せばよいから、愛好家から買い置きをさせて寝かせる喜びを奪う。それどころかリースリングの長い寿命を短くしている。これが問題だ。

そして主要市場でもある日本の食生活に合わせた味付けに配慮してあるので、本当のリースリングファンの地元の我々の食生活の好みから離れて行っている。本国の愛好家はどうでも良いのだろうか。なるほど我々も家庭で甘酸っぱいような中華やタイ料理風の物や醤油ソースも使わないではないが、基本は甘味よりも苦味である。開けて明くる日にはへこたれるワインは、要らない。

それにしても、親方に直接批判したように2003年産のチャルタワインは酷かった。QBAクラスとは言いながら高価であり、少なくとも最良の条件にある我がワイン蔵において半年も置いておくと満足に飲めなくなる。こんな高級リースリングがあるだろうか。親方は酸の弱さを挙げたが、初めからそれは予想されることで、それなりの配慮が欲しかったのである。狙う市場から摘み取り、醸造まで一貫したコンセプトの問題といえよう。

ドイツ一番といわれる質の醸造所としては大変情けなく嘆かわしい。そして今回は、このクラスの飲み口の良い万人向けのワインに見切りを付けた。同じ価格帯で平素に楽しめるワインがあるからだ。よって上のクラスのキャビネットに照準を当てた。

これはこれで香りも良く素晴らしいが、その同じ価格で更に素晴らしい物があるのも事実である。ただ、このグラン・クリュ、グラーフェンベルクの土壌は、マルコブルンなど居並ぶラインガウの伝統的な最高級の土地の中でも、砂と泥の配合も斜面も良くて特徴がある。低地ラインガウのような重みよりも、ミネラル風味が特徴なので、シャンパーニュのような軽やかささえある。

さてこのような最高の土地から、最高の技術で作られるワインが、同じ価格帯で比較して最高の物でないという皮肉がある。バイオ農と近代的で即物的なマネージメントでは至る事の出来ない、物作りの難しさを垣間見る事が出来るのではないだろうか。ここにも、市場至上主義の弊害を見て取る事は許されよう。

こういう生産工程で出来た物の価格が他所よりも下回っていないような経済は、明らかに間違っている。つまり、申し訳ないが言わせて頂くと、ポーランドの労働力が如何に安くとも、労働集約型の作業と過分な投資額が価格設定に影響しているミスマネージメントと見る。
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4 コメント

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ワインは水のように・・・ (はっちー&ハリー)
2005-09-10 01:32:04
ホテル勤務時代は水のように飲んでいましたのでその「質」を気にした事がありませんでした・・テレビで田崎某氏セレクトワインを貰った事があるんですが・・ワインだね!



気候によって質が変わるんですね・・



ルパン3世が最高級とされる年代物のワインと廉価なワインとすり替えた・・ルパンはそれを飲んだらカビ臭くて・・・すり替えたワインを飲んだ偉い人は「最高だ!」



私は「最高だ!」と言う部類の人間だなァ~



ワインは奥が深い・・・酔っ払うだけでなく「うんちく」も必要ですね・・・
市場経済主義 (Spock)
2005-09-10 01:37:01
氏の仰ることの半分も理解していないのですが、流通、市場、経済というものを通すと、農産物は商品としての価値を重視せざるを得ないので、とても理不尽な扱い、物の考え方に突き当たるのかなと思います。



2次加工品と生鮮は違うとは思うのですが、あえて別のアプローチをすると、自然がくれる恵みとして何年かおきの豊作があります。素直に考えてこれは本来、自然のくれるボーナスのはずで、喜ぶべきことなんだと、私は思うのですが。



でも、市場、商品経済を考えると供給過剰で値崩れ起こしてしまうので、生産調整に走ります。例えば、日本でついこの間もあったキャベツ、生産過剰なので、収穫を止めて畑で腐らせてしまう。



これって、ほんと理不尽、おかしいですよね。一定の販売価格、利益をもたらすためには、農産物そのものの質や量なんて、二の次のようなもんです。自然のあるがままを受け入れるということができないような仕組み、市場に合わせて農産物を造らざるを得ないという仕組みそのものが、もう既に間違っていると思います。



例えば、某ハンバーガーチェーンのように、いつでもどこでも世界中、一年中、同じ味、同じ値段というのが、本来は有り得ないことであって、それを安心できると思ってしまうのが、いけないところなのかな・・・と勝手ながら思います。
市場の志向 (きりあん)
2005-09-10 08:54:59
こちらには初めて投稿させていただきます。モーゼル在住のきりあんと申します。



最近は確かに酸味を抑える方向でワインを仕立てる醸造所が目に付きます。つい先日醸造所の親父に聞いた話では、ドイツ人には酸味が苦手、という人が多いそうで、酸味をマイルドにするとウケがいいのだそうです。確かに口当たりはいいのですが、ならばリースリングで意図的に酸を抑えなくても、他の品種を栽培すればいいのでは、と思いました。まして数十ヘクタールの畑から数十万本を生産するとなると、市場の嗜好を意識した味のデザイン-特にQbA,Kabinettなど普及価格帯では-が欠かせないのでは、と推測します。



>さてこのような最高の土地から、最高の技術で作られるワインが、同じ価格帯で比較して最高の物でないという皮肉がある。



ご訪問された醸造所は名前で売れてしまいますからね。大きな市場を意識する必要のない小規模な醸造所の方が、理想を追求したワイン造りがしやすい、ということもあるかもしれません。
故意に難しく、逸脱する生産、魅力ある独自性 (pfaelzerwein)
2005-09-10 15:25:03
はっちー&ハリーさん、水のようにワインを飲めるお仕事それは良い様で、体に悪そうですね。



貰ったら兎に角美味いとして置きましょう!ルパン三世の話はなかなか良い落ちです。そんなものです。



問題なのは、それが元々奥深いのでなくて、故意に難しくしている事です。人が感じられるものでなくて、操作されたものになったならこれは良くないと思います。味覚とか趣向品は、それそのものが結構微妙なものですからね。







Spockさん、只の酒飲みの私の主観的でミクロなお話を断然クラスアップして頂きました。農業政策の話題は奥が深いと思うのですが、これは飢饉を安定供給で無くす事が出来るという前提でしょうか。残念ながら未だ到達していませんね。それと並行して、市場価値を安定と言うことになるかと思います。需要と供給ですね。ここまでは私にも分かります。



さて、そこから逸脱する生産をどの様に位置付けて行くかにこそ我々の智恵が生かされるべきです。その智恵に勿論価値が付くのは当然ですね。これが世界中でBIO商品に付加価値を付けています。個人的には余り興味が無く、その質もあまり信用していません。



そして誰もが言うのは、以前の方が日持ちもしなかったり、シーズンが決まっていたけど美味かったです。これについては一度纏めて書きたいです。



調整の為に潰して出荷しないのは智恵でも何でもありませんね。最も手っ取り早いのは分かりますが。このようなおかしなことを、修正して行く過程で文明が生まれて行くので、拘りは大切と思います。



ファストフ-ドですが、合理的に安く出来るならば地球の果ての飢餓地帯にどんどん供給して欲しいですね。そういう風にならないところが、おかしいと思うのです。







きりあんさん、いつも拝見して、お噂も伺っております。初コメントですか、光栄です。



酸味苦手の件は、地元の人でも多く知っています。ここでも何度か触れました。十年前ほどにトレンドになっていた酸っぱいワイン風味の強調は抑えられて、バランスを取るようにここ7年程はなって来ていると思います。これには反対しません。



仰るように、酸がだめと言うのは半辛口にしても同じなので、リースリングを本当に楽しむ事はできないというのが私の観察です。ミュラーテュルガウやその他が一時もてはやされた理由ですが、こちらではこれらは殆んど一掃されました。ヴァイス・グラウブルグンダーやシャドネーが残るぐらいでしょうか。国際競争力でしょうから、戻る事は無いと思います。



それでも上の試飲会で毎年会う親仁は、糖尿病ワインが欲しいといって辛口を買うようでした。つまり、比較の問題で、実際は糖分も高いのですが分析表を見なければ気が付かないだけなのです。



これが言いたいことで、所詮主観的な嗜好ですから、出来うる限りシンプルに、楽しめる高級ワインを作って欲しいのです。



出荷量と各付けですが、上の醸造所は小さくはありませんがもっと大きくても丁寧に作っている名門醸造所が幾つもあります。カビネットでもグランクリュワインに近いものは最高でなければ将来は無いかと思います。



はっきり言うと、上の醸造所は一般に言われているほど、価格設定ほど、既にトップクオリティでは全然ありません。つまり価格設定は微妙にずれて来ている。この辺も含めて今後どのような選択をしていくのか興味を持って期待しております。世界最高に高価なアイスワインだけで市場を開拓する事は出来ないので、誠実に質に拘って欲しいのです。何年間もこれを続けることは、今まで何処の醸造所も許されていません。格下げになります。



名立たる大手名門と小さな質の醸造所に挟まれて、以前カルタワインにあったような魅力ある独自性を主張出来るかです。

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