Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

ハンブルク娘のカムバック

2009-03-21 | 
ジル・ザンダーの記事が文化欄に載っている。若きころのポートレートと共に。東京で仕事をしているというのだ、H&Mに対抗してフランスでも開店したという量販衣料ユニクロのプロジェクトに生地選びから仕上げまで監修して参加しているようだ。

なるほど最近は名前を聞いていなかった訳で長く仕事からはなれていたと言う。口の悪い者は彼女の老けた写真を見て失望しているが、なるほど彼の日本人の奥さんは何処か彼女にも似ていて、もともと彼の好みのタイプであったのだろう。

1973年にデビューしてから1999年に会社を一部プラダに売却して、その後結局最終的に業界から姿を眩ましていた。そして今。

記者会見があった日は、東京がモードの中心地になった一日という。なにせ、H&M、ZARA、ギャップ程度の量販ブランドであるユニクロに、たとえ今までカール・ラガーフェルトやレイ・カワクボは登場したからと言って、トップクラスのデザイナーが参加することなど青天の霹靂であったからだ。

「五時半に仕事場に来て、夜の十一時半に初めてホテルに帰るのよ」とFAZに語っている。

秋コレなどを二週間も観察して、「今日はサーカスに行ったのよ。それで人間観察をしたのよ。どうでしょう、皆に同じ所で受ける大きな中流階層というのがあってね。それがユニクロへの想いかな。」

「それは初めは天地がひっくり返ったような気持ちだったわよ。それで生産工程で改良しなければいけないところを見つけてね。遊びに来たのではないですからね」

誰もが考える、その価格で彼女の腕が見せれるものかとの疑いに、

「それはメーターで200ユーロもする生地は使えないわよ。それでもね。生地選びからプロトタイプの縫製にまで拘って、私はほら裁断に関しては完璧主義だから、その生地が生きるも死ぬも三次元での裁断があってこそなので、形なくして質なしよ」と切りつける。

「事情通として、開発の中心にいる訳だけど、自身驚くのよね。一体幾らするのと訊ねると。29ダラーだって。だから言うのよ、これは五百ユーロ払わなければ買えないものだよって」

昨年までならモードはまだ高級でセクシーなものとして扱われていたが、「今や経済危機で安いノーブランドが劣悪な質という事も許されなくなっている」

「世界は急激に変化して行くものなのよ。民主的に考えていかなきゃ」、「つまり、位置付けと価値なのよ。元々私はひらひらしたものよりもジップのブラウスの方が良いと言っていたでしょ。この分野で私はものにしたいのよね。安ものなんて私は酷いものだと思っているから」

そう言うハンブルク出身の彼女のデザイン自体が、伝統的な中にトレンド感を頂いた奇抜でないデザインであり、昨今のひらひらした華美なまるでホテルのカーテンのようなモードから距離をおいていたのだと書かれる。

私自身ユニクロの噂や実物を見るのは、会合で出会う日本人妻の衣装やその日本旅行報告で知るだけなのだが、その質に関しては何とも評価の仕様がない。ただ、中国生産と言っても質の良い従業員と質の高い品質管理をして居れば決して劣らないものを生産できるのは殆どのドイツ製品が東欧産であるのと変わらない。

こうした記事においてユニクロのドイツ進出も近づいているのだろう。周りにいた独日協会の面々にそれを話すと、H&Mで購入したトレーナーを着た「実用的な衣料で良いのだ」と比較的高級取りの独身女性が答えたが、そうだろうかとも思った。

ジル・サンダーの本格的な衣料革命にも期待して、決して途上国の経済に埋没しない技術力や智恵がやはり世界をリードする姿を見せてもらいたいと思うのは、自動車産業華かりしころに既に時代に向けて既に備えていたオールド産業である繊維産業を少しでも知る者の期待でもある。嘗て製紙部門に従事していたの男は、その当時華やかであったプラスチックなどの塗料部門が今やとても酷い状態である事を語っていた。



参照:
Ich bin ja nicht zum Spiel hergekommen, Ingeborg Harms, FAZ vom 18.03.09

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