Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

魂をえぐる天国的響きに

2016-06-13 | 雑感
修理を始めてから既に一週間経つ。ここ辺りで終わりたいところだが、二回目に発注したゴムベルトも少し長過ぎた。発注してから円周などを計算すると長めなのは気がついていたのだが、太さの1.5㎜と丸型なので一度嵌めてみないと分からないと考え、支払いが済んでいたのでそのままにしておいたのだ。なによりも初めての業者で直ぐに送ってくるかどうかも分からず、二本組の価格に比べるとその送料も2ユーロと安かったので早めに発注していた。

糸で必要な長さを計ると125㎜なのでゴムの分厚さを加えれば直径40㎜で125.6㎜となって、ミリ以下だけが長いことになる。実際に装着して指で回すと駆動した。しかしモーターで動かすと空回りしたようだ。最低必要なテンションが掛からなかったのだ。今回のものは、前回の四角のものと違って、固くて丸型なので角に引っかかって対向線上に張力を生じることも無さそうだ。そしてゴム自体も伸びも薄く、それをPeesenと呼ぶらしい。初めて聞く言葉なので独語辞書を調べても出ていない。ネットで調べると、ザイルの伸び代のあまりない麻で作ると、ガットなどと同じように強度は限られるが伸びの無いこのタイプになるとあった。要するに駆動が目的なのであまり伸びが無い方が良いということだろう。そもそもエンジニアリングの素養の無い人間であるから修理などは面倒なのだが、これでもう二つ直径の小さい35㎜ならば全長109.9㎜となり、25㎜の伸び代には足らないだろう。そこで38㎜で119.3㎜で決定である。これならば伸び代6㎜弱なのでそれ相当の張力が掛かる筈だ。

そこで、縫合したベルトに戻して、レーザーヘッド周りの白く跡が残っているところをアルコールで拭いて清掃してシリコングリースを付ける。ヘッドが前後する台の歯車なので、これは読み取り能力に関連するところである。針飛びし易くなっていたので、幾らかは好転するだろうか。流石に面倒屋でもヘッドにシリコンが飛散してはいけないのでラップで包み込んで保護する。何回も同じ部分を取り外ししているうちに徐々にコツが呑み込めてきた。もう一度で終わるかどうか?上手くいけば意外に長持ちするかもしれないと思うようになった。

デジタル音比較は改めるとして、宇野功芳の訃報が載っていたので、氏が解説を書いていたLPを鳴らす。ブルックナー作曲の交響曲八番の録音である。知る人ぞ知るクラシックオタクの代表的な偉大なアマチュア批評家だった人物で、1970年代にレコード芸術などの雑誌を見たことのある人は氏の文章を知らない人はいまい。このオタクの世界では戦前から野村あらえびすを代表とするような物書きがいたが、なんといっても高度成長時代のマスメディア全盛期の丁度フォン・カラヤン時代の産業的にも市場的にも勃興した時代を代表する批評家であった。それ故にアンチカラヤンというのも商売になった時代だったのである。「音楽芸術」でもなく「音楽の友」でもなく「レコード芸術」であったというのがまさしくその時代を語っていて、二十世紀後半のそれを反映していた。

取り分け故人の推薦したハンス・クナッパーツブッシュ指揮のブルックナーの交響曲などは、そうした後押しが無ければ大きな市場を獲得できるような録音でも演奏実践でもなかったであろうと思われる。なるほど本国においてもヴァークナー指揮者としても歴史的に良く知られるところであるが、戦中戦前においてもフルトヴェングラーのような天才的大スター指揮者でもなく、コンサート活動においても二番手であった訳で、またそのブルックナー演奏となると知る人ぞ知るとなる ― それでも後年のギュンター・ヴァントなどに比較するとやはりミュンヘンの劇場での業績などでの格が違う。

そのようなオピニオンリーダーとして、ブルックナーの交響曲が東京でベルリンの座付楽団で全曲演奏されるなどは、宇野氏の功績があったからこそで、本国でもあり得ないようことが昨年にも生じている。これを文化的な功績とするならば似非文化評論家であった吉田秀和の文化勲章よりも文化功労章以上の価値があったのではなかろうか。そしてあの当時はそうした市場があったのだが、今やそうしたことはブログで発言するぐらいの市場へとある意味正常化しているのかもしれない。



参照:
東京の失われた時の響き 2016-03-06 | マスメディア批評
社会的情念の暴力と公共 2016-06-01 | 音
「マイスタージンガー」の稽古 2016-05-17 | 音
縫合したゴムベルトで駆動 2016-06-10 | テクニック

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