Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

待てないティーレマン去就

2021-05-12 | 文化一般
月曜日夕刻情報が流れてきた。ドレスデンでのザクセン州文化大臣の会見を受けてdpa通信社が速報を一斉に流した。州歌劇場の音楽監督でもあるその座付管弦楽団の監督の座にあるクリスティアン・ティーレマンとの契約を2024年以降延長しないことを発表した。同時に確執があり二月頃に公に指揮者が非難した歌劇場支配人との契約も同時に終えると声明。

ティーレマンが、バイロイト音楽祭の初代音楽監督の立場を追われて、そしてここでも州政府からその契約延長を拒否されたことはなにも驚くに当たらない。既にコロナ期間中の世界的ヴァイオリニストのアネ―ゾフィー・ムターなどと連名の補償金をよこせの公開文書はベルリンの連邦政府の文化大臣から叱責を受けた。更にバイロイト音楽祭の改革を求めるとして、名指しを避けながらも初代音楽監督の挙動は不利益として排除されるべきとされた。

この時点でこの指揮者のドイツ連邦共和国内での立場は決まった。今回の一方的に契約を延長しないと早めに通達する意味は事実上のトップダウンの解任である。普通はしないのだが、政治家であるキリスト教民主同盟のクレップシュ相は外交的にこれまでの十年の成果を評価して同時に、「これとは無関係に、世界的に高名なそのプロフィールのクルスティアン・ティーレマンが今後もゼムパーオパーと今後も芸術的な関係を持ち続けるのを期待する。」とコメントを出している。

これも中々意味深くて、シュターツカペレドレスデンに客演してくれとは言っていない。勿論そこで指揮をするのだが、オペラも振ってくれとも取れる。しかしまさに問題はそこにあって、そもそも新ミュンヘンの新監督ドルニーを邪魔にして追い出したことで多額の契約料を州に支払わせたこの指揮者には罪が有りながら、実際にはオペラ劇場の音楽監督としてまともな仕事はしていない。それでも南ドイツ新聞やベルリンの音楽評論家などは素晴らしい公演が実はあって、それは通っている人にしか分からなかったとされている。つまり今回の「解任劇」は不当であるという見方がそこにはある。

当然のことながら州は、この指揮者には期待できないとして、オペラ自体も今は良くても十年後にはついて行けない、つまり伝統的な上演や演奏会形式、そして音楽劇場の中で揺れ動いていて、今迄の常連客を超えて更に広く訴えかけて行く必要がある。そこにデジタルでの利用と訪問者との関係もあるとしている。

つまり、芸術面でと経済面でとこの指揮者が適任では無くて、更に期待できる男性か女性指揮者に首を据え替えたいという意味だ。更に同時に詰め腹を喰わされた支配人が一年だけ延長して辞めさせられる理由はなにか?政治的にどうしても最短で辞めさせたいという意志が働いている。今までの辞任の仕方から実質的には再来年からのドレスデンの復活祭にこの指揮者がどれほど関与できるかどうかも怪しくなってきた。ザルツブルク州がバッハラーを嗾けさせて追い払ったのによく似ている。

それ以上に推測をしても仕方が無いので、芸術面を考えればこれがやはり無関係ではない。ドルニーとの協調作業を初めから拒絶したように、音楽劇場で何かをやれる才能も知能もこの指揮者にはない。そもそもそうした公立劇場のあり方までを理解していない。オペラは舞台があるから振らないとかいう指揮者などと同じで舞台芸術的な能力も無いのに、より抽象的な音楽的内容で構成される演奏会で成功する筈が無いのである。どうしてもこの指揮者を信奉する聴衆の層が知れるということになる。追々年金生活者の娯楽対象ぐらいにしかならず、市場が小さくなるという経済的な影響が既に表れていた。

後任には、相性からヴェルサーメストがいいと思うが、同州ライプチッヒのネルソンズでも悪くはないだろう。オクサーナ・リニヴにこそ地元の音大卒なので州は狙いを付けているだろう。目標は2030年に世界に誇れる音楽劇場にすることらしい。

辞めるティーレマンに関しては、連邦共和国内での公職に就くのはもう難しい。ベルリンの放送は「引退」という驚きも無いことは無いとしているが、東京のNHKもドレスデンの前任者のルイージに白羽の矢を立てて、もう少し待っていればこちらの方が新国立でのオペラ指揮を考えれば間違いなく買いだった。昨年から予想はついていたので、なぜ待てなかったのだろうか?



参照:
Was die Nichtverlängerung für Thielemann und Theiler an der Dresdner Semperoper bedeutet, MDR vom 11.5.2021
何度も繰り返す内に 2021-02-12 | 雑感
音楽監督ティーレマンの去就 2020-12-29 | マスメディア批評
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