Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

還暦おめでとうの誘い

2019-04-02 | マスメディア批評
ミュンヘンのオペラでお馴染のティール氏が還暦祝いの指揮者ティーレマンにインタヴューをしている。4月2日からのザルツブルクでのマイスタージンガーの稽古を前に、お休みするという。その楽劇について面白いことを話している。ニュルンベルクへの試験でも二回これを振って、バレンボイムに代わってバイロイトにもデビューしたのがこの曲だという。そして経験を付けたことを自負していて、自分の古い録音もところどころ聴くと吐露している。これも指揮者としてそれを認めるのもとても珍しい例である。そして今の方が早く流れるようになったと漏らす。昔は詰め込み過ぎて意気込んでいたという。

そして滑稽なのが、指揮が小さくなってきたことを指摘されて、それは一流の証拠で、それをバイロイトで習ったと話し始める。なぜならば、あそこの過酷な条件では体力を温存することが大事で、客に向かっては指揮しないぞという衒いも無くなったという。これを読んで思わず吹いてしまった。目に浮かぶのは猿股にピンクのポロシャツを着てガサガサやっている姿だけだ。その通り、一流の指揮である。

その他、十年前の五十歳の誕生日の時はミュンヘンで騒動に巻き込まれていたが、今は習って何にも怒らないようになったという。もうその歳になると、自分にバカバカと苛立つだけらしい。そして最後にジャーナリストとしては欠かせないザルツブルクの復活祭について触れる。

一言「それについては、何も知らないから、何も言えないよ」と答える。そして付け加えて「急場に、シュターツカペレドレスデンがとんでもなく上手く入った」ことを強調する。ティール氏はこれはまるでミカドゲームで先に動いたものが負けだなと今更の如く書き添える。そして再びインサイダー情報として、「バッハラーをそこに据えたのはバーデンバーデンとのスワッピングが目的だ」と同じことを繰り返す。

この説が繰り返し紙上を飾る意味をようやく考えるようになった。つまりティール氏も流石にバーデンバーデンでの状況は私の呟きを読んでいるぐらいだけで分かることなので知らない訳はない。2023年までと敢えて2022年を超える計画にまで言及しているのも知っている一方、「バーデンバーデンからはベルリンのフィルハーモニカーへの投資が血を流す結果になりかねないとの懸念が聞こえて、契約を延長しないでもそれほど悲しむことは無い」としている。

この記事を再三読んで、彼の文章の読者層は少し喜ぶかもしれない、しかしそれだけだ。一番影響を受けそうなのはやはりティーレマンではないか?鷹揚になったと自身は語るが、誰よりも裏工作には余念がないであろう。そして本気になればバーデンバーデンへと自らとシュターツカペレを組でと積極的に運動するのではなかろうか?保身も含めると最も安全な道と判断してもおかしくはない。そもそもバッハラーとペトレンコが口合せして動き始めることは無い。すると来年の「ドンカルロ」の予算をバッハラーが握っていると、疑心暗鬼が醸成されて、2021年の「テュ―ランドット」どころではなくなる。

この記事には二か所注目する表現が隠されている。一つはティーレマンの立場に関して、バイロイトでは企業家としていることと、もう一つはシュターツカペレの方が先に動いて然るべきとしていることで、そもそもシュターツカペレは動く必要が無いので、まさしく動くのはミカドゲームでティーレマンとなる。恐らくこれが全体の構図であり、外堀が完全に埋められている限り動くのはティーレマンでしかない。

実際にはバーデンバーデンの方も懇意の興業師の支配人が引退を表明していて、当初の予定のような勘定方をすることが無いとなると、やはりカラヤン未亡人を通じて、奥へと手を伸ばして打診してくるということだろう。今年になってからも代表の連邦共和国元副首相、現連邦議会議長のショイブレ博士がバーデンバーデンに顔を出していたが、流石にそこは取り合わないでもその周辺の有力者へと手を伸ばしてくるということになるのだろう。
Sir John Eliot Gardiner & LSO im Festspielhaus Baden-Baden




参照:
Christian Thielemann über seinen 60. Geburtstag: „Ein tolles Alter“, Markus Thiel, Merkur vom 1.4.2019
真剣に音楽を分かち合う 2019-03-17 | 文化一般
利益背反のドレスナー 2018-11-17 | 文化一般
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