Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

九月一日はグランクリュ解禁日

2011-09-04 | 
グローセスゲヴェックスの解禁日であった。ダイデスハイムのフォン・ブール醸造所で試飲した。今年初めてなので下位のものから試した。ご無沙汰していたので、2010年は酸が強く時間をおいた方が得策なのだということになった。試飲する前からその年のその醸造所のワインを予測できるようになれば、もはや通人である。

実際にダイデスハイムのヘアゴットザッカーの区画からのリースリングは、ここの醸造所の売りなのであるが、まだまだとてもシャープであり、旨みに欠ける。あまりリースリングを飲まない層には逆にシンプルさとフルーティーさが受けるのだが、今年は薦め難い。寧ろ、いつもは苦味が残るキーゼルベルクのそれの方が酸とのバランスが効いていてワインとしては上出来であり、グレープフルーツ味は買いである。

当然のことながら例年酸が更に強いムーゼンハングは更にシャープで戦闘的なので現時点ではなかなか売れないだろう。どうしても雑食砂岩の酸はスレートのような甘みが少ない分とても攻撃的となりやすい。モイズヘーレは黄色い果実風味なのだが、もう一つその苦味でミネラルの豊かさが隠されてしまっていてもう一つである。

さて、グランクリュの前落としのウンゲホイヤーとペッヒシュタインの葡萄を混ぜたF・Pブールは流石に腰もあって良いのだが酸に押され気味である。ここまで飲めばグランクリュの方に興味が移ってしまう。

さて今年の最初のグローセスゲヴェックスはルッパーツベルクのライタープファードである。あの重い土壌の黄色い粘土っぽい感じが11グラムを越す酸と見事にバランスしている。これならば二年後ぐらいにはとても魅力的なリースリングになっているに違いない。未だ嘗てライタープファードのグランクリュを購入したことは無かったのだが初めて手をつけた。同じようにスパイシーさの強いウンゲホイヤーの七癖を美しい酸が綺麗に装っているのも秀逸である。2010年は文字通り怪物的なウンゲホイヤーの年となりそうである。

ペッヒシュタインは色も薄く全くこれからなのであるが、その酸の質は2008年よりも明らかに繊細であり、こうした繊細きわまるワインが悪い訳がない。残酸11G、残糖6.3Gに誰が文句をつけようか?

イエズイーテンガルテンはその分糖も9.9Gとハイアヴェレージであり明らかに高次のバランスに達している。もちろん買いである。若干酸の暴れと荒さは気になるが。

さて最後のキルヘンシュトュック、2010年は生産量が少ないため安売り価格でないので手が出ない。もちろん将来性も高く、オークション価値も間違いなくつくだろうが、それを飲む楽しみを待ち続けるのはいささか難しい。

その他、ゴールデンムスカテラーの返品ものを試して購入。これはブーケの良さでもあり、お楽しみで開けた。ソービニオン・ブランも悪くはなかったが、若干マットな感じも拭えなかった。2007年産のイエズイーテンガルテンを試飲したが、どうもこの年は購入していなかったようだ。理由は覚えていないが、試飲して感心しなかったのだろう。そのためか、今試飲しても若干ペトロ香があって既に過ぎているのを感じさせた。その点を考えれば価格が倍ほどのビュルクリン・ヴォルフがまだ十分に開いていないのと比べれば当然なのかもしれない。またウンゲホイヤーの甘口アウスレーゼも酸の良さから推奨できる。

ヴィニンゲンやクニプサーと並んで減酸処理をしていないと主張するが、そのあたりの技術的な細かなこととは別に、品質と価格の関係は、好き勝手な時期に開けて美味いとか不味いの問題では全くなくて、正しい時期に開けることの難しさとその壮大な時間に比例しているのである。要するにリースリングの良いものは高価であるが、それを分ってしかるべき時に購入できる者も極選ばれたエリートしかいないということなのである。幾ら金を積んでもなかなかそれに見合った一品を見つけることが容易ではないグローセスゲヴェックスリースリングは、この酸の強い2010年の品質を以って二十年後から三十年後へのタイムスパンが開かれることになるのではないか。


写真:ゲオルク・モスバッハーのキーゼルベルク



参照:
先ず体感することが一番 2011-02-05 | ワイン
よーみよドイツワインガイド2010 2010-12-31 | ワイン
コメント
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