Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

ベルリン、原子力の創世と終焉

2011-07-07 | 歴史・時事
先週木曜日にようやくドイツ連邦共和国議会で一連の脱原発法案が成立した。600票中513票の賛成、79票の反対、その他棄権等となった。左派党の反対は操業停止を求めるためとするが、そもそもは共産党の中央集権独裁主義も西側社会主義も原発推進をしてきた歴史にも触れている。

1938年秋にオットー・ハーンとアシスタントのフリッツ・シュトラースマンがベルリンのカイザーヴィルヘルム化学研究所の木机の上でウランに中性子を当てたところ、バリウムと半分のウランが出来てしまったことから始まり、ユダヤ人の同僚であり既にスェーデンへ亡命していたマイトナー女史によって理論的解析がなされ、その後マンハッタン計画へと受け継がれて以降は周知の事実である。

広島長崎から八年後にはアイゼンハウワ-大統領の「原子力の平和利用は恩恵」国連演説を受けて、豊かさの証明でもあり、日陰に暮らす人達への恩恵として社会主義建設の根幹ともなるのである。1957年には連邦共和国でも試験機が電球を灯す事になった。1961年からの実用化が始まった。

そして、オイル危機を以って、原子力エネルギー政策のその意味合いが強調される一方、原子力への危機感が膨らみ1975年には「カイザースシュテュールのワイン地所が駄目になる」と大規模な建設反対運動が起きたごろから原発への反対運動がお茶の間でも認知され、スリーマイル島の事故を経て1983年の緑の党の国政進出へと繋がれた。

まさに、1968年の世界的な学生紛争の動きから、自由化へと紆余曲折を歩みながらもヴァルシャワパックに対峙する西側諸国として、服装の自由化をはじめとする開放へと議論を進めた国と ― ハーバーマスに代表される知識人が活躍する社会と ― 、福島を見てもいまだに事実さえもを認めずに、いい加減でみっともない薄着で節電する加害者であり被害者となった日本とは比較しようがないのである。しかし、その記事では「原発の終焉」が告知されていても、「核秩序」については敢えて触れていないかのようだ。まさにここがみそではないか?ドイツ連邦共和国社会の手腕であろう。

この法案には、具体的にモラトリウムで停止中の危険な原子炉はそのまま廃炉となり、フィリップスブルク二号機が2019年に停止されるなどと2001年の緑と赤の政府が確定できなかった各々の不可逆の運転停止日時が記載されている。これこそが恩恵である。次に近いのはネッカーヴェストハイムの最後までつまり2012年まで操業する炉となる。百数十キロ圏であろうか。その次に近いのはアルザスのフェッセンハイムとなるだろう。風向きや地形などによって影響は異なるので一概に地元への影響度は断定できないが、少なくとも目の前から水蒸気が消えてくれるのは有り難い。冷却期間はその後の集積場所の受け入れ態勢から後ろへと延長されていて、2013年以降にしか核廃棄物を他所へと持ち出せないことになっている。

その他、二酸化炭素排出権の資金が環境やエネルギー変換への資金として流用されて、電気自動車、エネルギー削減、エネルギー貯蓄、エネルギー効率の高い建造物、製造業での電気使用削減へと年間五億ユーロまでの奨励金が決められた。

また再生可能エネルギーの割合は、今後の10%の需要削減を加味して、倍増の35%へと引き上げられる。太陽エネルギーの捕獲の推奨と同時に北海での風力発電は、長い送電線を用いて南ドイツへと運ばれる。各地方自治体に高圧電線の敷設にキロメートルあたり四万ユーロが援助される。

また、建造物のリフォームにおいて、15%以上の削減が出来るリフォームに対して年間十五億ユーロ規模の減税処置が連邦と州からなされる。年間6000KW以上の大型の需要者は、スマートグリットなどのインターアクティヴな電源コントロールメーターが義務化される。



参照:
Alle erneuerbar: Die Beschlüsse des Bundestags,
Anstieg aus der Kernenergie,
Das Ende des Fortschritts, Robert Gast,
Kurzer Gruß zum langen Abschied, Günther Bannas, FAZ vom 1.7.2011
現実的エネルギー政策 2006-10-18 | アウトドーア・環境
核反応炉、操業停止 2005-05-27 | アウトドーア・環境
裏町のパブリックな対応 2008-02-18 | 試飲百景
ルフトハンザ成田発着最終便 2011-03-15 | アウトドーア・環境
はなの憂鬱 - 情報操作 2011-03-21 | アウトドーア・環境
待ち焦がれた破局の興奮 2007-12-10 | アウトドーア・環境
共同体に警報が鳴り響くとき 2011-03-27 | アウトドーア・環境
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