Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

暁に燃えて、荒れ狂う

2005-08-30 | 歴史・時事
フランクフルター・アルゲマイネ紙は、当時文化欄でハンス・ウルリッヒ・トライヒェルのリブレット、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェのオペラ「裏切られた海」のフランクフルト初日上演を次のように取上げた。

ハーフパイプを横から見る情景は、北斎の波が弾け落ちる浮世絵を想像させると。枝葉些細な舞台報告に加えて、潮流を人間もろともに音化したため、テキストを聞き取れなくした代価を払ったとみる。弾け、飛び散る音楽は、音色パレットを広げ、燃え、荒れ狂うい宿命的な衝動を代償するという。

荒筋を初日当日の日曜版に書いた評論家女史であるが、どうも書き示すように右翼暴力思想の小説のオペラ化として捕らえているようで、船乗り竜二が最後の船出に向かうシーンの演出では、どうしたことか有名な褌姿の三島の「セバスチャン」の写真が目に浮かんだらしい。

当然のことながら「この用心深い対比(公演)は、ヘンツェの「難しい午後の曳航」において素材とその移植、さらに背景のイデオロギーとその音化の苛々感を排除出来なかった」と結論し、「そもそも海は、解明不能」と結ぶ。何よりも「仏頂面の殺人少年」を、精神分析的に世界透視的な上部構造をもってしか示せないと書くが、これは三島作品をオペラ化する意義と全く矛盾している。

此れを以って、二十一世紀へのパノラマを示したフランクフルト市立歌劇場の18年におよぶ体制は終ったという。このような意欲的なプログラミングにしては、都市過疎化する「土曜日・初日」であるにしても、定期会員以外の聴衆も高齢化していた。初日を18オイロで天井桟敷が直前に買えたのを考えると、これは若い聴衆の近代離れを意味するのかも知れない。

先週初演された武満徹のコンセプトに依るオペラ「マドルガーダ」は、「エレファントマン」で有名な映画監督デェイヴィッド・リンチとの協調が多いバリー・ギファードの台本であった。この二人は、狂気に満ちた母親からの駆け落ち旅行物の「ワイルド・アット・ハート」と云うのでも映画賞を取っている。実際に観てみないと、これらが何を語るのかは分からないが、ギファード氏のHPにメキシコとの国境線を行く短編フィルムがある。ここに、新大陸の消え失せた本来の夢でなく、欺瞞に満ちた希望を見る事になるのだろうか。

上述の音楽劇作品では、ガス室と核の爆風で一世代が消え伏せた後、夢海と名乗る少女が、マキャベリズム国家によって、海へと筏で流され、鯨に助けられる。スペイン語のこのタイトルは、曙を指すらしいが、どこまでも蒼い明けない海をどこか想像させる。



新聞の新作オペラ批評 [ 文化一般 ] / 2005-08-28
海の潮は藍より青し [ 文学・思想 ] / 2005-08-28
から続く
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