※ オーストリア/ウィーン美術史美術館編 ‐ 中欧美術館絵画名作選(49)
ブリューゲル(1525-1569)の連作月暦図、夏季図(6/7月)に続く四点目は、NYのメトロポリタン美術館が収蔵している。
その作品とは、初秋季(8/9月)を描いた 「穀物の収穫」(1565年/118×160.7㎝)、別名 「刈り入れ」。
画面の半分を占める穀物、おそらく麦がこの季節を象徴している本作、月暦図中、“ 空間構成が最も緊密性を示している ” とされている。
その空間構成、前景の大きな木を中心に、真っ直ぐに奥に向かう先に教会らしき屋根の一部が見え、“ 自然界と人間との深い繋がりを示すことに成功している ” ともされている。
ところで、その木の根元で一人だらしなく寝そべる男に既視感があって小編を繰った。
その作品とは、本作の二年後に描かれた 「<怠け者の天国>」(1567年/52×78㎝/アルテ・ピナコテーク蔵)、この時、既にこのモテーフを温めていたようで、“ 本作でそれを予告した ” のだとか。
月暦図に戻って、五点目は美術史美術館が収蔵する 「牛の群れの帰還」(1565年/117×159㎝)、別名 「牛群の帰り」、晩秋季(10/11月)を描いている。
陰鬱な雲、葉の落ちた木立、家路を急ぐ牛の後ろ姿が、やがてやってくる冬を思わせ、冬季図(12/1月)の 「<雪中の狩人>」へ続くことを窺わせている。
ちなみに、その後ろ姿、「雪中の狩人」 「<農民の踊り>」 「<聖パウロの改宗>」、後出の 「洗礼者ヨハネの説教」など、多くの作品に用いている。
また彼は、遠近手法を多くの群集構図に用いているが、本作においても、前景を大きく横切って坂道を進む牛の群れは後景に移るにつれ小さくなり、深い奥行を作り出している。
これで、四季の移ろい中で自然の雄大な生命力とそこに暮らす人々の様子を描いた月暦図五点が揃った。
美術史美術館の先棒担ぎみたく、阿呆にもブリューゲル全収蔵作品をと始めたものの、途中でええ加減にしたらと思わないでもなかった、が、それも次回でお仕舞、となると少し寂し気がしないでもない。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1197
※ 「美術史美術館(30) ‐ ブリューゲル(11)」へは、<コチラ>からも入れます。
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