パリで最も古いとされるサン・ラザール駅。
個の駅から、かつてノルマンディー公国の首府として栄えたルーアンに向う。
モネは、「睡蓮」や「ルーアン大聖堂」「積みわら」など、同じモチーフの絵を何枚も描いていて、1837年に建てられたサン・ラザール駅は8枚も描いたという。
尤も、睡蓮など、本人自身が何枚描いたか分からないのでは? と思うほど描いている。
駅、それは、旅への誘い。
浮き立つような喧噪と喜び、あるいは、別離と郷愁。
昔も今も変わらずにそこにある風景だが、モネは、それらが醸し出す情景をキャンバスに切り取った。
ちょうど長い旅を終えて、煙や水蒸気を吐きながらゆっくりと駅舎に近づく機関車。
線路と機関車のガラスの屋根の伸びやかな空間。
その向こうに広がる青空と建物が、この絵に動的な広がりを与えている。
この絵、ターナーの「グレート・ウェスタン鉄道」(ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵)と、しばしば対比されることは、<マルモッタンとテートブリテン>でも書いた。
しかし、嬉しいことに、1877年制作のオルセー美術館所蔵の「サン・ラザール駅」(写真上)に、モネが描いたガラス屋根と同じ風景がそのままにある。
勿論、ホームで待つ列車、蒸気も煙も吐いてないが。
ところで、SFCN・フランス国鉄、ルーアン右岸駅行きの発車ホーム、何時ものことながらなかなか発表しない。
お節介なまでの日本の鉄道会社に慣れた日本人、ペトロ ならずとも少し苛つかされるのでは?
カタリナ が、ハンチングが小粋な車掌さんに確かめ、列車(写真下)のシートに腰を落ち着けたのは、この駅に着いてから小半時も経っていた。