日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

最初の一枚 妙なる音楽

2006-01-28 15:27:15 | 日々・音楽・BOOK

今朝のモーニングミュージックは、シンディ・ローパーの「ザ・ボディ・アコースティック」だ。
いつもはエバンスとかキースのソロによって朝の光を味わうのだが、今朝はなんとしたことか、娘から借り出してきた,あの引っかかる声を聞きたくなった。
マネー・チェンジズ・エヴリシングがはじまる。カントリーの風が吹いてくるような妙に懐かしい歌声だ。アメリカの歌い手は何処かにカントリーの心を秘めているような気がする。
この声を迎えてコーヒーは、舌に引っかかる苦い`ブラジル・ブルボン・完熟セラード`にする。なんのこった、完熟とは!なんて思いながら。

マイク・モラスキーの「戦後日本のジャズ文化」を読んでから、音楽を文化史の中で聴いてみよう、まあ僕の視点で捉えてみようという気持ちが起きてきた。音楽がなくては生きていけない、といってみたくなるくらい生活の中で聴き続けている。といってもただ好きなだけなのだ、とすぐに予防線を張るのだけど。

ということで、僕の最初の一枚はナンだったかと考えている。

高校時代、中学生の妹の音楽の先生が秋葉原から部品を買ってきて、オーディオセットを造ってくれた。音楽が好きなのに、お金がなくて買えなかったのを見かねたのかもしれない。
そして買った最初の一枚は、SPの「こうもり序曲」(ヨハン・シュトラウス)だったと思う。捨てるはずはないのになぜか手元にないので演奏者がわからない。まだSPが現役の時代だったのだ。

LPの最初は「幻想交響曲」。シャルル・ミュンシュとボストン響だ。
今そのジャケットを見ながら上野一郎によるライナーを読んでいる。この頃のライナー・ノートは、ジャケットの裏に書かれている。誰の絵か、補修したセロテープだらけのこのシュールっぽいジャケットは、幻想交響曲と聞いただけで即座に思い浮かぶくらい僕に焼きついている。まだステレオではないその音と共に。
五十年近くになるのに・・・・

そしてどうしても書いておきたい2枚目。
カール・ベームとウイーンフィルのシューベルトの「未完成交響曲」。
冒頭の、朝、山々が少しずつ光を帯びてくる有様を描いているような弦のささやき、そして次ぎへ移るときのふっとする息遣い。ほんの瞬間のこの息遣いはこのベームの演奏にしかないもので、カラヤンをはじめどの指揮者を聴いてみても納得できない。僕はこの瞬間だけでベームを支持する。

何故こだわるかというと、実行委員長をやった高校の文化祭で「山々は・・・」で始まり、陽が沈むまでの詩を描き、それを漆黒の会場(講堂)で文学部の一年後輩の男性にスポットライトだけを当てて朗読させたのだ。未完成をバックに。息を呑んで聴いてくれた高校生たち・・・・・
僕は会場の最後部で懐中電灯を点滅させ、息遣いを指示した。つまりベームの未完成が隅から隅まで頭に入っていたのだ。
この僕の書いた詩とこのときの公演は、僕の仲間では伝説になっている。ガリ版刷りの詩はあっという間に売切れてしまった。この詩も手元にない。なくて幸いか、恥ずかしくて読めないかもしれないので。

JAZZの最初は「チコ・ハミルトン」だったが、これもなぜかジャケットがない。赤いバックのチコがいた様な気がする。
日本のジャズメンのレコードは笠井紀美子の「ONE FOR LADY」だ。マンではなくジャズウーメンか。
ライナーに `ビリーに捧ぐ マル・ウォルドロンと笠井紀美子` と書いてある。ケメコといわれて愛された笠井紀美子がなんとマル・ウォルドロンのピアノをバックにスタンダードを歌っている。アルバムの最後は「レフト・アローン」。このドュオを僕は銀座にあったJAZZクラブ・ジャンクで聴いている。あのときの興奮が蘇る。

音楽にも物語があるのだ。僕のね!

さてさていつの間にか流れる音、流れるなんてもんじゃないのだが、コルトレーンのワン・ダウン・ワン・ナップになっている。マッコイ・タイナーのピアノも凄いが、コルトレーンのほとばしるまさに戦いといえる音、負けないロイ・ヘインズのドラムス、最初の一枚を書いてきて気持ちが昂ぶっているので受け留められるのだ。
次は好きでたまらないディア・ロードを聴こう。新しいバージョンのシンディのヒット曲True Colorsも捨てがたいのだけど。

やはり最後はJAZZになるのか、僕は。



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2 コメント

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師の音楽記事において (xwing)
2006-01-30 00:16:04
TAROさんより先にコメントを書くのも気が引けますが、自分の音楽史を紐解くのは、大変ですね。JAZZは学生時代なのではっきりしているのですが。リー・モーガンを2枚、ジゴロとランプローラーでした。クラッシクは親が買った全集を聞いていた為、どれが最初と決められないのですが、サンサーンスの動物の謝肉祭ばかりかけていたらしいです。自分の音楽史を顧みるのも楽しいです。
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手がかり (penkou)
2006-01-30 13:57:25
映画や文学の中に取り上げられた建築をリスト化して、その時代を考えることは行われていますが、音楽と建築の関係についてはあまり論じられていないような気がしています。音楽は消えてしまうので。

ところが時代と音楽は切り離せないので、その時代の社会の中の建築を捉える時に、結構大切な要素になるような気もするのです。

JAZZだけでなく・・・といってもまあ軽いエッセイを書きながらなんとなく考えて行こうと思っているのですけどね。

とはいえ自分で初めて買ったレコード、或いはCDというのはその良い手がかりになるような気もするのです。結構覚えているのではないかしらん!
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