朝日新聞10月8日に記載された記事のタイトルは、リストではなくRANKINGである。
「後世に残したい西洋建築」の1位から20位までが表になって掲載され、5位までに写真があり、10位までには簡単な建築の紹介文が書かれている。
なるほどとも思うし、へー!と吐息が出るものもある。そして何よりもふーん!とうなったのは、その全てを僕は訪ねたことがあり、そのうちの幾つかは、改修工事中に見学をさせてもらったことのあることだ。
さらにランク外として建築名と所在する県名だけが書かれている建築も、全て見ているし、札幌の「サッポロファクトリーレンガ館」では、ビールを飲んだ。
それらの建築を案内してくれた人の顔や、出かけることになったその時の状況も浮かんでくる。小樽運河のように景観構成をしている製缶工場も見学させてもらったし、例のプレスカフェでは、一年に一回の訪問であっても、ターマス(マスター)に認知された常連さん(?)でもあるのだ。
リストをランク順に列記してみる。
(1)東京駅赤れんが駅舎(2)大浦天主堂(3)迎賓館赤坂離宮(4)小樽運河(5)札幌市時計台(6)大原美術館(7)旧岩崎庭園洋館(8)大阪市中央公会堂(9)琵琶湖疏水(10)奈良ホテル。
さて次の10選は。
(11)京都国立博物館(12)ニコライ堂(13)日本銀行本店本館(14)富士屋ホテル(15)北海道旧本庁舎
(16)函館ハリスト正教会復活聖堂(17)富岡製糸場(18)旧古河庭園洋館(19)東京国立博物館本館・表慶館(20)築地本願寺。
これらのリストは建築歴史の研究者や建築家が選んだものではなく、朝日新聞読者「アスパラクラブ」のウエブサイトによるアンケートによるもので、藤森照信さんの著作など参照して58の選択肢から一人7つまで選んでもらって集計したものだという。
58というリストの数(少ない)と西洋建築という言い方がちょっと気になる。
例えば熱海のブルーノ・タウトの設計した「日向別邸」はここで言う西洋建築ではないのかなど。だが建築の専門家でなく、一般人の人気リスト、そしてランキングだということを頭に入れて改めて眺めてみるとなかなか興味深い。藤森さんによれば、東京駅は復元工事が行われていて多くの人が見たことのある場所だからだろうという。2位の長崎の大浦天主堂は歴史ドラマの舞台になって知られた。
アンケートによれば「今に残る西洋建築には、近代化を経た強みと重みを感じる」「洋館の雰囲気が大好き、コスト重視の現代建築にはない魅力がある」との声が届いたという。
まあそうだろう。だから僕は、そうとは言えないいわゆるモダニズム建築の存在を伝えたいと思っているのだ。機能を重視し、市民のために安価で時代を切り開く技術にトライした建築家とつくった魅力的な建築を!
さて藤森さん自身のベスト5を尋ねたところ、(1)富岡製糸場(2)旧岩崎庭園洋館(3)神戸女学院(4)豊平館(5)万平館だそうだ。豊平館は札幌の中島公園の中にあり、建築学会全国大会の時に、建築歴史意匠委員会の懇親会を行ったことがある。藤森さんがこの5つを選んだということも面白い。
ちなみに21から25位までのリストは、東大本郷キャンパス、僕がビールを飲んだサッポロファクトリーレンガ館、日光金谷ホテル(泊まったことがある)、万平ホテル(コーヒーを飲んだことがある)、日本橋三越本店。
さて僕の5つ(順不同)を考えてみた。首相官邸、誠之堂、清風亭、旧東方文化学院東京研究所と、そしてあえて日向別邸を。
形や立場は違うがそのどれもに関わったからだ。
それにしてもやはり西洋建築という言い方は奇妙でもあり、面白いといえば面白い。どこかに皮肉っぽい響きも感じとれる。洋館でもなく西洋風建築でもなく日本に建った西洋建築。ところで日向別邸は、やはり西洋建築とは言わないだろうなあ!
<写真 迎賓館 1909年(明治42年)設計片山東熊 改修村野藤吾、平成の改修後国宝指定>
来年もターマスますたーにお会いして頂かなくては!(笑い)。
それは素晴らしい!忙中忙ありと拝察(笑)ところで北大の銀杏並木が色づくのはいつごろからでしたっけ。moroさん撮影のCDの写真が浮かび上がってきます。ターマスさんによろしくと!お伝えくださいナ。
それにしても・・・
私などこの記事に名前の出てくる中で観たのはたった7か所ほど。
迎賓館は抽選漏れ、日銀やニコライ堂は首都高を通る時などにチラ見する程度。
これじゃダメっすね(苦笑)
PS
penkou様
写真とお手紙ありがとう御座いました。
この場をお借りして御礼申し上げます。
それとついでにお願い(汗)
先日頂いた近美のチケット、もし可能でしたらあと数枚お譲り頂けますか? 会社の若手に近美を紹介(再認識?)しようかと・・・
仕事柄もありますが、たまたま機会があって西洋建築?を見る機会があったということだけで、へえ結構見ているもんだと思ったくらいなものです。役得ってのはあるような気がしますけど。でも僕の周りにいる近代建築史の研究者にとっては見る機会を得るのは当たり前のことなんでしょうね!
mさんには横浜案内をしてもらって参ったなあと感感じ入ったことを思い出します。近美OKです。ところで実家のある長崎の大浦天主堂はその昔見ていて(礼拝なども)、周辺が変わってしまい観光化されて駄目ですね。建物は変わらないのですが!