日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

建築と写真のポストモダン(Ⅰ) ジェンクスの「ポストモダニズムの建築言語」

2010-03-25 10:55:15 | 建築・風景

学生の好奇心が欠如していると大学の教師陣の嘆きを良く聞くが、それでも初めて建築に触れ、指導者の建築論考に刺激を受け、その後の建築人生に影響を若者が与えられるのはいつの時代であっても変わらないと思う。
僕の学んだ1950年代の末から60年代はモダニズム建築の全盛時代で、日本の伝統を伝える桂離宮は素晴らしく、それは現在(いま)に言う木造モダニズム、装飾に充ちたいわばキッチュな日光東照宮の建築はよろしくないとの講義を受けた。困ったことにそれが長い間僕の建築感の底に巣食い、漂っていた。

一回り以上も若いが親しい友人MOROさんはまだ純な学生時代、ポストモダンに夢中になっていた教授などの指導者の熱意にはまり込んだのだろう。無論受け入れられる感性あってのことなのだが、今でもその時代に建てられたいわゆるポストモダンといわれる建築にふれると胸が騒ぐようだ。

モダニズムにはDOCOMOMOやモダニズムだと騒ぐ僕がいるのでうらやましい、でもあっという間にその時代が消え去り、自身が影響を受けたポストモダンには援護者がいなくてかわいそうだなどとMOROさんは言う。実感だろうが、そういう彼のコトバの端々に`なげきっぽい`想いがあるのが興味深い。青春時代を抹殺されたような想いにも捉われるにからに違いない。指導者たるもの自身の及ぼした言動を振り返ってみてくださいな!ということもあって、ポストモダンを時代が変わった今、考えてみたいとづっと思っていた。

チャールズ・ジェンクスというアメリカの歴史学者がいて、「ポストモダニズムの建築言語」という著作を著した。
日本ではa+u(アーキテクチュア アンド アーバン)誌が竹山実の訳によって1978年10月臨時増刊号を発行したが、この本がポストモダン思潮の骨子となったといっても良いだろう。ジャンル分けされた進化の系統図が書かれていてこの建築思潮が理解しやすい。写真やスケッチも豊富で、僕たちの良く知っている日本の建築もこの流れの要として多数収録されている。

どの建築の通史も大方戦前で終わってしまうものだが、この著作を戦後も含めた世界の近現代建築通史というという見方をしても面白いかもしれない。
古書店に行ってもなかなか手に入れにくいが、ポストモダンに興味を持つ人の必読書だ。そしてなんてまあ!とうれしくなるのは、「ジェームス・ボンドとティファニー製のケース」と題して、円形水ベッドの上で戯れているショーン・コネリーが登場したりすることだ。コメントは`ショーン・コネリーの薄笑いは、この種のことにほぼ満ち足りてしまったことを暗示している`という諧謔に満ちたものだ。

ところで写真家ホンマタカシの「楽しい写真」(平凡社2009年6月刊)を読んでいたら、写真のモダニズムとポストモダンの相関関係があっけないくらい明快に語られていた。
この著作の副題は「よい子のための写真教室」。これを読む俺はよい子かよ!と憮然としたものだ。しかも論客でもある彼は1962年生まれ、なんと僕が大学を卒業した年ではないか。時経て子に教わるということか。
その彼の論考は、やはり、僕と同世代で現職の中平卓馬、森山大道や荒木経惟に多少の気使いもあるようで彼らを論じるときには、心なしか矛先が鈍くなるようにも思えるのだが、今僕が語りたいのは、モダニズムとポストモダンである。

ホンマタカシも触れているが、僕も引いた「広辞苑」にはこう書かれている。
「ポスト」それ以後、その次の意。―モダン。「建築にはじまり芸術一般やファッション・思想の領域で、近代主義を超えようとする傾向。脱近代」。

ではその「近代主義」とはなにか?と更に広辞苑を紐解いた。封建制に反対して近代的自我の確立など近代化を追及する立場→モダニズム、とある。成る程と納得するところもあるが、その「近代主義を超えようとする」ということはどういうことなのか、と際限がなくなる。(この項続く)


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今朝の読売朝刊 (m)
2010-03-25 12:31:11
【建築季評】(執筆は中川理氏だったかな)欄に坂倉準三氏作品の保存問題を取り上げ、モダニズム建築について書かれていた記事がありました。
冒頭の写真からして! (moro)
2010-03-25 18:34:10
胸躍るジェンクス著書の写真ではないですか!訳者の建築「2番館」も登場するのですよね。
 建築だけでも難しいのに、写真ですとか、その他の芸術における「モダニズム」と「ポストモダン」の関係を考え出したら、それこそ迷宮へ入ってしまいます。
 それにしてもモダニズムは近代追及なのでしょうか、脱近代なのでしょうか…。
コピーをお願いします (penkou)
2010-03-26 11:15:31
mさん
其の新聞のコピーを送ってくださいませんでしょうか。多分、伊賀上野市庁舎問題を事例として論じているのだと思うのですが・・・

MOROさん
続きを掲載してからコメントをお返しすることにします。迷宮入り!ウーン・・・
送ります。 (m)
2010-03-28 10:36:56
penkouさま
お察しのとおりです。 今日発送しまーす。

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