日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

憲法記念日に思う建築文化

2012-05-03 14:47:16 | 建築・風景

大型連休後半の初日、天候は大荒れだが今日5月3日は `憲法記念日` である。
「建築ジャーナル」誌に寄稿する沖縄の建築問題に関する一文をまとめるのだが、イチローの活躍があったとはいえマリナーズが惜敗して癪に障った。失投を見逃し難しい球に手を出して三振、フェンス際の球をグローブに当ててホームランにする外野手に下手ぴい!と腹の虫が納まらない。

荒めに挽いたブラジルをデロンギ(ドリップコーヒーメーカー)に入れて抽出する。口に含んで一息入れ、さて!と考えた。
まず、寄稿文と関連する(ブログの)前項に記載したシンポジウムでの僕の発言の一部(JIAの声明など)を下記に記載しておくことにした。沖縄の建築問題や中郵の保存活動、建築文化と政治家、それらが憲法記念日に繋がるからだ。その時のKEYWORDは「民意」である。

―JIA(日本建築家協会)関東甲信越支部保存問題委員会の声明― 2009年7月17日
私たち社団法人日本建築家協会関東甲信越支部保存問題委員会は、東京中央郵便局庁舎の部分保存という今般の決着に際し、以下3点を広く声明するものです。

1、建築文化の伝承と発展のためには、都市景観保全を目的とした外観保存のみでは不足であり、建築の価値の中核をなす内部空間を含めた一体性のある保存が本来的かつ不可欠である、ということを、強く訴えます。
2、今般の事例がモダニズム建築の保存における許容水準として扱われてしまうことの無いよう、保存の意義を自らその実践の方法とともに問い直し、モダニズム建築の持つ価値が広く理解・認識されることをめざして、最大の努力を行います。
3、吉田鉄郎がモダニズム建築の完成度をさらに深めた大阪中央郵便局庁舎の保存・活用が必ずや実現するよう、各分野の皆様との対話と協力を推進します。

この声明は、この委員会をサポートするための委員会OBによるWGの主査として、委員会やWGメンバーと綿密な打ち合わせをしながら取りまとめたのだが、声明を発表する背景として数項目を記載した。その一項の概要を書いておく。

「文化庁が重要文化財として検討に値するとの見解を表明し(国会で河村たかし議員の質問に対しての回答)、日本建築学界が「重要文化財の水準をはるかに超える価値がある」と表明した建築が、解体されたことに落胆と遺憾の意を述べ、『建築を次代へ継承することは、外観はもとより、何十万時間という人々の営みの歴史や記憶を留める内部空間も、一体性のあるかたちで活かしながら残すことだと考える』。その延長上で『建築文化が継承される』というものである。

つまり全容を現した東京中央郵便局の様は、建築文化を継承したとは言えず、新建築技術者集団の機関誌`建築と街づくり` 2011・4月号に寄稿した「東京中央郵便局庁舎の顛末」(超党派の国会議員と連携を取りながら保存活動をした『東京中央郵便局庁舎を重要文化財にする会』の活動報告文)の最後の一節、朝日新聞の取材を受けて伝えた2008年4月3日の夕刊の記事『外壁を申し訳程度に残して超高層化にしたら、日本の玄関として恥ずべき景観になる』に抄訳される。

4月28日の190人を超えたシンポジウムの聴衆(ことに次代を担う大勢の学生に)に述べた懸念「この庁舎の原型を知らない人がこの様を見て、こういうものだと思われるのは怖い」と述べたのはこういうことだからだ。
国会で郵政民営化問題が再燃した。政府主導に後戻りするが、建築文化がどこかに飛んでいって政治問題すり替わることを恐れる。
東京中郵を登録文化財に?馬鹿な。何をか言わんや、だ!

さて「憲法記念日」。
赤紙で召集された父をフィリピンで亡くした僕は、桜を観に、苦労した母を靖国神社に連れて行き涙する母を見て複雑な思いを抱いたことがある。僕は右翼でも左翼でもなくごくごく普通人だと思うものの、護憲派ではある。

今朝の新聞に各党の談話が小さく記載されているが、社民党と共産党のほかの党は全て改憲すべしと述べている。9条が課題であることは眼に見えている。しかし朝日新聞の12面「国際」での記事、「米法学者ら188カ国を分析」との記事で、最古の米国は時代遅れになったが、日本の憲法は3日「65歳」になるが、世界の最新版と比べても遜色がない、という記事に力を得た。
とはいえ、沖縄の「旧沖縄少年会館(久茂地公民館)の議会解体決議に対して耐震を含めて改修し、保存・活用を望む「新沖縄こども少年を守る会」の人々に、議会制民主主義に反すると述べる教育委員会や市長や議員連の思惑と憲法改定がダブって浮かんでくるのである。

「民意」と何ぞや?同時にシンポで述べた「建築は誰のものか」という命題と「市民とは何か」というこれも命題といいたくなる課題が浮かんでくるのだ。

<写真 本文とは関係が無いが 満開となって落下した椿。枯れたと懸念した`百日紅(さるすべり)に新芽が芽吹き、さつきが花開いた5月の一齣>