日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

沖縄文化紀行(Ⅱ-5)フクギの郷 備瀬

2007-03-08 11:49:31 | 沖縄考

今回の「風水の郷巡り」は、海洋博公園の先にある「備瀬」になった。
前年訪ねた屋部(やぶ)は正しく風水の郷で、フクギ並木の連なる郷ではあったが様々な形式の屏風(ヒンプン)を確認できた。
備瀬は研究者によって風水調査が終わっているという。期待したが少し思惑が違った。
→が描かれ、順路と記載された看板が辻々に建てられている。備瀬は沖縄の原風景フクギ並木の郷として知られている。明らかにフクギ並木を観光源として整備したようだ。防風林として植えられたがフクギが狭い路地の両側に聳え立ち、沖縄にしかない独特の風景となっている。並木の先が暗い闇になっていたり、光で輝いていたりする。屋部もそうだったが奥深いのだ。

備瀬は海に面している。別荘のようなセカンドハウスを建てる場所としてもとても魅力的な場所だ。海辺に、樹に結びつけたハンモックがあったりテラスのある家が建っている。土地の人ではない人たちに土地を解放したのだ。そこが屋部と違う。
拝所はあるが屏風のある住まいは少ない。石敢当もほとんど見られない。良くも悪くも街が生き延びるために、風水の郷ではなく観光を選んだのだろう。ふと思った。沖縄が培ってきた歴史の代わりざまを、僕たちは備瀬で垣間見ているのかもしれないと。

土地の三人の女の子が仲良く僕たちの歩く先々のフクギ並木を出たり入いったりしている。ふといなくなり、突然曲がった路地に現れる。そして僕たちを見てにこりと笑い合う。妖精のようだ。
写真を撮らせてくれる?と聞いたら、礼儀正しくはにかみながらもきっぱりと断られた。ふたことみこと言葉を交わしたがその様が可愛らしく、躾がしっかりしているとうれしくなる。これも備瀬か。

沖縄の海は魅力的だ。色が違う。珊瑚礁のかもし出す緑の色だ。砂浜にその珊瑚礁の残骸(?)と貝殻が呆れるほど散乱している。大の大人が眼を輝かせて貝殻を拾う。
それも備瀬だ。

フクギ並木の順路を外れた先に、ぽつんと木造の小さな店があった。赤く口紅を塗った背が高くやせていて何か怪しげなおばあさんが店に立っている。にこりと言うよりニヤリと笑った。手招きされたような気がした。白昼夢だ。
おびき出されるように店に向かった。何があるのだろう!
覗くと台の上に貝殻が並んでいた。思わず見とれる。妖しげな光を放つ螺鈿。妖しげ!良いではないか。ついつい買ってしまった。
今では僕の宝物みたいになっているこの貝の艶やかな光を見ると,あのおばあさんの真っ赤な口紅を思い出してしまう。どうしよう!