日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

旅 トルコ(1) イスタンブールへ

2006-10-21 18:54:18 | 旅 トルコ

飛行機が1時間ほど遅れ、朝の6時にイスタンブール・アタチュルク国際空港に着いた。
空港の両替所で一万円をトルコリラ(イエー・テー・レー)に換える。昨年の1月1日デノミが実施され、まだ1年と9ヶ月しかたっていないのにすっかり定着したようだ。デノミといわれても実感がないが、DOCOMOMO世界会議プロポーザルの後、一杯やった飲み屋で、鈴木博之教授が、この前トルコに来たときにあまった一万リラほどの札束を出して、これでホテルに一泊できるかもしれないと思ったら、なんと300円だと言われてがっくり来たと僕たちを笑わせたが、それがデノミなのだとなんとなく判ったような気がした。
ガイドブックにもデノミの記載があり、ユーロや米ドルが何処でも通用すると書かれているが、実は新リラ、イエー・テー・レーのほうがずっと使いやすい。

僕は外国に行くと市場やコンビニと共に、必ず現代美術館に行く。今の新しいその国の状況や人々の生活がわかるからだ。その楽しみのために旅をするようなものだ。

その現代美術館では、ユーロもドルも使えなかった。まあそれだけでなく、街中の屋台や観光客のほとんど行かない場所の小さな店を覗いたり、食べたり買ったりするのが楽しみなのだが、そこでは地元の人の使う通貨しか使えないのは考えればあたり前のことだ。それだけでなくタクシーをはじめとしたほとんど総ての乗り物が、イエー・テー・レーでないと使えない。国際都市とはいえそれも当前のことだ。
何故こんなことにこだわって書くかというと、日本では円をイエー・テー・レーに両替できない。わざわざ換金して持っていったユーロは一向に減らないのに、イエー・テー・レーがすぐなくなってしまうからだ。旅の初日、まだ旅感が戻らない。

アガサ・クリステイは旧市街にある終着駅シルケジでオリエント急行を降りると、金角湾をフェリーで渡り(今はガラタ橋が架かっている)、ホテル「ペラパレス」に逗留したという。
僕はタクシーで水道橋をくぐり、次々と現れるジャーミイ(モスク)をきょろきょろ見ながら、その「ペラパレス」に向かう。
7時半に先行した建築家篠田夫妻や渡邊さん(東海大助教授)、山名さん(理科大助教授)と一緒に朝飯を食うのだ。そしてここに泊まる。

旅にはハプニングが付き物だが、今回はなんと同行するはずだった藤本さんがこられなくなったという。それも羽田空港で約束の時間の15分前についたので、いる場所を携帯で伝えたら「いやねえ!」とあせっていて、そして困惑した声が伝わってきて、結局はトルコへ行けなかった。

一人旅。
僕も何回も外国に行っているが考えてみると一人旅は初めて。スケジュールは総て英語のわかる彼が組んでくれ、僕はただ付いていくつもりだったののに。彼は多分何にもわからないだろう僕を心配してくれ、ホテルでのバウチャー(利用券、これを出さないとホテル代の二重払いをする羽目になりかねない)提出のことや、トルコ航空のリコンファームが出来るかと、携帯電話で何度も念を押してくれる。

彼に総てを委ねたのには訳があって、数年前JIA(日本建築家協会)の大会で沖縄に一緒に行ったときの彼の感性や、面白いところを見つけ出す天性にすっかり惚れこんでいたからだ。
DOCOMOMOに選定した「聖クララ教会」は、彼に良い教会があると連れて行かれた途端、これだ!とアドレナリンが沸き起こり、写真を撮って委員会でプレゼンして選んだ。彼がいなかったら選べなかったかも知れない。彼に任せておけば総てうまくいく、と横着をするつもりだったのだ。

さて困った。いやなんとも心細いが仕方がない。飛行機の中であわててスケジュールを確認し、ガイドブックをめくって何処に行こうかと考え始めた。
でも考えてみると、僕の外国の旅は実は何時も一人になってしまう。写真を撮るので歩くペースが合わない。興味の対象も違う。結局晩飯を一緒に食う場所を決めての一人旅になるのだ。ずいぶん前のことになるが、10名を引き連れて行ったNYとワシントンでは,1対10ということになってしまった。でもここはトルコだからなあ!

僕が一人で来たので、待っていた4人がびっくりした。
タクシーは23イエー・テー・レー、約2100円。一人で飛行機に載り、タクシーにもちゃんと乗りしかも23リラとは(トルコ人はリラといっているようだ)。俺たちが乗ったタクシーより安いじゃあないか、しかしまあ、良くたどり着けたと見直された。格好の話題提供、でも何だか情けない。

<写真 オテル「ペラパレス」>