毎日の仕事なので調整に関しての話出せばいくらでもあります。
私にとってペン先調整は趣味の延長とか、好きでしているといったものではなく、生きていくための手段であり、唯一私が世の中の役に立てることなので、今の仕事が趣味の延長だと言われると少し違和感を憶えます。
そういうものなので、調整に使う道具も実用以外の何ものでもなく、特にルーペは調整を始めた時から使い続けている国産のものです。
某メーカーの万年筆工場で使っているもので、25倍のレンズは中央だけはっきり見える仕様になっています。
本当に何でもないルーペですが、もっと良いものを使いたいと思ったことがありませんでした。
仕事のコンディションが変わるのを無意識のうちに嫌がったのかもしれません。
最初はピントを合わせるのも難しかったルーペを今では目の一部のように無意識で使えるようになりました。
ペン先調整は、目の技術だと思っていますのでルーペは調整にとって最も大切な道具です。
小さなルーペからのぞいて見える光景はペン先の先端についているイリジュウムを中心に見ているわけですが、この形は本当に1本1本違っています。
工業製品である万年筆ですが、ペン先は手作業で調整されて出荷されるわけですので、それぞれ仕上がりが違って当然なのかもしれません。
こうやってペン先ばかり見てきて、書かずとも書き出しが出ない、引っ掛かるなどの症状が分かりますので、そういった現象が目に見えるものは直して店に並べます。
見慣れたルーペから見える景色には、いまだに感嘆と落胆があって感情を揺さぶられます。