元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

インクの色の迷宮

2008-06-12 | 仕事について
そのインクの色で書かれた文字を見るだけで、その人だと分かるということにとても憧れます。
なぜなら、その字を書いた人はその色のインクだけを使っていて、おそらく何本かあるはずの万年筆全てが同じ色のインクになっていると思うからで、そこには私たちがよく感じるインクの色に対する迷いがないからです。
自分の色はこれだと決めて、それだけを使い続けることのできる人をとても尊敬します。私などは人の書いたものを見て、その色がとても良く見えたりしています。
このインクをずっと使うと決めることもたまにあって、使っている全ての万年筆をその色に入れ替えたりしますが、すぐに飽きてしまい、違う色にしてしまったりしているうちに、全ての万年筆が違う色になってしまったりしています。
全てのペンに違う色が入っていることは不便この上なく、例えば手帳などは同じ色のインクで書きたいと思うのが人情なので、その色を入れたペンが近くにないと手帳を書くのも躊躇われたりします。
手紙や葉書も同様で、書く場所によって字幅を変えたいと思ったときにも不便になります。
それらの理由があって、全ての万年筆のインクの色を同じ色にしたいと思いました。その場合、私はお客様に手紙や葉書を書くことがよくあるので、適度にフォーマルで、長く使い続けるために好みに合っていないといけません。
当店オリジナルインク山野草は紫色ですが、落ち着いた色なのでちゃんと書きたい手紙にも使えます。手帳やノートに書いても少し個性があって、気に入って全ての万年筆を山野草に入れ替えてみました。と言いながら、いつまで続くやら。 https://www.p-n-m.net/contents/products/OK0014.html