扶桑往来記

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愛知県美術館『若冲と江戸絵画展』

2007年05月31日 | アート・文化

愛知県美術館で開催中の『若冲と江戸絵画展』に行ってきた。

若冲の発掘者、ジョー・プライス氏のコレクションである。
米国人の富豪が、伊藤若冲の「葡萄図」に魅せられて以降、江戸絵画を中心に集めたものだ。

愛知県美術館は名古屋市の栄にある愛知芸術文化センターの中、10Fにある。
当日券は1,200円。

このコレクションは、伊藤若冲のコレクションを中心として、江戸期の円山応挙や長沢芦雪、「奇想の系譜」に連なる曽我蕭白、琳派の酒井抱一、鈴木基一などを一堂に会した展示である。

要するにひとりの米国人の審美眼に適ったもののみがここにあるわけで突拍子もないものはここにはない。
よって、伊藤若冲を愛した人の趣味でその前後の時代の作品を眺めることができる。

そこそこの数のコレクションを通じてみると伊藤若冲という鬼才は決して突出しているわけではなく、日本画のある一点を極限まで突き詰めて突き抜けるとそうなったということが実感できる。
あの写実力は若冲だけのものではない。
例えば、虎を描いた図は今回いくつか展示があるが、毛並みの見事さは若冲よりも優れたものはある。


ただ、若冲の「猛虎図」はひときわ「かわいい」。
相国寺の若冲展にも墨絵の虎があったが、それのカラー版、肉球を舐める姿はいいようもなくかわいい、ネコである。
若冲の時代には生きた虎を観ることはかなわぬ故、虎の皮で想像するしかなく、よって毛皮では眼窩の部分がくりぬかれてしまうため目が異様に大きくなってしまう。

それも可愛さを産む所以であるが、「虎はネコ」、がわかっていないとこうは描けまい。

今回の展示の目玉は「鳥獣花木図屏風」である。展示替えのため、象のいる方の片方しかみることができなかった。
この図屏風、若冲のものかどうか物議を醸しているのだが、一目みると「ああこれは若冲ではないわ」という感じがどうしても残る。

細部の描写であるとか絵具の違いとか細かいことはどうでもよいのだが、若冲の絵から感じるオーラ、怨念といってもよいかもしれないがそれが感じられない。

また、他にも「伝○○」とあるものの中で明らかに「これは贋作ではないかな」と素人の私にも思われるものがある。
とはいえジョー・プライス氏のおかげで多くの若冲を今日観られることには感謝しかない。

なお、江戸期の日本画の中には、絵の具が退色して見る影もないものがある。
若冲がいかに質のよい画材を使っていたかもよくわかる。
そういうところでも楽しめるコレクションであった。


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