40回目は武四郎の3回目。
もう少し武四郎のことをやりたいのだが、結にした。
武四郎は上官と衝突して官を辞した。
その背景にはしょうもない権力争いがあった。
武四郎はアイヌの人権を重んじ、和人と仲良く北海道開発をすることが夢、しかし長官は江戸時代からしぶとく生き残った政商の賄賂に負けて邪魔な武四郎排除に動いたのである。
北海道の命名をしたところで武四郎のキャリアが終わった。
以後のセカンドライフは彼の終活であった。
武四郎はあちこち旅行に出かけた。
目的のひとつは天満信仰の復興、菅公ゆかりの地を選定して番号をふり双六を作った。
神社には鏡を奉納、自分の仕事である地図を裏面に刻んだりした。
おもしろいところでは三井寺に筆ならぬ「鍋」を奉納、鍋塚を作った。
この鍋、北海道探検時代に愛用した思い出の品という。
この時まで持っていた心がおもしろいではないか。
人生の最終局面に入ると悪友河鍋暁斎に自分を釈迦に模した「涅槃図」を書かせた。
そして一畳敷なる書斎を作ってそこで暮らした。
この建物、日本全国の神社仏閣などから古材を送ってもらい見事に部品として使っている。
寝転んで人生を振り返るにこの上ない妄想の場であろう。
不思議なことに自由の身になり生活費に困らぬ武四郎、明治になってから一度も北海道に行かなかった。
救えなかったアイヌの境遇をみて「あわせる顔がない」と思ったのではないかと考えている。