
本来パタピッは、写真やスタイル画、実物の服を元に操作していただくソフトですが、スタイルブックを部分的に有効利用する方法がありますので、ここでそれを紹介していきます。何回かに分けて説明します。活用方法を覚えてください。
でも、その前に・・・
パタピッ との違いを理解した上で利用することが、おしゃれでカッコいい服を作る秘訣ですから、その説明をします。今まで信じてきたことが覆されてショックを受けるかも知れませんが、これも 明日へのおしゃれの為と思って、どうぞ気持ち新たに読み進めてください。
従来の製図方法は、原型から引く方法や囲み製図、立体裁断などでした。パタピッ は、それらのかかえる多くの問題点を解決すべく開発を進めてきたソフトです。
パタピッ と従来式とでは製図構造はまったく異なりますので、一度頭を白紙にして「0」から受け入れていただくことを、各所でお願いしていますが、なかなか今までの製図方法から離れられない様子も見られます。或いは、切り替えに時間がかかるようでもあります。この切り替えがスムーズに進むと、一気に創造の面白さ楽しさはブレイクしますので、是非このページを通して、従来式の問題点と製図の正しい原則を、少しでも分かっていただけたらと思います。

まず、一番問題の多い囲み製図からお話しします。
囲み製図って何だか知ってますか?
右はワンピースの後ろ身頃の囲み製図です。原型を使わず、横は何センチ、縦は何センチと指示通りに線を引くと製図ができ上がるものです。右製図は9号サイズと13号サイズを例に寸法指示をしています。
・・・さて、この製図で作るとどうでしょう。製図の経験を重ねた方でしたら、この指示数値を見て様々な問題に気づきます。でも経験の浅い方は、分かりません。作ってみて初めて自分の身体に合うかどうかが分かります。
着用者は100人が100人皆体型が違います。特にワンピースの場合、バストとウエストとヒップの適度なゆとりと3点をバランスを取りながらきれいな線でつなげて製図を引かなければいけません。
大切なのはバストとウエストとヒップのつながりだけではありません。背丈や背肩幅、身体の厚みなど様々な箇所を加えると・・・バランスを保ちながら製図を引くという作業は、決して単純ではありません。
※ 「体型に合わせて製図すると返って格好が悪くなる」と考える方がいらっしゃいますが、これは、手書きで製図する場合にバランスを整えて製図することが難しく、結果として体型を強調してしまうからです。パタピッ製図はこの「バランス」を重要なポイントと捕らえて動きます。数着作るとこの「バランス」と「おしゃれ」が密接な関係にあることが分かるでしょう。
右のデザインを引くとしたら、正しい製図方法は100人分の数値指示がある訳です。・・・でもこれは、出版側にはとんでもなく大変なことで、また、そんな書物があっても、読む側としては複雑怪奇で作る気分も失せてしまうでしょう。
囲み製図は、誰でも簡単に引けるというプラス面で、近年様々なソーイング誌で掲載面積を広げてきました。難しい製図が簡単に引けるのなら、作ってみようかなと思います。楽しませることはとてもいいことで、簡単で楽しいなら書物も売れます。
でも、一着作り二着作りと体験してみるとどうも満足できません。
・・・「服は着れればいいんだ」という方達はこれも良しとするかも知れませんが、「ウインドーに飾ってあるあんな服を作りたい」とか「タレントのあの服ステキ!」と妥協を許さない人達には、作って満足できなければ次第に創作意欲は失せていきます。
しばらく前のこのパタピッ Magazineで「製図はとても繊細です」と書きましたが、それはこの意味です。繊細に製図を扱って初めて最高のおしゃれが叶うのです。
さて、上の製図は、雑誌ではモデルさんが着用しています。ここにその写真を載せることはできませんが、シルエットはきれいですから作ってみたいと読者は思うでしょう。でも、この製図で満足な仕上がりにならないのならどうすれば良いのでしょうか。
パタピッ 使い慣れている方なら、モデルさんの写真を見て(又は上の製図を見て)

セットを購入した方なら

・・・ということは、スタイルブックの写真や製図は、参考程度に見るだけ・・・ということになります。
「スタイルブックの製図を無視してパタピッで引いたらデザインが別物にならない?」と心配する方もいるでしょう。なかなか切り替えが進まないのはそんなところに原因があるようですね。「本が正しい」とインプットされてしまうとなかなか否定できないものです。失敗を繰り返しても、確固とした自信が自分にないとなかなか否定できないものです。
ここまでの説明で、いままで何着作ってもうまくいかず「どうして? 格好が悪いのはなぜ?」と悩んできた方には少し原因が見えてきたと思いますが、まだ製図経験が浅い方は、どうぞ一度両方の製図で洋服を作ってみて比較していただくとよく分かりますよ。
そんな訳で、サイズを打ち込むだけでパタピッは自動的にバランスを整えますから、手書きの苦労とは比較になりません。数秒後には画面に製図ができ上がります。このデザインについては、そのまま印刷して実物大型紙となります。
体型的に癖のある方は、前回までの「基本操作」の中でも説明したように、自分の体型にあった補正方法を覚えると、どのソフトを操作しても同じ補正を行えば着心地よく格好よく着ることができます。(デザインが複雑になると、操作も難しくなることもありますが、慣れるまで基本に準じたデザインを扱うのであれば難しくありません。)
100人100様の体型にバランスを整えて製図を仕上げるには、やはりコンピューターの計算能力は優れています。手書きでは多分同じ様な正確性とスピードは不可能でしょう。機械は利用できる部分はうまく利用し、そこに自分の個性を投入していきましょう。

9号サイズ(バスト82cm)で計算すると、右製図はバストで23cmのゆとりが入ります。これは、とてもゆったりしたブラウスか、或いはコートのゆとり分量に匹敵します。大きすぎますね。
読者は数値を信じて作りますから、作ってから補正すると、あちこちでバランスを崩しカッコ悪い服になります。
パタピッ ユーザーは、


前身頃のウエストダーツを消せば、デザインは非常に似たものになります。多分モデルさんが着用している服は、こちらのソフトで使用したゆとり分量に近いでしょう。背中をピンでつまんで着用しているかも知れませんね。
この製図も同じく、着用者の「背肩幅」や「背丈」「ヒップ」に関する表示も一律です。背肩幅が狭い人、広い人、ヒップの小さな人、大きな人など色々な方がいます。あちらこちらを修正すると、バランスが崩れ収拾が付かなくなるでしょう。ならば、パタピッで各人の「バスト」「背丈」「背肩幅」「ヒップ」を入力してパタピッに任せた方が良いのです。

これも同じく問題箇所が沢山見つかります。
この様なシンプルなタイトスカートは、流行が変わっても、ロングか膝丈かミニかの違いでいつの時代でも愛用される定番のスカートです。
なのになぜか、ソーイング雑誌ではゆとりが毎回違っていたりします。右の製図もヒップでは各2cmのゆとりの指示ですから合計ゆとりは8cmとなります。この分量はご高齢者が履くタイトスカートとほぼ同じです。
ダーツが各2本ずつで、ダーツの幅も決められた数値で表示されています。正式にはダーツはウエストとヒップの関係で本数と幅が決まります。ウエストが細くてヒップが大きな人、逆に、ウエストが太くてヒップとの差があまり無い人・・・などなど様々です。それによりダーツは2本だったり1本だったりします。ダーツのつまみ幅ももちろん変わります。前後中心からのダーツの位置も、ウエストサイズが60cmの人と80cmの人では異なります。一本目のダーツのつまみ幅と二本目のダーツのつまみ幅も同じはいけません。
かなり問題がある製図ですね。
スーツの下に履くタイトスカート、ジャケットの下に履くタイトスカート、ブラウスと組み合わせて履くタイトスカート・・・夏に履くか冬に履くかにより多少の分量差はありますが、格好が良くて履き心地が良くてバランスの取れたタイトスカートであれば、毎回変えて製図をする必要はないでしょう。

(スカートの補正も、方法を間違えると体型を強調してしまい、せっかくの格好の良いスカートを台無しにしてしまいますから、補正にも気をつけましょう。マニュアルは補正についても解説していますので、そちらの原則に基づいて行ってください。)
タイトスカートは「スカートの原型」とも言われます。原型からは様々なデザインが生まれます。パタピッMagazineではデザインの応用をたくさん載せています。この応用についても、大切なことは元のスカート製図が正しい製図であることです。元が格好が悪ければ、そこから応用したデザインもやはりそのまま引きずりますから格好は悪くなります。元がとても肝心です。


「おしゃれ」であることと「着用者が満足すること」はその4要素を満たせば当たり前に付いて来ることです。
囲み製図がたまたまぴったりだったという人もいらっしゃいます。でも、多くの囲み製図を見る限り、問題は山積し「満足」に値するものではありません。
スタイルブックを見る時は、まずモデルさんが着ている服を見て、次に製図を見て、パタピッ のどのソフトが適しているかを判断し、パタピッを呼び出してそこに数値を入れて使ってください。スタイルブックのゆとり分量や指示数値などは、特にデザインとして必要なもの意外は無視しましょう。シルエットを決めるベースの製図はパタピッの動くがままに任せて良いでしょう。新旧のパタピッMagazine をめくっていただくと、様々なデザイン例を載せていますので、その中に似たものがあればパタピッ Magazine を参考にしていただくのが良いでしょう。
上のAラインスカートや文頭のワンピースでは裾を開く寸法は参考にしても良いでしょう。パタピッの「裾開き寸法」の入力項目にその数値を打ち込むと良いのです。「前合わせ寸法」やボタンの位置なども参考にすると良いでしょう。
囲み製図は参考程度に利用し、実際の製図作業に関しては、適合するパタピッを呼び出して操作していただくことで明らかにおしゃれ度は増します。
ゆったりとくつろいで着る普段着や部屋着の場合は、囲み製図でも構わないと思います。でも、外出着やフォーマルでは、問題箇所が多くお勧めできません。
何が正しいか間違っているかではなく、「どちらが格好良いか」「どちらを満足するか」で選択していただければ良いと思います。洋裁人口が減った昨今では、救い上げる手段として囲み製図という手法で楽しませようと懸命ですが、あくまで素人に向けた製図方法です。ベターやベストを望むのなら少しランクを上げて製図を「繊細なもの」として扱ってみてはいかがでしょうか。
