八国山だより

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北方領土と対米従属

2006-09-20 05:55:04 | 外交
 北方領土に対する政府の対応について田中 宇氏の興味深い分析を見つけた。

多極化と日本(2)北方領土と対米従属

そのざっとした経緯を時系列で並べると次のようになる。

1951 サンフランシスコ講和条約署名
  →千島列島のソ連領への編入が容認  *ソ連は署名せず
  日本:歯舞・色丹は日本領にするようアメリカに依頼
  アメリカ:ヤルタ会談で連が参戦したら千島列島をソ連領にすることを容認して   いたため拒否
   この時点では「北方領土問題」の対象は、歯舞・色丹だけ

1955 ソ連、「日本と平和条約を結んだら歯舞・色丹を返しても良い」と提案
1956(7月) →日本:「歯舞・色丹だけでなく、国後・択捉も返してくれない限り、平        和条約は結べない」
               ↓
      交渉は妥結せず「ソ連は、日本と和平条約を締結したら歯舞・色丹を返      す」という表明を盛り込んだ日ソ共同声明だけを発表して終了                       ∥
       背景にアメリカの圧力
      「日本が国後・択捉の返還をあきらめて日ソ平和条約を結ぶのなら、ア       メリカも沖縄を日本に返還しないことにする」 ダレス国務長官

1991 ソ連崩壊

1993 日露首脳会談-日本側からの提案で平和条約を視野に入れた北方領土のついて   の話し合い
     日本の考え方= 4島返還
     ロシアの考え方 = 法と正義に基づいて解決されるべき
      法と正義 = サンフランシスコ講話条約 = 歯舞・色丹だけが対象
            ↓
           交渉不成立

2005 ロシア側から、北方領土問題を解決して日露関係を正常化しようとする動き
      背景:イラク泥沼化によるアメリカの外交的・軍事的覇権力の衰退
         ロシアのドイツ、中国など、他の大国との関係の緊密化を求め          る、「非米同盟」作り
    日本の対応:4島全部の返還を主張、小泉首相がプーチン大統領の招待を返     事を引き延ばした上で断る


 つまり、いつまでも冷戦状態を保とうとするアメリカ側の圧力、またアメリカの言うことに従っている方が自分の頭で考えなくてすみ、自らの力を維持できるという外務省の態度、それに政府が、この歴史的経緯からは歯舞・色丹しか返還交渉の対象とはなりえず、「国後・択捉の返還が絶望的なこと、ロシアとの関係を正常化すればエネルギー源の確保や北海道の経済再生などの利点が大きいことをきちんと説明しないでマスコミを動員して4島返還でなければならないという宣伝をして」、そんなものかと国民を騙して北方領土問題を解決しないでいる。その方が「ロシアと和解せずにすみ、日本が外交的にアメリカだけと緊密な関係であり続けられ、対米従属戦略を継続できるから」というのが田中宇氏の見解である。

 日本はこれまで石油資源のある中近東諸国と宗教的な面からも良好な関係を保ってきた。が、アメリカに従属してイラクの石油をアメリカに奪われ、またアメリカに従ってイラン制裁となればイランからの石油さえも失うことになる。ロシアの石油も関係が正常化していないため確保できない状況にある。つまりアメリカ従属で国益を損なっている。先月起きた貝殻島付近の海域でのロシア警備艇、カニ漁船を銃撃・拿捕、乗組員の射殺とい痛ましい事故も、外務省がアメリカのいいなりにならず歯舞・色丹を返還してもらっていれば起こりえなかった事件かもしれない。盛田さんを殺した陰の犯人は外務省・日本政府と言えないだろうか。日本の外務省は実はアメリカ国務省の一機関なのか。