チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「クリスマスの子守歌」

2009年12月13日 21時44分57秒 | chiuso着ぐるみ割り人形を噛む
NTT Communicationsの"ICT solution partner"の
TVCMの「HOPE篇」に出てるお婆さんの、あの
「ひと束」に束ねた髪、「膨らみ」のないこけた頬は、どう見ても
今年6月に亡くなった振付家の
故ピーナ・バウシュ(Bausch)女史である。
普通、放映中に死んだ人が出演してるCMは流さない。
不倫だけでタイガー・ウッズのCMはボツになったというのに。
小生意気なガキのほうのヴァージョンを流すか、
大企業なんだから新たにCMを作りなおすか、
どっちかにすればいいものを。ときに、新たといえば、
今年の漢字は「新」で、その理由が
オバマと民主党の新政権と新型インフルエンザ流行と
イチローの9年連続200本超え安打、だということである。
あまり気が利いてるとも思えない。ちなみに、私は
新型インフルエンザの予防接種はすでに終えてるが、
ブサイクなジジイの独り身の私は、どうせ
寂しい侘しい聖夜を向かえるのである。だから、
出かける予定もないので、
熱を出したり喉が痛くなったりしないように
ピリピリしてなくていい。

先月観にいったNBSのコジョカル女史客演の
「くるみ割り人形」で配られてたプログラムには、
我が国のチャイコフスキー研究の権威であらせられる
「音楽学者」森田稔大先生が書いてた。
「いたずらと夢に満ちた遊びの世界へと誘う
『くるみ割り人形』の音楽/
汲めども尽きぬその多彩な音色の秘密」というタイトルで。
<バレエ「くるみ割り人形」がオペラ「イオランタ」と
同時に初演されたことは案外知られていない>
んだそうである。どこでどういう対象に
どんな統計を採ったのか知らないが。そもそも、
バレエ関係者だってチャイコフスキーのチャの字も知らないし、
まして一般客がチャイコフスキーや「くるみ割り人形」のことなど
知ってるわけもない。がまぁ、それはともあれ、
森田大先生、これらバレエとオペラの開始の
こじんまりしたオーケストレイション、すなわち、
「イオランタ」の木管とホルンだけの開始は、
盲目のイオランタに何か欠けてるという意味で
弦を欠くという話とフルートのフラッター奏法を語る。が、
音色の秘密とやらは明かされない。そして、
バレエ「くるみ割り人形」を
「いたずらと夢」といった軽い感じに
印象づけるのである。たしかに、
クララの兄フリッツは悪戯をするが、それは
くるみ割り人形を壊さないと話にならない、
欠かせない要素である。しかし、
それ以外に悪戯などはない。それから、
夢であるが、これも確かに夢ではある。が、
大先生、なぜ夢なのかという根拠については触れない。
第8曲の「冬の樅の森」に使われてる主題が、「悲愴交響曲」同様に
甥のボブに捧げられた(こちらはまだ幼子のときだが)
自作ピアノ曲集「子供のためのアルバム」の
「甘い夢」であるから「夢」ということが判るのである。

「甘い夢」:****♪ドーーー・<レーーー・<ミーーー│ミーー>ラ・ラーーー・ーーーー♪

「樅の森」:****♪ファーーー・<ソーーー・<ラーーー│ラーー>レ・レーーー・ーーーー♪

この第8曲は内容とはまた別に、単純に
全15曲中のど真ん中に位置する。つまり、
このナンバーがキーポイントなのである。さて、
バレエ「くるみ割り人形」には第5曲で2度、第6曲前半に、
同一の「子守歌」が出てくる。
****♪【ソーーー・<ラーーー│>ソーーー・<ラーーー】│
  >ソー<ド>ラ・>ソー<ラ>♯ファ│<ソーーー・ーーー♪
この「子守歌」が最初に奏されるのはフルートによってである。
ベートーヴェンの「パストラル」の第2楽章終いに現れる3種の鳥のうちの、
ナッハティガル(ナイティンゲイル=夜啼き鶯=Соловей)がフルートによって
****♪【ソー・・ーー○○ソー・・ーー○○ソー│<ラー>ソー○○・<ラー>ソー】♪
と奏でられるのを本歌として敷いてるのである。ともあれ、
この「子守歌」の根幹をなす【ソ<ラ>ソ<ラ】という動機は、
「くるみ割り人形」の前に上演される「イオランタ」の中に
すでに出てくるのである。「イョランタ」の終い、
♪***ラ│>ソ>ミ・>ドー・・ー>ラ・<ド<ミ│<ソー・>ミー・・ーー・ー♪
という主題の裏で、
2番オーボエ、2番ホルン、1番トランペット、2番トロンボーンが刻むのは、
***♪【ソ○・ソ○・・<ラ○・ラ○│>ソ○・ソ○・・<ラ○・ラ○】♪
という「くるみ割り人形の子守歌」なのである。ところが、
盲目のイオランタを憩わせる「子守歌」の主題の後半、
***♪ラーーー・ラーーー│>♯ソーーー・>ミーーー│
  <ドーーー・ドーーー│>シーーー・>ミーーー♪
は、「イオランタ」の終曲の主題の後半として出てくる。
♪***ラ│>ソ>ミ・>ドー・・ー>ラ・<ド<ミ│<ソー・>ミー・・ーー・ー、
  <ラ│>ソ>ミ・>ドー・・ー>ラ・<ド<ミ│<ソー・ーー・・ーー・ーー♪
のあと、
***♪ラーーー・ラーラー・・>♯ソーーー・>ミーーー│
  <ドーーー・ドーーー・・>シーーー・>ミーーー♪
しかし、もはや目が見えるようになったイオランタ姫からは、
別の【ソ<ラ>ソ<ラ】という「子守歌」が、
クララ(月の明かり)へ伝えられてるのである。

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