Paseo ウォッチング
『月刊パセオフラメンコ2006年6月号』
最初にお断りしておくが、この表紙の人物は私ではない。
よーく観ていただきたい。あのスーパースター、ホアキン・コルテスである。(撮影は高瀬友孝さん)
不可解なことに「ぜひ社長を表紙に」との声は、この22年間一度もあがったことがない。たぶんギャラが心配なのだろう。
編集部よ、ギャラの多少にこだわるよーな、そんなシミッたれたオレではねーぞ。遠慮なくソーダンに来んかいっ。
それにしてもホアキンとこの私、ルックスや才能などを除けば、瓜二つと云えないこともない。
ホアキン恐るべし、である。(あわわ)
さて、この20日に発売となるパセオフラメンコ最新号である。債務責任者の特権を行使し、中身がまっ白けでないことをお祈りしつつ、早速これをめくってみようか。
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ふーっ……いや驚いた。今月はどこもかしこも面白えのだ。
で、かなり迷ったのだが、私のイチ押しは、特集『フラメンコボディ2006夏』に落ち着いた。
「鍛えたカラダに、アルテは宿る」とコンセプトはかなりベタベタだが、ラインナップは強烈にして実用性保存性は高いぞ。
◆ホアキン・コルテス/衣裳を脱ぎ捨てた、生身の身体
◆メルセデス・ルイス/いつまでも踊り続けたい
◆小林伴子のフラメンコボディ再発見レッスン/身体表現のボキャブラリーを広げよう
◆私のボディトレーニング/後藤なほこ、杉本明美
◆教育学博士・水村真由美/バイラオーラの身体づくりと栄養学を科学する
んじゃその特集から、オヨッと引っ張られた箇所をほんのちょっとだけ抜粋。
[ホアキン・コルテス/写真提供:ホアキン・コルテス・カンパニー]
人間は、裸になって初めて、その身体を意識するものだ。
裸で鏡の前に立ち、両腕をあげて、息を吸ったり吐いたりすると、筋肉の動きが見える。
舞踊の振付とは、人間が、生きている証として生み出す身体の動きを、誇張したり、整理したりして作り上げていくものではないか。
知性のハードパンチャー東敬子(alma100)さんのホアキン記事導入にいきなりとっ捕まった。踏み込み鋭く「衣裳を脱ぎ捨てた生身の身体」に迫る名文である。で、もうひとつはコレ。
[メルセデス・ルイス/写真:高瀬友孝]
―――「最盛期の身体が欲しい。精神的に成長した今、昔の身体で踊ったらどんなに素晴らしいか」と言った、有名なバレエ・ダンサーがいますが……。
というインタビュアー青柳裕久さんのきわどい突っ込みに、
そのダンサーが言ったことは、フラメンコの場合には当てはまらないと思うわ。年齢を重ねるほど、踊るのはたいへんになるけど、フラメンコの場合、ワインと同じで、歳とともに成熟していくと思うの。
と、しなやかに切り返すメルセデスはとっても美しい!
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さらに今月は、注目コラムを二つ観てみよう。
人気連載の『がんばれフラメンコ留学生!/天野里絵』。
元フラメンコ留学生。それがいつしか、セビージャでスペイン人の夫と“ボデガ・シグロⅩⅧ”というお店を営む身に……という天野さんのコラムには、毎度面白いだけではなく、人生を明るく逞しく生き抜くヒントがいっぱいだ。
んで、今回のお題は『結婚か、フラメンコか……』という切実なテーマ。スパッとさわやか、彼女の結論は今回もチョー快感!
標的を女から男にチェンジし、待望の再スタートを切った『西班牙国 現代男性観察記/小林由季』。
スペインの衣食住など生活密着テーマを得意とする小林さんだが、この人の切り口は鋭いぞー。臨場感あふれるその明るく知的な突っ込みからは“いまのスペイン”が実に活きいきと浮かび上がってくるのだ。レッスンあとのコーヒーブレークは、これら面白コラムでぐぐっとエネルギー補給されたし。
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炎のライター中谷伸一さんによる『Vivo Con FLAMENCO/北原志穂』を筆頭に、良かった記事を全部あげるとキリがないので今回はここまで。
そのトータルの出来映えたるや、もしも私がこんなにも素晴らしいフラメンコ誌を発行する出版社の社長だったなら、思わず自分のブログで自画自賛するような醜態を演じてしまうところではないか?などというアホな心配までしちまうほどであったとさ。
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