カマロン慕情 ②
「カマロン!」「カマロン!」と背中を突き刺すような突然の大声に、カマロン・デ・ラ・イスラこと、わたくし007ジェームス・ボンドは、意を決して背後の敵を振り向く。
そこには、熊のように大きな図体で道ばたにへたり込んでしまった犬に向かって、腹立たしげに「カマーン!」「カマーン!」と大声で叱りつける、ご近所にお住まいらしいテリー・サバラス風の外人さんの姿があった…………とさ。
…………。こうして本日最初のピンチを切り抜けた私は、極度の空腹をおぼえ、代々木上原ホーム下の“なか卯”に飛び込み、ビーフカレーと小鉢うどんを食いながら、これから出かける新春ときめきの散歩プランに没入するのであった。
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幸福な一日の、そのオープニングを飾るカマロンの『カジェ・レアル』は、その日の私の気分を察するためのバロメーターでもある。
そのタンギージョにポジティブに反応する日は、まったく未知の探検コースを、あるいは、距離的には比較的ハードな多摩川、江戸川、荒川などの川沿いコースを選択することが多い。
そのBGMはフラメンコをベースに、幕間にジャズを聴くパターンとなる。
逆にややネガティブな場合は、駒込の六義園、小石川の後楽園、向島の百花園など勝手知ったるわが家の庭園をブラつきながら、落語を中心に、合間にバッハ・モーツァルトを聴くことが多い。
ただ、散歩の途中で気分が変わる場合も多いので、24枚入る散歩用のCDケースには、どんな気分やコースにも対応できるラインアップが、前の晩から周到に用意されている。
フラメンコ6枚、クラシック6枚、落語6枚、ジャズ3枚、懐かしの70年代歌謡(または小林旭)3枚、というのが標準装備だ。
[ある日の標準装備]
必携アイテムとしては、冒頭カマロンの『カジェ・レアル』、桂枝雀の『寝床』、パブロ・カザルスの『バッハ/無伴奏チェロ組曲』、おなじみマイテの『愛のあるところ』。
そして、最後に忘れてはならない一枚が……
(つづく)
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