歩きたいだけ
私は歩き続けていきたいだけ。
雨が走るように、川が海に流れるように……
『パコ・デ・ルシア/歩きたいだけ』
polygram 1981年
兄ぺぺ・デ・ルシアが唄うタンゴスの名曲『ソロ・キエロ・カミナール(道)』の一節。
抜群のノリ、そして、どーしてもご一緒に唄いたくなってしまう懐かしいメロディライン。
“フラメンコギターの神”と崇められたパコ・デ・ルシアが、「片手に伝統、片手に革新」を旗印に国際音楽シーンで異種格闘技的に暴れまくっていた頃(1981年)の録音だ。のちのセクステットの原型もここに見られる。
毎日のように聴いていた。正座かなんかで。
したい放題に暮らしていた当時26歳の私が感じた「驚き」「憧れ」、そして……「あせり」。
良し悪しはともかく、若い「あせり」がその三年後にパセオを創刊させた。
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熱い夏が去り、いよいよ天高くしゃちょ肥ゆる秋の到来。
パコ・デ・ルシアのギターとともに、さわやかな秋のアイレに包まれた街々を歩きまわることは、慎ましやかな私にとっての決して小さくはないよろこびだ。
そうして今朝もこのアルバムを聴いたが、もぎたての「驚き」「憧れ」は25年前と同様に新鮮だった。
では、残る「あせり」もそのままか?
……いや、ちょっと変わったかも。
その半分は磨きのかかった「やけくそ」に、もう半分は「ま、コツコツ行こーか」みたいな比較的明るいメロディに変わったかもしれない。
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