山吹の里
七重八重 花は咲けども山吹の
みの一つだになきぞかなしき
[山吹の里の碑]
パセオから歩いて五分、面影橋のたもとにこんな碑がある。
1457年に江戸城を築いた江戸っ子に大人気の名将、大田道灌のあの有名な山吹伝説にちなむモニュメントだ。
そう、ここらあたりがあの格調高き駄ジャレ伝説発祥の舞台だったというわけだ。
どうだ、すげえだろー、
って斜体をかけて云うほどでもないが。
この伝説から人気落語『道灌(どーかん)』も生まれた。
小学生時分の私がもっとも熱中した話のひとつである。
例によって、ご隠居から(山吹伝説の)ウンチクを仕入れた八っつぁんが、知ったかぶりを披露しようとしてマヌケに失敗にしてしまうという定型的なお話である。
それに笑いころげて育った私が、まさか、50で始めたこのブログの失敗などから八っつぁんと同じ運命をたどることになろうとは、当時小学生の私は知るよしもない。
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ここ面影橋は、気分転換にご近所を30分ばかりぶらつく私のお気に入り散歩コースの中ほどにある。
そのたんびに目に飛び込んでくるのが山吹の里の碑であり、そのたんびに私は落語『道灌』を思い起こすことになる。
よって、私の脳裏では年間100回あまりこの『道灌』が演じられていることになる。こうした地道なイメトレの積み上げによって、失敗(いや、成功の素だった)の布石は確実に築かれてゆくのだ。
[面影橋]
さて残念なことに、この“山吹の里”の本当の所在地については諸説ある。パセオのご近所に確定されたわけではないのだ。
(1)東京都豊島区の高田(ご近所)
(2)東京都荒川区の町屋
(3)神奈川県横浜市の六浦
(4)埼玉県入間郡の越生町
代表的なのはこの4ケ所らしいが、(4)越生町には3000本の山吹の花が咲く“山吹の里歴史公園”という本格的なものがあり、これは県指定の旧跡あつかいになっている。敵は本気だ。
ご近所の肩を持ちたくなるのが人情であるからして、それぞれが本家を主張したい気持ちは痛いほどよーくわかる。
それには私もドーカンなのである。
それぞれがドーカンがえようと自由なのである。
そこんところ、ドーカンよろしく!
ということで、本日もまた「実のひとつだに無きぞ哀しき」私のブログの歴史はさらに1頁追加されたのであった。
[都電荒川線・面影橋駅]