フラメンコ超緩色系

月刊パセオフラメンコの社長ブログ

池上の梅園 [048]

2006年03月02日 | 四季折々

 

        池上の梅園 


        


        「池波の梅安」ではない。

       「池上の梅園」である。

          
 


 どーどす。なかなかの景観でしょう。

 この華やかな風情といっぱいの梅の香りに誘われて、ほとんど毎年のようにここ“池上梅園”を訪れる。
 湯島天神とはまた異なる情緒が楽しめる梅のパラダイスなのである。


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 あの力道山が永眠する池上本門寺のちょい西にある、この意外と知られてないナイスな梅園の、その実力はめっちゃ高い。
 梅の本数は約370本だそうだ。多けりゃいいってもんではないが、この梅園は手入れが行き届いているので、冒頭写真のごとく華麗なスケールに盛り上がれる。

 一方、梅の木がさまざまに配置される各スポットでは繊細な風情も楽しめるという、二重のお楽しみが約束されているのだ。

 太っ腹の民間人が「庭園にして後世に残す」ことを条件に大田区にタダでくれてやったのが、この梅園の始まりだという。
 粋である。ウメー考えである。
 開園は1978年だから、パセオ(1984年~)とはそれほど年は離れていない。六つ違いの姉さんだ。


     


 予報通り雨もあがったので、今朝は時すぎに家を出て、開園(時)直後に到着する。
 五反田から池上線に揺られて「池上駅」で下車。駅からゆっくり歩いて15分くらいか。
 入場料は100円だ。安すぎるぞー、大丈夫かあ、と云いたくなる。いいものは高くったっていいんだぜ。
 
受付に尋ねると、今月10日くらいまでは持ちそーとのことなので(三月は無休)ぶらっと出掛けてみるのもいいぞ。

 休日はそれなりに混雑するが、平日はさすがに見物客もまばらなので、我がまま放題この美しい梅を満喫できるのがうれしい。
 オバさん客が多く、オジさんはほとんど私ひとりだ。どー見ても私はサラリーマンではないし、またオバサンでもない。
 好意的に見てもらったところで職にありつけない壮年ニートが暇つぶしに梅と戯れるの図、であろうと思うが、その分私のアクションは自由度を増すのだ。

 あっちでくんくん、こっちでくんくん。そっちでシーシー、ってそれはさすがにやらない。
 香りに酔っては引いて眺める。引いて眺めては香りに酔う。
 ヒット・アンド・ウメェー戦法だ。


     


 さて、BGMについては昨夜から秘策を練っていた。
 おとつい湯島天神のモーツァルトとは打って変わって、ここではフラメンコである。
 桜の散り際の夕暮れどきに聴くマイテ・マルティンとか、朝陽のバラ園で聴くエストレージャ・モレンテとか、花見にベストマッチするフラメンコは意外と多いのだ。


                     
       『カルメン・リナーレス/花束』
       (UNIVERSAL MUSIC SPAIN2001年)


 そう、本日のメニューはあのカルメン・リナーレスである。

 昔はあまり興味の持てなかった歌い手だが、この『花束』によって彼女に対する私の評価はガラッと変わった。
 匂ひ立つような芳醇な味わいと、控え目にして芯のある求心性は、50歳を超えた彼女が咲かせた花も実もある大輪だった。
 ヘラルド・ヌニェスのセンス抜群のギターや、パブロ・マルティンの絶妙なコントラバスを抜きには語れない名盤だが、しっとりと薫り高いこの風情はまさしくリナーレスだけの世界だ。


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 へへっ、案の定ベストマッチだぜ。
 気をそらさずにじっくりと気分を盛り立ててくれるカンテが、梅の姿と香りにぴたりシンクロする。その相乗効果的快感に、しばし私はぼんやり立ち尽くす。
 視覚と嗅覚と聴覚は、私の中心でともに手をとり歓喜の舞いに没入する。