フラメンコ超緩色系

月刊パセオフラメンコの社長ブログ

湯島の白梅 [047]

2006年02月28日 | 四季折々



           湯島の白梅

 

         
               [湯島の白梅] 


 「梅は、観るというより嗅ぐものですね」

 尊敬する後輩にそう教えてもらったのは十余年前のことだ。

 およそひと月後に絢爛豪華に咲き乱れる桜に比べ、梅というのはいかにも地味だなと思っていた私は、早速それをクンクン嗅いでみたところ、その香りのあまりのすばらしさに思わず驚嘆したことをつい十余年前のことのように思い出す。

 「いや、まったく、梅はかぐもんだー!」

 天然の恵みとも云うべきその芳香は、人工のいわゆる香水的なものとは対極にある自然さで、私たちの嗅覚に淡い快感をもたらす。淡きがゆえに胸に染みいる。まるで初恋のように。

 その香りの真髄にめざめてこそ、控えめで楚々とした梅のたたずまいの本質的な美しさが見えてくる。そんな仕組みだったわけだ。
 以来私の年中行事ベスト10に、この“梅見嗅ぎ”は見事上位ランクインを果たしたのであった。


    


 さて江戸っ子の場合、とりあえずは湯島の白梅である。

 家からは千代田線で一本、30分もあれば到着する。
 仕事は土日に片づけて、空いてる平日に出掛けるのが常だ。いっぱいの人混みの中で、いいオヤジが梅をくんくん嗅いでる光景はやはりちょっと怖い。

 昨晩(渋谷オーチャード)のエバの余韻はまだ消えていない。そのせいもあるのだろう。満開はおそらく来週あたりだろうが、待ち切れずにやってきた。
 ちなみにゴールデン・ハーフが復活したわけではない。


       


 

 朝一番でここ湯島天神に駆けつけ、たっぷり二時間、超ゴージャスなひとときを過ごす。


   


 湯島天神の梅の本数は約300本、うち九割が白梅だ。
 う~ん、今年もがんばってるなー。いー香りだ。

 今季梅を見たり嗅いだりするご予定のない方には、せめてものピンボケ写真をお届けしたい。
 梅酒でも飲みながら見てもらうと、意外とそれなりだぞ。


      
                 [名高いしだれ梅]

      
      
                    [ん、犬みてーだ]

 

 湯島の白梅には、意外にもモーツァルトがよく似合う。
 そんなわけで、今日のBGMは発売されたばかりのミハイル・プレトニョフ(ピアニスト/指揮者/作曲家)によるピアノソナタ集だ。モーツァルト・イヤー(生誕250年)にふさわしいチョー絶品である。

                       
  『ミハイル・プレトニョフ/モーツァルト:ピアノソナタ集』
               (ユニバーサル/2005年録音)


 かなり以前に録音したピアノ協奏曲は、知的な構築性を求めて完璧なテクニックで押しまくるような感があったが、このピアノソロではまろやかにして自由奔放な歌心が前面に出て、まるで春の到来に先んじる湯島の白梅の心意気にベストマッチするような風情じゃないか、と云ったら絶対に過言であろう。
 みんな知ってるK.331のトルコ行進曲も、誰もやらなかった(やれなかった?)大胆かつリリカルな歌いまわしで、ほろ酔い気分にさせてくれるような名演であることだけは断言しよう。


 さてと。ここらで朝も早よから一杯やりてえところだが、午後からは大仕事が待っている。
 ま、仕事あっての花見である。花見あっての仕事である。どっちかよくわからんが、お名残惜しくも本日はここまでだ。
 そのかわりと云っちゃなんだが、後日もっとタップリしたスケジュールで、あの華麗なる池上梅園に出掛ける予定だ。



          

 「梅酔いのひいてどーする恋みくじ」