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振動板の軽量化について(トゥイーター編)2

2008年02月03日 00時28分35秒 | オーディオ





今日は昨日に引き続きトゥイーターの振動板の軽量化についてです。

ちょっと順番が逆になってしまいましたが、私がアルミで20ミクロンというような極端に薄い材料を使うようになった事には、前回お話したMさんとのやり取りが非常に大きく関係しています。ソニーのSS-A5の商品化での振動板の軽量化の開発秘話は、ウーファーだけではなかったのです。

当時ソニーでは研究所が中心となって味の素と共同でバイオセルロース(以下BC)という新素材を開発していました。この素材は、あるバクテリアが出す排出分(早い話がウンチですね)を振動板にしようという非常にユニークなもので、本当に最先端の研究だったと思います。このBCは非常に剛性が高く、とにかく軽量な振動板ができることが特徴でした。そこで研究所では超軽量という特徴を生かして、先ずヘッドホン用の振動板として製品化を進めていったのです。

ヘッドホンの開発がうまくいった後、我々スピーカーグループにも研究所からこのBCについての提案があり、私もいろいろと評価をしました。ところが、物性は非常に良くスピーカーとしての周波数特性も金属振動板に比べて良くても、何故か音質的には心に響くものがなく、なかなか採用までいかない日々が続いていたのです。この時の振動板サンプルは、アルミと同等の強度になるように重量的にもほぼ近い(つまり重い)ものでした。

ちょうどそのころ私はMさんとのウーファー振動板の軽量化トライについての衝撃的な体験があり、トゥイーターで少し行き詰っていた私は一度ダメモトでこのヘッドホン用のBCをそのままトゥイーターに使ってみようと考えたのです。それまでの私なら決して考えないことでした。もちろん最初は研究所の連中も、ヘッドホン用の非常に薄い板厚のBCがトゥイーターで使えるはずはないと言っていましたが、とにかくテストだけやってみようということで試作を行ったのです。

結果は、これまた我々の予想を大きく裏切るもので、本当に今まで聴いたことが無いような自然で音離れの良いものでした。最初に出た音を聴いたときのMさんの顔は今でも忘れられません。もちろん板厚が極端に薄いので強度は弱く、歪特性はあまり良くは無かったのですが、そんな事を忘れさせてくれるような音質でした。この子は絶対ものになると・・・・。

ずいぶん昔の話なので、具体的な重量ははっきりと覚えていないのですが、振動板重量で当時標準で使っていたアルミに比べ半分以下だったと思います。その後このトゥイーターを完成させるため、ボイスコイルとの接着材を新たに開発したり、振動板へ塗布する特殊なダンプ材も開発を行い、当時のトゥイーターとしては本当にユニークなものが開発できたと自負しています。

余談ですが、このBC振動板を採用したSS-A5は、ソニーの商品導入戦略の一環で一切技術的な内容を公表せずとにかく音を聴いてください、というソフト戦略を取ったため、その画期的な技術内容の割りに大きく報道されなかったのは皮肉な感じでした。実はBCの振動板はとてつもなく高価で、本当に戦略的な価格でSS-A5を発売したのですが、内容を知らされていないマスコミからはpoor man's Harbeth(貧乏人用のハーベス)などと言われたものです。このハーベスというのは、当時非常に評価の高かったヨーロッパの高級スピーカーです。まぁ結果的にはSS-A5は、ソニー初のベストバイコンポを受賞できたので、商品としては成功だったと思いますが。

実はこのモデルの開発時に、このBCでの結果を踏まえ、アルミではどこまで軽量化できるかも確認を行っていたのです。当時このアルミでのテストはあくまで参考程度の確認だったため仮型で行いましたが、15ミクロンくらいまでなら何とかなるという印象でした。たださすがに15ミクロンとなると、トゥイーターの量産工程での歩留まりが極端に悪くなることが予想されたため、現実的には20ミクロンくらいが良いのではというのが私の結論でした。

そしてこの時の経験が、今回のPARC AudioのDCU-T112Aやソニーの業務用コンプレッションドライバー(SUP-T11)、ウルトラハイトゥイーター(SUP-T21G)の商品化につながっているのです。特にSUP-T11では、従来のアルミ75ミクロンに比べほぼ半分の40ミクロンという超軽量振動板を採用し、特殊な構造(ソニーで特許取得)と併用することでΦ100という大口径振動板でありながら24kHzまでほぼフラットな特性を実現しています。このモデルは残念ながら既に製造中止となっていますが、従来のコンプレッションドライバーでは表現できないような繊細な中高域を再現することができ、レコーディングスタジオやハイエンドPA等で愛用されていました。

ソニーのSUP-T21Gは既に生産中止となりましたが、当社のGSU-UH1として改良版が現在も販売されています。このウルトラハイトゥイーターは6ミクロンという超軽量アルミ振動板を採用し、100kHz,100dB/1m/1W を再生でき、従来のスーパートゥイーターでは得られなかった新たな音の世界を再現することができます。


今回商品化したPARC AudioのDCU-T112Aでも、従来のアルミ振動板で使われている35~40ミクロンに比べほぼ半分の20ミクロンを採用していますので、その音質はやはり今までのハードドームとは一味違うものとなっています。個人的には、私はこのアルミ20ミクロンはハードドームではなく、セミハードドームという領域に入っているのではないかと考えています。つまりよく言えば、ソフトドームとハードドームのいいとこ取りをしたような感じではないかと・・・・。 是非皆さんにもこの超軽量化ドームトゥイーターやウルトラハイトゥイーターの音の世界を聴いていただければと思います。

 

 


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