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エッジについて

2009年09月29日 23時58分13秒 | オーディオ



こんばんは。今日はブログのコメント欄で話題となったエッジについてお話ししたいと思います。今回に限ったことではないですが、音の印象など主観的な内容で異論がおありの方はスルーしてくださいませ。

先ずエッジの機能とは何かについてです。

1)コーン紙などの振動板を支えるサスペンション
 これはエッジの一番基本的なことですね。通常コーンタイプのユニットでは、エッジとダンパーによってボイスコイル・振動板を支えています。もちろん支えるだけでなく、ボイスコイルが狭い磁気ギャップ部をちゃんと接触せずに前後に動けるようにセンタリング(中心を保持する)機能も果たしています。

2)振動板への制振効果
 コーン振動板は中域以上では必ず分割振動(高い周波数にコーンが追従できなくなり、変形しながら振動すること)を起こしますが、エッジにはそれを抑制する制振効果があります。

3)エアーシールド
 コーンが前後に振動する時、スピーカーユニットの背面の空気が前面に漏れないようにしないと、音圧が一部キャンセルされて特性が大きく乱れることになります。もちろん、空気が漏れるので低音も出にくくなります。エッジはその空気の漏れを防ぐ機能があります。

4)振動板の一部としての機能
 これは意外に知られていませんが、エッジ自体も振動するので当然そこからは音が出ています。またエッジは見た目ではコーンに比べ小さく感じますが、外径部にあるため実は面積的には意外に大きく、エッジ自身の音色もユニットの音色に非常に影響を与えます。


ここで重要なことは、2)は別として、その他の機能は相反する関係にあるということです。これがユニット設計者にとっては非常にやっかいなんですね。例えば、サスペンションとしての機能を重視して強度や弾性の高い素材を使うと、それらは一般に制振効果が弱くなり、中高域に大きなピークが出来たり、音に癖が出たりします。これを車に例えると、ハンドリングを重視したスポーツサスペンションの車は、運動性能は良い反面、乗り心地が硬くなるというようなことがありますね。

逆の例で言えば、制振性の最も高いゴムエッジは特性のピークは出にくい反面、サスペンションとしての機能は弱いためコーンがローリングしやすくなり、それを防ぐために厚くすると重くなってしまい、音が鈍くなったりすることもあります。

ここで代表的な素材である布、ウレタン、ゴムの特徴について私の印象を簡単にまとめると下記のようになります。

1)ゴムエッジ
 低音は一番出しやすく、柔らかいぶん量感のあるゆったりした音になります。制振効果はかなり高く、特性もピークが出にくいため音のクセが少ないのも特徴です。また伸縮性があり振幅特性も優れているので、歪み感も非常に少なくなります。ただし、他のエッジに比べれば重量があるため、SPLは低めで、パンチ感のある前に出る音は出しにくく、またパワーを重視してあまり厚いエッジにすると、SPLが下がり、俗に言うゴム臭い音になることもあります。Foを上げたいユニットや中高域用ユニットには一番向きません。PARC Audioは現在全てのモデルがゴムエッジを採用していますが、これはPARC Audioのサウンドポリシーとの関係もかなりあります。

2)ウレタンエッジ
 発泡材料のため重量が軽い割に制振効果はそれなりにあり、比較的ピークも抑えられるので、音のバランスは取りやすいエッジです。低音も量感的にゴムエッジにはかないませんが、布エッジに比べれば出る方で、SPLも比較的高めのユニットの設計が可能です。ウーファーからミッドレンジまで広範囲で使用でき、個人的な印象で言えば一番設計的に楽なエッジです。ただし最大の欠点は、発泡材のため湿度、紫外線、熱に対して経時変化を起こし、数年でぼろぼろになることがあり、信頼性を要求されるモデルには使用が出来ないことです。(一部、エッジ交換を前提に採用しているメーカーもあります)

3)布エッジ(コーティング無しの布を成型後にダンプ材を塗布したもの)
 これは素材としては一番耐久性が高い材料で、軽量でもあり、高能率ユニットや中高域用ユニットに向いています。価格も比較的安価で、最も多くのユニットで採用されています。ウーファー用でも使われることがありますが、制振効果が高くなく、Foを下げるため柔らかい布を使うとエッジ無きも出やすく、特性が暴れたり音に癖が出やすく、設計的には一番神経を使う素材だと思います。耐久性を重視したPA用などではよく使われますが、その場合形状を単一ロールではなく波形エッジにするなどの工夫をして使うことが多いようです。良くも悪くも、ゴムエッジとは一番対照的な素材です。

4)布エッジ(コーティング付の布を成型したもの)
 これは一番手のかかる仕様ですが、良質な溶剤系ダンプ材を使用すると特性、音色ともにバランスの取れた優れたユニットが設計できます。反面、量産での管理が難しく、バラツキが出やすいことも事実です。また、最近では昔のような良質なダンプ材が入手できず、また製造現場の都合で非常にこの方式は嫌われるので国産ユニットでこのタイプはほとんど見かけなくなりました。ちなみにSS-A5はこのタイプになりますが、当時でもこれをやるために部品メーカーとかなりハードな交渉をやった思い出があります。(質の良いダンプ材は、臭いもきつく、製造現場は大変なんです)


最後に、各材料での比較をまとめると下記のような感じになります。

1)質量
 ゴム>>ウレタン>布(ダンプ処理にもよりますが)

2)エッジの制振効果
 ゴム>>ウレタン>布(ダンプ処理にもよりますが)

3)サスペンションとしての効果
 ゴム<ウレタン<<布

4)低音の量感
 ゴム>>ウレタン>布(ダンプ処理にもよりますが)

5)低音のスピード感
 ゴム<ウレタン<<布

6)歪みの少なさ
 ゴム>>ウレタン>布(ダンプ処理にもよりますが)


番外編としては、エッジレスユニットという変則技がありますが、これはエッジを無くす代わりにダンパーを2枚使う手法ですが、どうしても振動板外周部からの空気漏れが出たり、非常に特殊な製法でコスト高となることもあり、ほとんど採用されていないのが実状です。では今日はこの辺で。
次回は真空管オーディオフェアについてのお知らせです。お楽しみに。




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7 コメント

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ご教授お願いします (穴 明太)
2009-09-30 22:25:32
毎回面白いテーマを有難うございます。
エッジは耐久性のみ関心が有ったのですが(ウレタンのボロボロ化にはいつもがっかりさせられます)、社長のお話を伺っていると、ほんとに音質に関係する重要アイテムと分かりました。有り難う御座います。いくつかの質問をさせていただきます。

エッジの面積(幅)の大きいユニット、小さなユニット色々ありますが、スティフネスに関係するのでしょうか?それぞれの音質差は、傾向はどうなんでしょうか?

エッジは正面から見て凸タイプと凹タイプがありますが、その狙いと違いは何なんでしょう?

単純なロール型、細かいひだの幾つもあるもの、エッジの形態も色々ですが、それぞれの機構と特色は何なんでしょう?

材質で3種類が話題になりましたが、エッジ補修でセーム皮などの皮材を使う記述を雑誌などで見ます。この材料について社長のご見解はいかが?また補修すること自体、社長は肯定的でいらっしゃいますか?それとも否定的ですか?

沢山の疑問で恐れ入ります。宜しくお願い致します。
Unknown (PARC)
2009-10-02 00:51:38
穴明太様

かなり沢山の内容で、コメント欄で書くのはちょっと重すぎる感じもしますが、以下私の考えを書きます。

同じエッジ材を使った場合は、エッジの幅が狭い方がエッジの剛性は上がりますが、エントリーでも書いたようにエッジはサスペンションと制振材という相反する機能を要求されるので、一概に剛性が高ければ良いというものではありません。個人的にはエッジ自身の音色はどう頑張っても振動板にはかなわないので、出来るだけ振動面積を少なくした方が良いと思っていますが、単純に狭くするとFoが上がりすぎたり、中高域にピークが出てクセのある音になったりするので、最終的には音質、特性とのバランスを見ながら設定していくという感じです。

エッジ形状はウーファー用ではロールエッジ、波形エッジが代表的だと思いますが、ロール型がコンプライアンスも大きく比較的直進性もよいので最も多く使われています。波形が使われるのは布エッジの場合で、布のロールエッジだとエッジの剛性が弱くFoが下がりすぎるため、PA用などでは波形をよく使いますが、反面エッジの逆共振が出やすいので特性面では神経を使います。A5では随分制振材を多用して苦労しました。

ギャザーエッジはオリジナルは日立(ローディ)だったと思いますが、性能は優れているものの、製造不良(ビリ音)が発生しやすく、昔ビクターでOEM生産していた時も製造はすごく嫌がっていたのを覚えています。最近ではアルパインがよく使っています。ギャザードエッジについてはこちらに詳細が書かれています。
http://www.niji.or.jp/home/k-nisi/hs-500.html#gazardedge

セーム皮自体は試したことがないので断言は出来ないですが、おそらく良いと思います。以前ハイエンドモデルで真面目に最高級の皮(たしか羊だったような)をエッジにすることを検討したことがありましたが、音は最高でした。ただ市販されているような分割したタイプはちょっとどうかなぁと感じます。でも一体で成形するのはかなり大変ですから、一般のユーザーの方がやるのは大変かも知れませんね。
エッジを補修することは、ウレタンの場合は必要不可欠なので否定することは出来ないですね。ただたまにJ社の大昔の名器と言われたユニットをコーン紙ごと貼りかえをされている例を見ますが、あれは最悪です。せっかくの極上コーン紙を現在の普通のコーン紙に換えてしまうことになり、本末転倒といった感じがします。
Unknown (GX333+25)
2009-10-02 09:17:53
 お久しぶりです。

 大昔、「エッジは必要悪」という言葉をどこかで聞いたような(F社のエッジレス・ウーファーの宣伝だたかな? それとも、糸吊りエッジを自作している人の言葉だったかな?)気がしますが、なるほどコストと性能のトレード・オフを考えると、避けて通れないところということがわかりました。

 とはいえ、現物を初めて見たときに驚いたのが、御社の8cmフルレンジで、振動する部分の面積はウッドコーンよりも大きいんじゃないか、ひょっとしてウッドコーンではなく特殊ゴムエッジの音を聞いているのではないか、と思い、ほかの2機種と違う苦労があったのだろうな、と感じたことを思い出しました。
Unknown (PARC)
2009-10-03 00:08:27
GX333+25様

>大昔、「エッジは必要悪」という言葉をどこかで聞いたような(F社のエッジレス・ウーファーの宣伝だたかな?

確かにその通りですね。ソニーでも以前エッジレスウーファーを開発してましたが、個人的にはそこまでコストをかけてする程の性能差を感じることができなかったというのが正直な印象です。
むしろ昔ビクターがやっていたシールドエッジ(正式な名前はちょっと違うかも知れません)の方が、コスト対効果で言えば上ではないかと思います。


>御社の8cmフルレンジで、振動する部分の面積はウッドコーンよりも大きいんじゃないか、ひょっとしてウッドコーンではなく特殊ゴムエッジの音を聞いているのではないか、と思い、ほかの2機種と違う苦労があったのだろうな、と感じたことを思い出しました。

そうなんです。この8cmは口径の割に低域を欲張ったので、エッジの処理には本当に苦労しました。PARCの子供達の中ではこの子が一番個性派で、親にも心配をかけた子ですが、結果としては今や一番人気の孝行息子となっていますので、ほんとスピーカーは難しいですね。
エッジ (gkrsnama)
2010-03-25 07:18:15
フォステクスによると、ダンパーは入力に比例して変形する純粋な弾性体であるが、エッジはヒステリシス歪を持っているそうです。確かに中高域の制動効果はありますが、低域ではまずい。エッジをとれば歪が減るのは間違いないでしょう。同社では20/30cmを製品化していました。ただ当時は同社は低級弱小メーカー扱いでほとんど評判にもならず、歪が少ない方が必ずしも「好ましい音」であるともいえないわけで、JBL等の方がはるかに高評価でした。(当時からフォスター社はスピーカー界随一の大メーカだったわけで、力がないわけではありません。自作市場特化で安いの中心なのと拡販費を切らなかったんでしょうね。)

でもね、エッジには経年変化があるんですよ。硬くなったりボロボロになったり。10年で性能低下でサヨナラ。買い替えになりメーカーの思うつぼです。

今、実質無歪のコンデンサ型を使用していますが、エッジレスの音を聴いてみたいと思います。
フォステクスのエッジ (gkrsnama)
2010-03-25 07:20:58
今は、コーンともども変な凹凸がついたエッジを実用化していますね。これは注目です。
Unknown (PARC)
2010-03-25 13:21:42
gkrsnama様

>ダンパーは入力に比例して変形する純粋な弾性体であるが、

程度の差はありますが、ダンパーも完全にリニアではありません。そのため各社が形状や材質でいろいろと改良を試みました。


>エッジをとれば歪が減るのは間違いないでしょう。

たしかにエッジの非線形の部分での歪は改善されますが、逆にコーン外周部からのエアー漏れによる歪の発生や、コーン外周部の分割振動の増加、エッジレス構造を実現するためにダブルダンパー化により(確かF社製もそうでしたが)通常構造のダブルダンパーではボイスコイルのコーンネック部との距離が離れるという弊害もあり、全てが良くなるわけではありません。ソニーでも研究所レベルではエッジレスユニットを研究していましたが、効果、コスト等を考慮し結果として製品化にはなりませんでした。(私自身もあまり魅力を感じなかった一人です)
私見ではありますが、F社のエッジレスがあまり普及しなかったのは会社規模や拡販費とはあまり関係ないと思います。製品(特に多く使われる)では、費用対効果がシビアに判定されますので、その点が最大のネックだったのではと思います。


>エッジには経年変化があるんですよ。硬くなったりボロボロになったり。10年で性能低下でサヨナラ。

これは材質によりますね。全てのエッジ材がぼろぼろになるわけではありません。PARCが使っているブチルゴムなどは非常に安定した材料で、同じ系統のブチルを使ったソニーの業務用ユニットなどは既に15年以上経っていますが、いまだに何の問題もなく動作しています。


>今は、コーンともども変な凹凸がついたエッジを実用化していますね。これは注目です。

このシリーズは高い評価を得ているようですね。私自身はこのタイプのエッジ形状について自分で検証したことがないのであまり偉そうなことは言えないのですが、個人的には私も興味はあります。ただ振動板についてはおそらく重量upの方向になるはずなので、ちょっとPARCの方向とは違うかなぁと感じます。

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