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No258「善き人のためのソナタ」~最後に確かめあう男と男の絆の深さ~

きっかけは愛。
最初に監視員ヴィースラーがひかれたのは、
女優クリスタの美しさ、舞台での輝き。
でも、24時間体制での盗聴が始まり、
彼女の生活の細部まで知っていくうちに、
恋人で劇作家のドライマンと暮らしながらも、怖くて政府高官との関係を断てず、
女優としての自分に自信を持てず薬を飲み続ける、
クリスタのもろさ、弱さが見えてくる。

ヴィースラーは、そんなクリスタをこっそりと影から守ろうとする。
彼女のドライマンへの愛をも。
そのことで、
これまで自分が積み上げてきた人生を棒に振ることになっても、
彼に後悔はなかった。
そんな強い思いを、決して言葉にすることなく、
顔に出すこともなく、
ただ、淡々とした行動のありようから、観客は感じ取るだけ。
この演出、行間から生まれる深みがすばらしい。

終始、無表情で、寡黙でありながらも、
はっきりと変わっていくヴィースラーの心の内を、
繊細に演じきったウルリッヒ・ミューエの演技は天才的。

自らの行動の結果、左遷され、
何十年もの単調作業を強いられても、
淡々とその生活を受け入れ、かつてと同じ無表情さで
郵便を運び、町を歩くヴィースラーの後ろ姿から
にじみだすものの尊さ。

一度も言葉を交わすことのなかった、
ヴィースラーとドライマンとが、
最後に、互いの思いを知り、互いの存在を深く確かめあう。
国家権力が絶大で、自由が抑圧された時代を生き抜き、
同じ女性を守ろうとした男たちの魂の絆に
深く、強くうたれた。

真実の重み。
二人が耐え抜いてきた寡黙な年月の重みが
どっと心に流れ込んできて、
涙がとめどもなく流れた。

間違いなく、今年1番の傑作である。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 12 )
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コメント
 
 
 
傑作 (かえる)
2007-02-18 23:37:25
こんばんは。
>この演出、行間から生まれる深みがすばらしい。
同感です。
紛れもない傑作でしたね。

あ、 セバスチャン・コッホ演じる劇作家の名前は、ドライマンですね。(^^)
余談ですが、私はイングマール・ベルイマンのことを長い間、ベイルマンだと思っていました。
 
 
 
かえるさんへ (パラリン)
2007-02-19 21:54:22
コメントありがとうございます。
肝心の登場人物の名前を間違って書いていたとは、お恥ずかしい限りです・・。(深く反省)
早速、修正しました。

どうも、すっかり映画の余韻に酔ってしまったようで、ドライマンをベルイマンと思い込み、これはベルイマン監督へのオマージュかも、なんて、幸せな思いつきに浸っていました。(笑)

カタカナの名前は、つい勘違いして、思い込んでしまいますね。
にしても、思い返せば思い返すほど、伏線の張り方、細部までの心配りがすばらしく、忘れられない作品です。
 
 
 
「盗聴」 (kimion20002000)
2007-10-28 00:13:28
TBありがとう。
「盗聴」がキーワードでありながら、劇中のセリフは極力、削り取られ、まるで、沈黙のなかの気配を聞いているような様子に、緊張感がありました。
 
 
 
kimon20002000さんへ (なるたき)
2007-10-29 02:01:44
こちらこそコメントありがとうございました。
TBのお礼も言えず、失礼しました。

「沈黙のなかの気配を聞いている」
そのとおりですね。
前半の緊迫感があるからこそ、ラストの後日談がより深く心にしみいってくるのですね。
新しい発見をありがとうございます。
 
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