12月29日。年の瀬も押し迫ったこの日は、チェロ奏者、パブロ・カザルスが生まれた日(1876年)だが、ゴムの加工法を発明したチャールズ・グッドイヤーの誕生日でもある。
チャールズ・グッドイヤーは、1800年、米国のコネチカット州ニューヘブンで生まれた。家は農家で、チャールズは6人きょうだいのいちばん上の子だった。
13歳のころ、彼は単身フィラデルフィアへ出て、金属製品の商売について学びだした。21歳のとき、故郷へもどった彼は、象牙や金属のボタン、農業器具の製造、販売をはじめた。うまくいっていた彼の仕事は、彼が30歳になるころに傾き、ついに倒産した。彼は債権者たちから訴えられ、刑務所に収監された。
そのころから、グッドイヤーはチューブなどを作るゴム製品に興味をもちだし、金属からゴムの研究に移った。
当時のチューブ用ゴムは、寒い季節には硬くこわばり、暑い夏場には溶けてベトベトになるお粗末な代物だった。
グッドイヤーはゴム製品の安定性を求めて、極貧の状況のなか、破産したりしながら実験と研究を重ねた。この過程で、ゴムを熱した際の煙を吸うなどにより、グッドイヤーはそうとう健康を害したが、40歳のころ、ついにゴムに硫黄を加えて加工し、ゴムに弾性と強度を与えることに成功した。
彼は出資者を募り、ゴム工場を立ち上げ、43歳のときに、加硫ゴムの特許をとった。
このゴムの製法については、特許を無視してまねされるケースが絶えず、グッドイヤーはいくつもの訴訟を起こし、なかなかなくならない特許侵害と戦いつづけ、1860年7月、
ニューヨークで没した。
亡くなったとき、彼には20万ドルの借金が残っていたという。
タイヤ・メーカー「グッドイヤー社」は、チャールズ・グッドイヤーの名前から社名をとったにはちがいないが、グッドイヤー本人または彼の遺族とは無関係らしい。
グッドイヤーは、実験に注ぎ込むために家財を売り払い、ついには食べるものにもこと欠き、12人の子どものうち半数が幼少時に没したという。まさに発明家の執念の生涯だった。横光利一のことばを思いだす。
「よく作家が寄ると、最後には、子供を不良少年にし、餓ゑさせてしまつても、まだ創作をつづけなければならぬかどうかといふ問題へ落ちていく。ここへ来ると、皆だれでも黙つてしまつて問題をそらしてしまふのが習慣であるが、この黙るところに、もつとものつぴきのならぬ難題が横たわつてゐると見てもよからう。」(横光利一「作家の生活」『横光利一全集 第十二巻』河出書房)
いろいろと考えさせられる人生である。
グッドイヤーは言っている。
「人は、つぎの場合にのみ、後悔する正当な理由をもつ。それは自分が種をまいたのに、誰も刈りとってくれないときである。(A man has cause for regret only when he sows and no one reaps.)」(Brainy Quote: http://www.brainyquote.com/)
(2019年12月29日)
●おすすめの電子書籍!
『ビッグショッツ』(ぱぴろう)
伝記読み物。ビジネス界の大物たち「ビッグショッツ」の人生から、生き方や成功のヒントを学ぶ。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ、ソフトバンクの孫正義から、デュポン財閥のエルテール・デュポン、ファッション・ブランドのココ・シャネル、金融のJ・P・モルガンまで、古今東西のビッグショッツ30人を収録。大物たちのドラマティックな生きざまが躍動する。
●電子書籍は明鏡舎。
http://www.meikyosha.jp
チャールズ・グッドイヤーは、1800年、米国のコネチカット州ニューヘブンで生まれた。家は農家で、チャールズは6人きょうだいのいちばん上の子だった。
13歳のころ、彼は単身フィラデルフィアへ出て、金属製品の商売について学びだした。21歳のとき、故郷へもどった彼は、象牙や金属のボタン、農業器具の製造、販売をはじめた。うまくいっていた彼の仕事は、彼が30歳になるころに傾き、ついに倒産した。彼は債権者たちから訴えられ、刑務所に収監された。
そのころから、グッドイヤーはチューブなどを作るゴム製品に興味をもちだし、金属からゴムの研究に移った。
当時のチューブ用ゴムは、寒い季節には硬くこわばり、暑い夏場には溶けてベトベトになるお粗末な代物だった。
グッドイヤーはゴム製品の安定性を求めて、極貧の状況のなか、破産したりしながら実験と研究を重ねた。この過程で、ゴムを熱した際の煙を吸うなどにより、グッドイヤーはそうとう健康を害したが、40歳のころ、ついにゴムに硫黄を加えて加工し、ゴムに弾性と強度を与えることに成功した。
彼は出資者を募り、ゴム工場を立ち上げ、43歳のときに、加硫ゴムの特許をとった。
このゴムの製法については、特許を無視してまねされるケースが絶えず、グッドイヤーはいくつもの訴訟を起こし、なかなかなくならない特許侵害と戦いつづけ、1860年7月、
ニューヨークで没した。
亡くなったとき、彼には20万ドルの借金が残っていたという。
タイヤ・メーカー「グッドイヤー社」は、チャールズ・グッドイヤーの名前から社名をとったにはちがいないが、グッドイヤー本人または彼の遺族とは無関係らしい。
グッドイヤーは、実験に注ぎ込むために家財を売り払い、ついには食べるものにもこと欠き、12人の子どものうち半数が幼少時に没したという。まさに発明家の執念の生涯だった。横光利一のことばを思いだす。
「よく作家が寄ると、最後には、子供を不良少年にし、餓ゑさせてしまつても、まだ創作をつづけなければならぬかどうかといふ問題へ落ちていく。ここへ来ると、皆だれでも黙つてしまつて問題をそらしてしまふのが習慣であるが、この黙るところに、もつとものつぴきのならぬ難題が横たわつてゐると見てもよからう。」(横光利一「作家の生活」『横光利一全集 第十二巻』河出書房)
いろいろと考えさせられる人生である。
グッドイヤーは言っている。
「人は、つぎの場合にのみ、後悔する正当な理由をもつ。それは自分が種をまいたのに、誰も刈りとってくれないときである。(A man has cause for regret only when he sows and no one reaps.)」(Brainy Quote: http://www.brainyquote.com/)
(2019年12月29日)
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