1日1話・話題の燃料

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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

選挙と憲法

2013-07-21 | 日本の未来を憂う
本日、7月21日は参議院議員選挙の投票日です。投票にあたり、自分が気になっていることをひとつだけ書きます。

今回の選挙は、TPPとか、原発とか、景気対策とか、消費税とか、いろいろな政策上の争点があって、各政党とも、口当たりのよさそうなことを前面に出して、聞こえの悪そうなことについては口をつぐんでいますが、いちばん大事なのは、憲法の問題かと思われます。これは政策の問題ではなく、国体の問題です。
自民党をはじめとしたいくつかの政党は、この憲法を変えていこうという意志を明示しています。で、憲法を変えやすくするためにまず、憲法の改正条項である第九十六条を変えてしまおうと目論んでいます。第九十六条とは、つぎのようなものです。

「第九十六条  この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」

「3分の2以上の賛成」で憲法が改正できるとしたこの条件を、「半分以上の賛成」で変えられるようにしようじゃないか、というわけです。
これは、はっきり言って、憲法をなめた意見です。改憲に「3分の2以上の賛成」が必要だというのは、平たく言えば、いつもは言い合いばかりしている与党と野党の人たちも、さすがにこれは変えたほうがいいだろうと意気投合して、圧倒的多数が賛成したなら、さすがに変えてもよいだろう、ということです。逆に言えば、それだけ憲法を大事にしなさい、ということで、これが憲法の精神です。
それを「半分以上の賛成」で変えられるようになったら、そのときたまたま人気を得て、過半数の議席を獲得した政党によって、憲法がいいように変えられてしまいます。極端なことを言えば、
「日本の政治運営は、自由民主党の指導のもとでおこなう」
という条文だって書き加えられるようになるかもしれません。おとなりの中国の憲法がそういう風で、一党独裁になっているのは、ご存じの通りです。いったんこういう風に憲法が書き換えられてしまったら、もうもとにもどすのはほぼ不可能です。

なぜ、「半分以上の賛成」で憲法を変えてはいけないかというと、われわれは日本人を信用してはいけないからです。
われわれ日本人は、熱しやすく、冷めやすい銅のような国民です。とくに選挙においては。
かつての衆院選で、「自民党をぶっこわす」と宣言した自民党党首が国民の圧倒的な支持を得て、名簿にたまたま名前を載せたスーパーの経営者や、およそ常識のない世間知らずの若者までが議員に当選して、自民党が圧勝した選挙がありました。勝った自民党は、やがて政権をたらいまわしにして、税金をつかいたい放題つかいまくった挙げ句に、政権を放り出しました。
すると、つぎの衆院選では、野党だった民主党が国民の支持を得て、圧倒的な勝利をおさめました。勝った民主党は、最初のうちは脱官僚の方向で動きましたが、やがて幹部たちが足を引っ張り合いをはじめ、やがて官僚の言いなりなにだし、自民党となんら変わらない政策を打ち出す政党となった挙げ句に、政権を放り出しました。
すると、今度は自民党が圧倒的な支持を得て勝利をおさめました。勝った自民党がはじめたのは、さんざん国の借金を積み上げてきた昔の自民党とまったく同じ、借金して集めたお金を湯水のように使う土建屋国家の政治です。政官の経費節減の努力はまったく見られません。
日本国民は熱狂し、圧倒的に支持しては裏切られ、を繰り返してきたわけです。

政策の評価はともかくとして、ここで言いたいのは、以上の圧倒的勝利の政権交代の数々は、すべて日本国民が投票した結果だということです。日本国民の過半数の賛成などすぐに得られるということです。
このあいだは、白だと言ったと思ったら、今度は黒だ。黒がだめなら、やっぱり白だ。と、ころころ変わる。これが日本人です。
だから、われわれ日本人は、日本人のときどきの判断を、信用しすぎないように注意するべきです。
そのとき熱くなった日本人の多数が、たまたま投票した政党が過半数を占め、その政党の意向で、公約が反故にされ、政策が変わるくらいならはまだいいけれど、憲法まで変えられてしまったら、もう取り返しがつかないことになります。そうなったらもう、日本に明るい未来はないでしょう。

自分としては、まず、憲法の精神を尊重したい。
つぎに、銅のような日本人を信用したくない。
これらの理由によって、自分は、憲法を守る方向で投票したいと思っています。
護憲派の政党は、
「みどりの風」
「共産党」
「社民党」
などです。 今日、日本は大きなターニングポイントにあります。その進む方向を選ぶのは、われわれ一人ひとりです。
(2013年7月21日)

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