パピとママ映画のblog

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ファントム・スレッド★★★★

2018年06月08日 | アクション映画ーハ行

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のポール・トーマス・アンダーソン監督とダニエル・デイ=ルイスが2度目のタッグを組み、1950年代のロンドンを舞台に、有名デザイナーと若いウェイトレスとの究極の愛が描かれる。「マイ・レフトフット」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」「リンカーン」で3度のアカデミー主演男優賞を受賞している名優デイ=ルイスが主人公レイノルズ・ウッドコックを演じ、今作をもって俳優業から引退することを表明している。

あらすじ:1950年代のロンドンで活躍するオートクチュールの仕立て屋レイノルズ・ウッドコックは、英国ファッション界の中心的存在として社交界から脚光を浴びていた。ウェイトレスのアルマとの運命的な出会いを果たしたレイノルズは、アルマをミューズとしてファッションの世界へと迎え入れる。しかし、アルマの存在がレイノルズの整然とした完璧な日常が変化をもたらしていく。第90回アカデミー賞で作品賞ほか6部門にノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞した。

<感想>1950年代のイギリスのクチュールの世界は、一人の男性が中心となって多くの女性に囲まれて仕事をするという形をとっていた。お針子さんたちが、手仕事をすべてやっていて、ドレスを作り上げていく、奇妙な世界だと感じたのだが。日々いろいろなクライアントがアトリエにやって来て、仕立て屋/デザイナーとどのように付き合っているかなどにも興味がそそられたし、クライアントはレイノルズを賛美し、彼もクライアントを美しく着飾り喜ばせようと願うのだ。特に、オートクチュールの仕立て屋、レイノルズ・ウッドコックのモデルになったようなクチュールのデザイナーがいたというのだ。

それは、クリストバル・バレンシアガ、クリスチャン・ディオールなどであり、彼らには共通点があったし、異なる点もあった。だから誰かをモデルにしたというふうには言えないという監督。

レイノルズはとても変わった男だから、鋳型を特定の誰かからとったというわけではない。多くのポール・トーマス・アンダーソンの映画がそうであるように、本作はキャストの演技があるからこそ生まれる深みが、見応えの一つでもあります。3ケ月の撮影の間、可能な限りその役になり切り、可能な限り深く役柄の心理に迫る、というその鍵ともなるメソッド・アクターとして、定評のあるダニエル・デイ=ルイスの成りきり演技が見事に映えていた。

今回も彼は役作りに厳しく極端だったという。それがダニエルとの仕事の方法なんだと受け入れるしかないと言う監督。それは主人公のウッドコックがそうであるような、規律ある生活を送るからで、そうすることでが演技に役立ち反映されるのだ。

このベテラン俳優を相手に、ヒロインであるカフェのウエートレス、アルマを演じるのは、ルクセンブルクの若手女優ヴィッキー・クリープスである。彼女の演技は、ディ=ルイスの完熟した演技とは対照的に初々しく新鮮で、演じるキャラクターに並行した関係にあるように思える。アルマはクチュール界の大物ウッドコックに最初は圧倒されつつも、次第に心を開き彼を魅了していく。

主人公が屋敷の中で無力化されていく映画は「レベッカ」とか「ガス燈」とかあるけれど、ここで囚われの身になるのは男の方である。自己中心の完璧主義者で、こういう人間性は思い当たるところもあり、不安を掻き立てるのだ。

それに、彼の仕事に異常な関心を持ち、結婚もしないで見守る姉のレスリー・マンヴィルも優雅でリアルである。だが、このゴシックロマンふうな映画で怖いのは、あどけない顔で登場し、時間の経過とともに男の性格まで変えていくヴィッキー・クリープスなのだ。

映画を通して二人の関係は予想もつかない方向へと転換していく。アルマは、おどおどしているのか、ずるがしこいのか、どちらなのかはっきりしない。それとも単に可愛らしいだけの女性なのか。その不確かなところが、その後にゆっくりと、彼女のパワーが紐解かれていく。彼女には、彼が想像した以上の力があると睨んだ。

明らかに彼女はヨーロッパのどこからかやってきた移民で、戦時中には悲惨な目に遭っているのが想像できる。口うるさい英国人の仕立て屋なんかより、ずっと難しい人間的な苦難に遭遇してきたはずだから。

彼女にとって彼は、容易に対応できる小さな問題でしかなかったのだと思う。そんな彼女の生い立ちから考えると、彼女は事実上あの家の中で最強にして最高に賢い人間なわけだ。どんな高貴な人と一緒にいたとしても、・・・。彼女にはどこか、それを超えたものがあるから。

最初は、ウッドコックが支配的であったかに思えた恋愛関係の、バランスが崩れるところに、この映画の緊張とスリルがある。逆に恋愛の在り方は古典的で、ベッド・シーンはない。それは二人の関係の神秘を壊すからだろうか。

意外な結末の鍵として、毒が登場する。それは、ベルギーのプリンセス・モナのウエディングドレスの仕事を受注した時のこと。アルマはレイノルズを独占したいのか、飲み物に毒キノコ混ぜて飲ませ、彼はモナのウエディングドレスの裾と胸のレースに、その毒キノコを吐きます。

その後に、彼を看病して医者を呼ぶという姉のシリルを追い出して、一人で看病する。徹夜でお針子さんたちを使い、総出で手直しをするアルマ。朝には、王妃のウエディングドレスが見事に出来上がってました。

それから、アルマがレイノルズと姉のシリルが、自分を追い出す相談をしているのを盗み聞きして、またもや彼の食事に毒キノコを入れて自分の思うままにしようとする。レイノルズはもしかして、アルマが毒を食事に入れたことに感づいていたのだが、しらぬふりをして毒入り食事を食べるレイノルズ。

そして、今度こそ医者を呼ぶのですが、前にその医者に怒鳴りちらしたせいか、妻が食事に毒を入れたことは気づかれなかったのだ。その後に、アルマが子供が授かり乳母車に子供を乗せているシーンが映し出される。

美しい女性と優雅なドレスが、目を奪うクチュールの世界もさることながら、ロンドンのジョージー王朝スタイルのタウンハウスや、カントリー・コテッジ、田舎の風景など本作に醸し出す独特の空気が、これまた魅力的であります。

そして、ポール・トーマス・アンダーソン監督の映画には、音楽が大きな比重を占めているが、本作の音楽を担当したのが、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」以来、彼の映画音楽を担当してきたジョニー・グリーンウッド(レディオヘッド)が、織りなす格調高い音楽であります。

018年劇場鑑賞作品・・・105アクション・アドベンチャーランキング

 

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