パピとママ映画のblog

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ロープ 戦場の生命線★★★★

2018年04月11日 | アクション映画ーラ行

停戦直後のバルカン半島を舞台に、建前ばかりの国連を尻目に、現地の市民を助けるために奮闘する国際援助活動家たちの姿を豪華キャストの共演で描いたスペイン製戦場ブラック・コメディ。出演はベニチオ・デル・トロ、ティム・ロビンス、オルガ・キュリレンコ、メラニー・ティエリー。監督は「カット!」のフェルナンド・レオン・デ・アラノア。

あらすじ:1995年、停戦直後のバルカン半島。ある村で井戸に死体が投げ込まれ、大切な水が汚染されてしまう。するとすぐに犯罪組織のトラックが現われ、村人に水を高値で売り始める。急を要する事態にも国連の動きは鈍く、マンブルゥら国際援助組織“国境なき水と衛生管理団”のメンバーが死体の引き上げに乗り出す。しかし肝心のロープがなぜか手に入らず、一本のロープを求めてそこかしこに地雷の埋まる危険地帯を東奔西走するマンブルゥたちだったが…。

<感想>ある扮装地帯で起きた1本のロープをめぐる1級サスペンスだが、会話劇としても面白い。ここでいう戦場とは1995年、停戦直後のバルカン半島、ボスニアとかセルビアとかの国名は一切明かされないのだ。

その山岳地帯で活動するグループ「国境なき水と衛生管理団」これって、国境なき医師団のモジリなの?・・・の5人の面々が織りなすドラマと言う設定なのだが、これが何とも人間臭くて観客はぐいぐいと活動家たちの劇世界に引き込まれていく。

片田舎のある村で井戸に死体が投げ込まれる。それは生活用水が汚染されたところからドラマが始まる。活動家たちは、何とかその死体を引き上げようとするが、あいにくロープが切れてしまい、結局ロープを求めて右往左往するはめになるのだ。

この貴重なロープをめぐる物語だけでも最後まではらはら、ドキドキさせる一級サスペンス劇になっているのですが、面白いのはその5人が絡み合う会話劇なんですね。そこでは、深刻かつ悲劇的なものはまるで感じさせない、ボランティア精神をにじませる活動家たちを活写しつつも、あえて笑いを誘う余裕の言葉を交わすセリフ術を駆使して名人芸の域といったところ。

登場人物たちは国籍も性別も職種もさまざまで、遠い家に戻る日を目前に控えたベニチオ扮するマンブルゥが、目の前の仕事を早く片付けたいから、あの手この手を考えだすわけ。そのたびに「それは君たちの仕事ではない」と言う横やりが入るのだから、うんざりしている。でも彼が動かなければ、井戸を使う村人たちが自分たちの土地で生活することは難しくなるのだ。

誰がやったのか、どうしてそうなったのか、を云々している暇はないのだ。死体が腐敗してしまっては、井戸水の浄化が難しくなる。しかし井戸の中の死体は、厄介なことにかなり大柄で、ようやく途中まで吊り上げたところで、古くてボロボロのロープは重みで切れてしまう。

村に他のロープはない。同僚や仲間を頼りに手を尽くしてロープを求め、国連のPKO部隊、別の村の雑貨屋などを訪ねて回るが、ロープはあっても「管轄外だから貸せない」とか「外国人には売らない」という。

ようやくこぎつけた停戦維持のための「国旗掲揚に使うから」と、彼らにロープを渡すまいと、まるで申し合わせたかのように。ロープを中々手に入れることができないのだ。家の中を探し回った挙句に、彼らは思いがけない形で別のロープを見つけることになる。

手元にあるようでないもの、誰かから借りられそうで借りられないもの。簡単に手に入りそうで手に入れられないもどかしさは、停戦合意したとはいえ、平穏な日々が戻るには程遠い紛争地の状況を、実に巧く表現していると感じた。

そして、また活動家に扮した5人が実に息の合った演技のアンサンブルを見せて言うことなし。そのリーダー挌マンブルゥには、「トラフィック」のベニチオ・デル・トロが、セクシーさと危険な香りを持つ彼が演じているのも嬉しい。住民たちの生活に欠かせない水のために、尽力を尽くす国際援助活動家というのはそれだけで、人としての大きさを感じさせますが、マンブルゥには過酷な活動のなか、偶然出会った少年の事も気に掛ける。人間的にも惚れずにいられない暖かい男なのです。

彼の同僚のベテラン職員には「ミスティック・リバー」のティム・ロビンズが、マンブルゥの同僚で、型破りなビーを演じている。この名優2人に加えて女性陣では、現地を視察に訪れたマンブルゥの元恋人である、カティヤのオルガ・キュレンコと、新参のソフィーに扮するメラニー・ティエリーは、衛生管理の専門家である。そして5人目は、彼らと土地の人間の間に立って通訳をしながら、直接のかかわりあいからはさりげなく身を引いて行動するダミールには、サラエボ出身のフェジャ・ストゥカンと、いぜれ劣らぬ個性派ぞろい。

 

マンブルゥにロープのありかを教えてくれる少年ニコラに、エルダー・レジドヴィックが、紛争地のたった1日、たった1本のロープを求めて彷徨う旅の同行者となる。

マンブルゥの強引さにハラハラしながらも、たった1日で紛争地での生活を守るために払われる犠牲がどんなものかを見聞きし、身をもって体験することになるのだが、深刻な話のはずなのに、何故だか笑える場面が、笑えるセリフがたくさんあるのが面白い。観ている私たちが笑ったから不謹慎だということはない。笑わないとやってられない彼らの日常が描かれているからなのだ。

地雷が埋まっているかもしれない。山道をいきなり痴話げんかがはじまったりもする。何もこんなところでと、そんな話を。と思うのだが、それもこれも、彼らが生きている生身の人間だからなのだ。

「国境なき水と衛生管理団」というに相応しいこの国際的で、絶妙のキャスティングを実現させ、才気あふれる演出も見せたサスペンスの新鋭フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督にも拍手。

痛烈な皮肉を込めたラストに用意された有名な反戦歌「花はどこへ行った」のマルレーネ・ディートリッヒ歌唱バージョンにひどく心を動かされました。

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