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永い言い訳 ★★★・5

2016年10月20日 | アクション映画ーナ行
「ディア・ドクター」「夢売るふたり」の西川美和監督が、直木賞候補ともなった自身の同名ベストセラーを映画化したヒューマン・ドラマ。妻が不慮の事故で亡くなったにもかかわらず悲しむことができなかった主人公が、同じく事故で妻を亡くした男性とその子どもたちと出会い、彼らとの思いがけない交流を通じて改めて妻への愛と向き合い、人生を見つめ直していくまでの揺れる心の軌跡を、ユーモアをちりばめつつ、切なくも温かなタッチで綴る。主演は「おくりびと」の本木雅弘、共演にミュージシャンの竹原ピストル。
あらすじ:人気小説家の津村啓こと衣笠幸夫(本木雅弘)の妻で美容院を経営している夏子(深津絵里)は、バスの事故によりこの世を去ってしまう。しかし夫婦には愛情はなく、幸夫は悲しむことができない。そんなある日、幸夫は夏子の親友で旅行中の事故で共に命を落としたゆき(堀内敬子)の夫・大宮陽一(竹原ピストル)に会う。その後幸夫は、大宮の家に通い、幼い子供たちの面倒を見ることになる。

<感想>西川美和監督の最初に観た「ゆれる」(06)は衝撃的でした。次の「「夢売るふたり」(12)「ディア・ドクター」はそれなりにと、本作ではこいう男は本当にいると思うわけで、何だか身近に感じて観てしまった。主人公の衣笠幸夫に本木雅弘が演じていて、彼の「おくりびと」は厳かで秀悦でした。それに、宮沢りえとのお茶のCMもいい。最近では「日本のいちばん長い日」での昭和天皇・現人神の役である。そういえば、是枝監督の「そして父になる」と類似しているかもしれない。

今回、そんな本木雅弘が演じるのが、どこにでもいる普通の男で夫である。タイトルからして「永い言い訳」であり、しかも長いではなく“永遠の永い”も、主人公の幸夫の人生そのものを示しているのだ。それに幸夫はどの男でも持っているような自意識過剰、当惑、混乱、自虐、と人間の危うさが満載だし、さらには、結果としてこの主人公は自力では変わっていけずに、周囲の人間たちの関わりによって、わずかに差した光のようなものに気づかされていくという、その辺の情けないリアル感が中々到達しない感じも、そんな自分の素に近い人間を演じる本木雅弘の本人と被って見えた。

冷たい言い方をすれば、男の人って、夫婦生活が長すぎると妻に対して愛情とかは持っていないらしく、この映画の夫みたいな人が多いからだと思う。この映画の中での幸夫は、妻が美容院を経営しているせいか、生活面でもおんぶに抱っこで、髪結いの亭主気取りである。だから、妻が友達と旅行へ行くのにも、それをいいことに、愛人を家に入れて情事にふけるのだ。その愛人のこともすでに妻はお見通しなのに。
だからなのか、妻が亡くなり葬式にも涙することなくあっさりとした感じがする。死んだ妻にいくらか未練はあったのだろうか、二人だけの懐かしい思い出に耽るシーンはない。だから、本木雅弘が演技とはいえ、十分にいけ好かない嫌な男を演じていた。

子供のいない幸夫は、事故で亡くなった妻の友人夫婦の2人の子供の世話を引き受けることになるのだが、それが実に面倒見のいいお父さんになっていた。本当だったら、夏子との間に1人ぐらい子供がいても良かったのに。きっと幸夫にとっては、妻の夏子に対する贖罪だったに違いない。

本当に一生懸命に子供たちの世話をする幸夫には感心させられました。幼い娘の灯にしても、エビ・カニアレルギーということも知らない。普通ならファミレスでいいのに、自分がいつも言っているお高い、フレンチ・レストランに大宮家族を連れて行き、娘がアレルギー症状を起こして大変なことになる。

2人の子供たちの世話を買って出る幸夫は、今までにない生活と一変してか、頑張るのだ。それに、息子の勉強のことも、塾通いを止めるように父親から言われてしょんぼりしていると、幸夫が「俺が応援するから高校だって、大学だって行け」と息子と父親に言う。これは、自分よがりで、よく他人の家庭環境も考えていないのだ。確かに、息子は父親の職業をバカにしていて、自分は高校にも大学にも行きたいのだから。

しかし、このことは自分の家の家族のことではないし、父親がトラックの運転手という職業なので、夜勤もあり金銭面でも無理ということも。この家族にあまり深入りしない方がいいと思った。ですが、幸夫は誰かに必要とされる喜びを知り、至極ご満悦に浸っているふうもあるのだ。
ですが、案の定、初めは子供たちも喜んで幸夫を迎え入れた。それが、だんだんと親切なオジサンから、当たり前のような慣れになってくるのだ。家の掃除に洗濯に買い物と炊事。自転車で娘を保育園へ連れて行き、息子も塾通いにバスで行き、帰りはバス停まで迎えに行く幸夫。

しかし、良いこともある。みんなで海水浴へ行った時、こういう行事なんて無かった幸夫には、物凄く幸せな気分になり、優越感に浸るのだが、子供は正直で父親のところへと抱き着いて行くのだ。幸夫と夏子は2人で海水浴なんて行ったことがない。その浜辺に妻の夏子が子供たちと立っている幻覚を見る幸夫。

それに、いつまでも2人の子供の面倒だって見れるわけではない。それが、娘の保育園の関係で、吃音の女性(山田真歩)が大宮に好意を持ち、家まで来てこれからは灯ちゃんを家で面倒を見ると言い出す。それに対して、「今までしてきた俺の立場は」とか、嫉妬なのか喧嘩をしてそれっきり大宮の家には行っていない。

大宮だって、亡くなった妻の”留守電”を大事そうに寂しくなると聞き直すのだ。愛していた妻を忘れるわけにはいかない。だからすぐに結果を出すわけでもなく、そのまま2人の子供を抱えてトラックの運転手を続けるわけで、息子は塾に行くどころか、妹の世話と家の洗濯、炊事と小学生なのに大変なことになっていた。それに、父親が交通事故を起こして入院ということに。これをきっかけに、幸夫は大急ぎ駆けつけて、前みたいに家族の世話に大忙しである。
最後には、悪いことばかりではなかった。この映画のタイトルの「永い言い訳」という小説を書き文学賞を受賞するのだ。妻に対しての長い言い訳を書いた小説のようだ。大宮家の家族と共に、幸夫も成長して、妻が残した携帯のメッセージ「もう愛してない ひとかけらも」の文字に、何故か涙が込み上げてくる私だったのだが。

編集担当者岸本には、最近良く出ている池松壮亮の「奥さん亡くなってから、ちゃんと泣きましたか?」と言われて、お前に何が分かると憤慨する幸夫。
妻の深津絵里さんは、冒頭の短いシーンだけでしたが、幸夫の浮気も十分に知っていて許していた。それに甘えていた幸夫。さすがに演技の巧い女優さんだと感心させられました。愛人の黒木華さんもベッドシーンが異様にエロかったし。この大宮家の家族と暮らして、幸夫が妻にしたことへの償いをして成長したようにも取れた。

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