パピとママ映画のblog

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ベイビー・ブローカー★★★★

2022年07月31日 | アクション映画ーハ行

            

「万引き家族」の是枝裕和監督が、「パラサイト 半地下の家族」の名優ソン・ガンホを主演に初めて手がけた韓国映画。子どもを育てられない人が匿名で赤ちゃんを置いていく「赤ちゃんポスト(ベイビー・ボックス)」を介して出会った人々が織り成す物語を、オリジナル脚本で描く。

 

あらすじ:古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョンと、赤ちゃんポストのある施設で働く児童養護施設出身のドンスには、「ベイビー・ブローカー」という裏稼業があった。ある土砂降りの雨の晩、2人は若い女ソヨンが赤ちゃんポストに預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づいて警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく赤ちゃんを連れ出したことを白状する。「赤ちゃんを育ててくれる家族を見つけようとしていた」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、サンヒョンとドンスを検挙するため尾行を続けていた刑事のスジンとイは、決定的な証拠をつかもうと彼らの後を追うが……。ソン・ガンホのほか、「義兄弟 SECRET REUNION」でもソンと共演したカン・ドンウォン、2009年に是枝監督の「空気人形」に主演したペ・ドゥナら韓国の実力派キャストが集結。2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、主演のソン・ガンホが韓国人俳優初の男優賞を受賞。また、人間の内面を豊かに描いた作品に贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞した。

<感想>是枝裕和監督・脚本で、カンヌの主演男優賞を受賞したソン・ガンホとくれば、観ないわけにはいかない。教会の「ベイビー・ボックス(赤ちゃんポスト)」に入れられた赤ん坊を、金銭と引き換えに横流しをするサンヒョンとドンス。彼らの取引現場を押さえるべく監視を続ける刑事のスジンとイ。赤ん坊を捨てる若い母親もダメダメだが、それをお金儲けにしようと考えるやからもなんだかなぁ。

しかし、赤ん坊を捨てた母親は、売春を仕事としていたという事実もあり、中絶もせずに出産をして、挙句に子供を売買してお金に換えるという。それにだ、父親となるヤクザの男を殺したというのだ。警察も子供を売買する男たちがいるということを感知して、赤ん坊のブローカーを現行犯逮捕しようと、何日も張り込みを続け、家族(夫)にも会えない日々が続く女刑事には、ペ・ドゥナが演じていた。確か、日本でも熊本の産婦人科でも「赤ちゃんポスト」なる事実があり問題になっていた。

子供を捨てにきた身勝手な母親が、ひょんなことからブローカーたちに同行しつつ、赤ん坊の取引に参加するようになる。それに、取引の赤ん坊の男子の方が値段が高く、女子の方は安く売買されていて金額が違うのだ。関心したのが、ソン・ガンホが我が子のように、いつも大事そうに赤ん坊を抱いて、ミルクをあげたり、オムツを取り替えたり、お風呂にも入れてあげるのだ。そばに本当の母親がいるのに。タバコを吸いながら知らん顔しているのだ。

途中で、孤児だったドンスが、育った児童養護施設に立ち寄るが、ここで若いサンヒョンに懐いた孤児のへジンがいつの間にか車に乗り込み脱走を企て、あわよくば自分も金持ちの養子に貰われたいと言い、仕方なくヘジンも旅の仲間に迎えられる。この奇妙な一行の疑似家族的な絆を深めることになる。これぞ、是枝裕和監督の「万引き家族」になってしまう。笑えるのが、このヘジンが車の窓を全開にしてしまったことで、自動洗車機のシャワーをまともに浴びてしまい、全員がずぶ濡れになってしまう微笑ましいシーンもある。本作ではヘジンがこの奇妙な一行の疑似家族的な絆を深めることになる。

日本での昨今の子供事情では、無責任な両親によって子供が餓死で死んでしまうというニュースが、先ごろ報道された。2歳の子供をベビーベットの中に押し込み、食べ物も無しで夫婦で子供を置いて遊びに行ってしまう。子供手当や働く母親には子供を預ける保育園などもあるのに。この夏、子供を車の中に置きっぱなしにして、パチンコに夢中になり熱中症で死なせてしまう。など、子供が邪魔になりセッカンやお仕置き、しつけなどと勝手な理由で、我が子を死なせてしまう。

是枝裕和監督はこれまでも、繰り返し疑似家族の物語を描いてきた。しかし、ならば何故に是枝裕和監督はいつも家族の中心に「子供」を置くのか。疑似家族にとっての子供とは、何を意味するのだろうか。そうした是枝的な「家族」の物語では、本作においても過去作からいくつかの特徴的なモチーフを、画面のなかに印象的に紛れ込ませながら、この上なく美しいシーンとなって結実していた。

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