パピとママ映画のblog

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マリーゴールド・ホテルで会いましょう★★★★

2013年03月28日 | アクション映画ーマ行
高級リゾートで穏やかな日々を過ごそうとインドにやってきた7人の男女が、お粗末なホテルと現地の文化にショックを受けながらも、新しい人生を踏み出してゆく姿を描いたドラマ。

出演は「007/スカイフォール」のジュディ・デンチ、「ラブ・アクチュアリー」のビル・ナイ、「スラムドッグ$ミリオネア」のデヴ・パテル。
あらすじ:40 年間連れ添った夫を亡くしたイヴリン(ジュディ・デンチ)は、多額の負債を返済するために家を売却。そして、同居を勧める息子の誘いを断り、インドの高級リゾート“マリーゴールド・ホテル”での一人暮らしを決意する。彼女の他、このホテルに申し込んでいたのは6 人の男女。イギリスに家を買うはずだったが、退職金を貸した娘が事業に失敗してインドにやってきたダグラス(ビル・ナイ)とジーン(ペネロープ・ウィルトン)の夫婦。股関節の手術を受けようとしたミュリエル(マギー・スミス)は、イギリスの病院では半年待ちと言われ、渋々インドへ。独身者ノーマン(ロナルド・ピックアップ)の悲願は、異国の地での最後のロマンス。結婚と離婚を繰り返すマッジ(セリア・イムリー)の目的は、“お金持ちの夫探し”。以前この地に住んでいた元判事のグレアム(トム・ウィルキンソン)は、数10年ぶりに知人に会いに来たのだが、ある事情があり、迷っていた。

彼らが想像していた優雅な生活は、実際のホテルを目にして砕け散る。改装中というそのホテルを亡き父から譲り受けた若い支配人ソニー(デヴ・パテル)は、やる気だけは人一倍ながら経験不足。電話は使えず、ドアのない部屋もある。だが、既に前金を支払った7 人に選択の余地はなかった。ジャイプールの街に溢れる音と色彩、喧騒と人の数、そして暑さに圧倒されながらも、それぞれの生活を踏み出す。様々な悩みを抱えながらも、この地で過ごす時間が長くなり、互いの交流が深まるにつれて、少しずつ前に進んでゆく7人。その一方で、ホテルを復活させるために、ソニーは地元の投資家に援助を依頼。しかし、ホテルを一緒に相続した2人の兄と母親は売却するつもりでいた。こうして、インドに来て45 日が過ぎた頃、母親の説得に負けたソニーがホテルを閉鎖すると言い出す。再び人生の岐路に立ったイヴリンが巡り逢った、意外な運命とは……? (作品資料より)

<感想>「恋におちたシェイクスピア」のジョン・マッデンの群像劇は、ドラマとしての密度を問わなければ、至って軽妙で楽しい作品に仕上がっている。物語の中心となるのは、夫を亡くしたり、体を壊したり、それぞれに事情があっていイギリスを離れインドを訪れた7人のシニア世代の男女たち。イギリスの芸達者な俳優たちを豪華に配し、味わい深い人間ドラマを、ウィットとユーモア満載に、ジャイプールの街の表情が生々しくも熱気の中に焼き付ける。
ところが、高級リゾートホテルと思ってやってきた7人を待っていたのは、電話もシャワーも故障中のおんぼろホテルで、おまけに慣れない気候や風習の違いに言葉の違い、といった数々の試練も待ち受けていて、・・・ベテランのジョン・マッデン監督は、ときにはイギリス人らしいユーモア(定番のビスケット&紅茶ネタとか)も交えながら、異国の地で再出発すを図ろうとする7人の老後の人生を、優しく大らかな視点で見つめていく。
登場人物の一人が書く手紙の文面に「あふれる音と色彩、暑さと喧騒、すさまじい数の人々」とあるけれど、そんな生気あふれるインドに、くすんだ老人たちを放り込んだのがこの映画のミソで、異文化の衝突やら何やらを楽天的に処理しているからいい。演出は手堅いし、絵も見せてくれる。なるほど、インドがもたらす解放感は、年齢を問わないのだろう。

彼らは還暦を過ぎ、人生の黄昏を迎えた地点にいるのかもしれないが、それなりに肉体の衰えはあっても、内面的には誰ひとり枯れてはいないのだ。いや、むしろ、ゆっくりと自由に、身軽になっていく姿は、生命力に満ちている。たとえば、40年間連れ添った夫に先立たれたイヴリン。自分の知らないところで、多額の借金を作っていた夫との結婚生活に悔いのある彼女は、インドで初めて仕事を持ちひとりで生きてみようとする。彼女を初め、みんな、これまでの人生からさらに先へと扉を開き始める。だが、その中で元判事のグレアムが、ゲイであったこと。昔の恋人を探しにこの地に来て、嬉しい再会の後に心臓発作で亡くなる。必ずしもみな幸せな余生というには、ありそうでなさそうな設定。
長年歩んできた人生の重みと、大人の青春を生きる初々しさ、上手に年を重ねてきた名優たちが、ごく普通の人々の年輪を魅力的に体現する。それは、ジュディ・デンチ、ビル・ナイ、マギー・スミス、トム・ウィルキンソン、なんとも贅沢なビッグ・ネームが勢ぞろい。特に「007/スカイフォール」の出演の御年78歳の、ジュディ・デンチのヒロインとしての凄みぶりはどうしたことか。女っぷりとは何ぞや、なんて考えさせられてしまう。

そして「スラムドッグ$ミリオネア」のデヴ・パテルが、情熱家だが未熟な若きオーナー、青年役で明るい魅力を発揮している。インドでロケをされたという映像は、色彩にあふれてとても美しい。“最後には万事めでたし”というインドのことわざが素直に納得できるような作品だ。
だけどよくよく考えてみれば、ホテル改装後の完成イメージを、あたかも現状のようにホームページに載せてしまった劇中のインド人青年支配人。彼の言い訳と同じぐらい、都合のよすぎる話ではないか?・・・年を重ねた男女のたたずまいに頼りすぎている気がして、彼らの第二の人生という夢に乗り切れなかった。それに、日本人である私には、終の棲家としてのインドは、いくら物価が安くても願い下げである。
それにしても、人生の本番はいつだって更新されていくものかもしれない。不器用な大人たちの慎ましく、成熟したエネルギーに当てられながら、そんな希望が湧いてくる。生きるヒントにもなるすこぶる爽快な作品です。本国イギリスでは、あまりに好評につき、続編制作の話も出ているそうだけど、確かにこのコンセプトで連ドラ版とか作ってみても面白いかもですね。
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